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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
四.ヴェルドーアの過去編
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06.研究室で二人きり


 科学技術庁内は同じような部屋が並んでいるが、

 イイノの研究室は他の部屋より広く、より厳重にカードロック式の扉に守られている。

 遺伝子課とは反対側の一番端、移動するには庁舎の端から端まで歩かなければならない。


「はー、とても厳重な作りなのですね。

 何か大切な物でも置いているのですか?」


「そうです。

 この人間の未来がかかっている研究をしているのですから」


 イイノはカードを使って扉を開ける。

 先に通されると見た事の無い風景に唖然とする。


「こ、これは……機械!?」


 研究室の中には機械がところ狭しと並んでいた。

 中央には一際目立つ長い針のような物が付いている機械があった。


「イイノさん、あなたは何を研究なさっているのですか?」


「いろいろと研究していますが、今は『物質転送装置』の開発ですね」


「物質……転送?」


「一瞬で遠くに人や物を移動させる装置です。

 完成すれば燃料などなくても遠くまで行けるようになります。

 いかに資源を節約できるかが研究の目的です。

 ヒューマン・キャッスルには燃料となる資源がほとんどないので、

 最小限のエネルギーでできる事を研究してるんです」


 一瞬で? 移動?

 この人間は何という事を考えつくのだ!


「でも、そう簡単には行きませんね。

 まず物を電気に変えるところから開発してますが……

 私は遺伝子が専門で、機械の分野はあまり得意ではないので、

 なかなか進捗が悪いんです。

 機械に詳しい人材がいれば有り難いんですけれど……」


「いやはや、人間の科学技術とは凄い物ですな。

 電灯、走る車に自動扉、自動の店にエレベーター、

 次は移動装置ですか?」


「科学技術の進歩は際限ないですね。

 全て中央管理塔(タワー)の頂上にある『キャッスル・ブレイン』と言う、

 スーパー・コンピューターが管理し、人間がより良く暮らせるよう指示を出しているのです」


「そのキャッスル・ブレインとやらのおかげでここの人間は便利に暮らしているみたいですけれど、

 人間の存在意義が無いように見えます。

 何もしなくても生きて行ける……いや生きている意味があるのでしょうか。

 便利になりすぎるのも困ったもんです」


「私も実はそれについて悩んでいるのです。

 研究はキャッスル・ブレインに命令されてやっているものですが、

 果たして本当に人間の為になっているのか」


 キャッスル・ブレインも人間の為に動いているのであって悪気はないのだろう。

 でも、それが人間の為なのだろうか。


「そこに外の世界からあなたが現れました。

 宇宙から地上に墜落した事は不幸な出来事ですが、

 この星の世界を知っているあなたに出会えた事はとても幸運です。

 あなたはこの星の人間がどうやって生きてきたのかをよく知っている。

 私は知りたいのです。

 ヒューマン・キャッスルの人間がこれからどうやって生きていけばいいのか。

 外の人間の生き方を学んで、ここの人間はどういう道に進めばいいのかを」


 このイイノと言う研究者はただ科学技術の進歩と言う事だけではなく、人間を元とした科学、

 本当に人間を幸せにする科学技術を目指している……

 我々、外の世界の生き方が正しいのではなく、

 またこのヒューマン・キャッスルでの生き方でもなく、

 融合した生き方を模索しているのではないか?


 だとしたら、このイイノと言う人物……

 なんと崇高な考えをする人間なのだ……


「私はあなたの事を知りたい……

 ヴェルさん、あなたを知る事によって私の目指す科学があるんだと思う」


「私の事は『ヴェル』と呼んで下さい。

 他人行儀な物言いは結構です」


「では、私の事もイイノって呼んでいいわよ。

 ヴェル!」


「ハハハ、わしも素の話し方がやっとできるな。

 これからは本来のしゃべり方をさせてもらおう。

 イイノ、それでわしは何をすればいいんじゃ?」


「これでも科学者よ。

 まずは、あなたを細胞から検査させてもらうわよ!」


「えっ!? 実験動物!?」


 突然、イイノの科学者魂に火が付いたみたいだ。


「服を脱いで!」


「は、はい!」


 言われた通りにするしかない。

 一応、助手だし、協力者だし。


 白衣やその下の作業着も脱いでしまう。

 素っ裸じゃ!


