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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
四.ヴェルドーアの過去編
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03.イイノは変なおじさんに出会う


「ドラゴン……」


 し、しまった!

 いつもの調子でしゃべってしまった。

 『オリジナル・ジェネシス』なんて知るわけないのに……


「うふふ、面白い方ですね。

 初対面なのに……肩を抱いたり、

 いきなり名乗ったりするんですから」


 予想外の反応だ。わしを見ても至って冷静。

 逃げ出されるかと思っていたのに。


「ええ、全く申し訳ない。

 お調子者でして……」


 今になってやっと目の前の人間をよく見る。

 上品で美しい顔立ちの女性だ。

 青いワンピースのようなスーツの上に白衣を纏っている。

 一際目立っているのは薄く白い髪の毛だ。

 白髪(しらが)と言うより透明に近い。それが重なり合って白く見えている。

 外の世界で髪の毛の色は様々なので珍しくはないのだが……

 その長い髪を邪魔にならないように後ろでリボンを使って縛っている。

 仕事中なのだろうか。


「侵入者は警備ロボットに捕まるわ……

 でも今は大騒ぎになっていて、それどころじゃないのだけれど」


「ここにはあなた以外に人間が生きているのですね?」


「はい。数は少ないですが1000人程おります。

 昔は1万人はいたようですが……」


 怪しい侵入者のわしにあっさり答えてくれるなんて。

 何ていい人なんだ。


「本当ですか!

 わし、いや私は地上からやって来たのですが……外では人間の姿を見る事がありません。

 必死に探して来たのですが、シェルターなどの施設にも人間は残っておりません。

 最後に見たのは十数年前です。

 それほど外は人間にとって危険なところなのです。

 もう絶滅してしまったと思っていたところにあなたが現れた。

 だから、嬉しくて、嬉しくて」


 外の世界で人間は強化された遺伝子を持つ、

 『オリジナル・ジェネシス』の継承者しか生き残っていない。

 純粋な人間がまだ1000人も生き残っているとは……。

 感動じゃ。思わず万歳しそうになった。


「あの……外の世界から来たあなたは人間のようだけれど、

 普通に生きているようですね」


 女性が不思議そうに尋ねた。

 危険な外の世界で生きていたのだから無理も無い。


「私は特別に強化された遺伝子を持つ人間です。

 厳しい環境でも長期間生きて行ける、頑丈な体なのです」


「だから空から落ちても平気なんですね」


「もちろんです。

 皮膚は弓矢や槍程度なら貫通しません。

 相当な熱さや寒さにも耐えられます。

 ダイヤモンド並みの装甲も生み出せます。

 心肺は汚れた空気の中でも正常に機能し、

 目は遠い地平線の彼方までよく見え、

 運動能力は獣なみです。

 しかし、さすがに高所から落下すれば痛いです。

 尻が……」


「そ、そんな人間がいるんですか……

 私は科学者ですから、詳しく調べたいのですが、

 今はこの衛星……『ヒューマン・キャッスル』と名前が付いていますが……

 墜落した被害の確認に来ているのです」


「私もご一緒してよろしいですか?

 この世界をよく見てみたいのです」


 この人間はわしを変な目で見ていない。

 心優しい人間のようだ。

 このような人間に案内してもらえれば有り難いのじゃが……


「……」


「やっぱり警戒してますか?」


「いえ、あなたも……私のような、この世界の人間を警戒していないのですね。

 通報される恐れもあるのに……

 そんなに信用しているのですか?」


「ええ、何かあなたからはとても親しみを感じています。

 細胞で感じると言うか……何でしょう、この感覚……」


「……

 わかりました。

 一緒にあたりを見て参りましょう。

 私も何だかあなたが他人のような感じがしないですし。

 でも、その見たことも無い格好……他の人が見たら怪しまれますね」


「ここの世界では皆どんな格好なんですか?」


「白衣、作業服、スーツ、だいたい仕事で使用する格好です」


「作業服?

 う~む、シェルターで見た人間のしていた格好がそうなのか。

 そうですか、わかりました」


 髪の毛を少しむしり取って空中に投げる。


「ドラゴン・スレッド!

 さらにライフ・ニットじゃ!」


 髪の毛が糸に変化し、それがひとりでにまとまって行く。

 やがて赤いつなぎの作業着が出来上がった。


「えっ……何ですか、それ?」


「ははは、これが『オリジナル・ジェネシス』の能力、

 『肉体変換能力』と呼ばれているもの。

 体の一部を別のものに変化させる能力。

 髪の毛を糸に変えました。

 服を作る技は私独自に編み出したものですが……」


「そんな事までできるなんて……」


 女性は目を丸くする。


「ちょっとお待ち下さい。

 着替えますんで……」


 登山服を脱いで作業服に着替え始めるが、女性はだまってじっと見ている……


「体に鱗がついているんですね……」


 わしの背中をしげしげと見つめて調べている感じだ。

 体のところどころにはドラゴンの鱗がある。

 ドラゴンの遺伝子の影響で体の半分くらいは鱗だ。


「ドラゴンの遺伝子を持っている証拠です。

 普通の人間から見たら変ですよね?」


「私は科学者……

 科学者の性分で興味の方が大きいです。

 いずれ体を調べさせて欲しいですね」


「あなたにだったらいいかな。ははは……」


「そういえば名前を教えていませんでした。

 私、『イイノ』と言います。

 ここの『科学技術庁』と言う所で働いています。

 年は18歳です」


「イイノさん……ですか。

 若いのにしっかりされてますね。

 私はおじさんもおじさんなのに軽い性格でして……」


「うふふ、おじさんには見えないですわ。

 若いお兄さんみたい……」


「褒めるのがうまいお嬢さんですね。

 では、私はあなたの事をイイノ……さんと呼ぶ事にします」


「では、私は……ヴェルさんでしたっけ?

 そうお呼びすることにしましょう」


 ほっ、『おじさん』でなくてよかった。

 おじさんと呼ばれる事の方が多いのに。


「では、参りましょうか。ヴェルさん」



 ◇ ◇ ◇



 ゴミ置き場から直進するとすぐに大きな通りに出るようだ。

 角に隠れて通りを確認する。


「……何してるんですか?」


「いや、何か敵がいるんではないかと確認してるところです」


「いや、いるのは普通の人間だけですよ。

 ロボットもたまにはいるけど……」


 通りには人間が何人も歩いているようだ。

 大勢の人間の姿に感動する。


「よかった。住人の方たちは皆、無事だったみたいね」


「あれほどの墜落だと言うのにケロッとしていますね」


「この中は外からの衝撃を感じづらいですから。

 『ヒューマン・キャッスル』は強力な耐衝撃素材でできています。

 重力装置も稼働していますから、住んでいる人間からすれば外の風景が、

 少し変わったぐらいにしか、感じていないのでしょう。

 もちろん地下では被害が出ていますが……」


 よく見ると人間たちは淡々と同じ方向へ歩いている。

 規則的に群れをなして動いているようだ。

 顔には感情もなく、話し声もしない。


「皆、会話もしないで楽しくなさそうですね。

 まるで他の人間に興味がないようで……」


「他人と関わらなくても生きて行ける世界ですからね。

 仕事も買い物もコンピューターへのパネル操作で簡単にできますし、

 バーチャル環境で趣味を楽しむ事もできます。

 とりあえず健康維持の為に職場