「ビローン」


「……」


 む! イイノのヤツ、表情が全然変わらん。

 男の裸を見ても何も感じないのかい!

 この世界では感情が必要無いのかもしれんのう。


「体の至る所に鱗が付いている。

 本当に……ドラゴン……と言う事?」


 物珍しそうにツンツンして来る。

 腕、腰、脚と優しい力で触ってくる。

 それがとてもくすぐったい!


「アハハハ……」


「何、笑ってるの?」


「足裏はくすぐったい! アハハ……」


 足を上げて足裏までツンツンされてる。

 どうも……人間には鱗が珍しいんじゃな。


「わっ!」


 バランスを崩して下に居るイイノの上へ転んでしまった!


 バタンッ!


「痛!」


 イイノは腰から床に落ちて痛がる。


「す、すまん。でもお前がくすぐるからじゃぞ」


「!!」


 イイノの上に裸で乗っかっている!


「ごめん、すぐどけ……」


「待って……何か、今凄いドキドキしている。

 これは……何なの?」


「床に腰を打った衝撃じゃろ……」


「いえ、初めての感覚……

 あなたに触られた時、今までにない感覚が……」


 イイノがわしの体をジロっと見る。


「……!!

 きゃあああ!」


 ドォン!!


 両手で弾き飛ばされた!

 もの凄いパワー!!


 ズガァァァン!

 メリメリ……


 背中から壁に激突し、壁に亀裂が入る。

 そのまま、床にダウンした。


「……な、なんじゃ。

 こいつは……」


 ガクッ


「きゃあ、ごめんなさい!

 私、何を……」


 そのまま、わしは医務室へ運ばれた。



 ◇ ◇ ◇



 次の日からイイノは、わしの遺伝子の研究に打ち込む事となった。

 オリジナル・ジェネシスの遺伝子と言う未知の研究に。


 この遺伝子が新しい細胞を急激に生み出し、『肉体変換能力ライズ)』を起こす事を確認。


 ライズが脳の神経から発生する事も見つける。

 脳のイメージが細胞をイメージ通りに変化させる。

 このイメージ、発想力がライズの要だとわかる。


 この脳の神経を変化させてしまうと再度ライズを行えなくなる危険性も発見。

 頭部の変化を禁止された。


「う~ん、仕組みはわかったけど、これからはどちらへ向かえばいいの?」


「どちら、とは?」


「ライズの力を増大するのか、それとも抑えるのか、

 どちらかの方向へ研究、開発を進めるか、よ」


「まず、力を強くした方がいいんじゃないか?

 増大して手におえなくなったら力を解除すればいいのじゃから」


「そう……じゃあ、何かライズを強化する方法を考えないと……

 あ、今日はもうこんな時間。

 もう終わりにしましょうか」


「ああ、じゃあ、わしは帰るよ」


「ねぇ、ヴェルは何で団地に住んでるの?

 職員は科学技術庁に住む事もできるのよ」


「いや、こんな地下で人が密集してるところにいたくないんじゃ。

 誰もいないところがいいんじゃ。

 本当は山の中とかがいいんだが」


「団地も密集してるでしょ」


「外が見えるし、あちらの方がましじゃ。

 ではな。わしは行くぞ」


「もう……ここならすぐなのに……」


 研究室からエレベーターへ向かう。

 今日は何を食うかのー。


「おい!」


 後ろから男の声がする……


「何ですか?」


 振り返ると4人の職員の姿が……

 ああ、あの遺伝子課で会った職員たちか。

 確かヒビキ、シミズ、ハヤオカ、ヤマタケだったか。

 そのヤマタケが先頭になり掴みかかってくる。


「お前、最近やたらとイイノに気に入られてるなー。

 ちょっと、来い!

 顔貸しな」


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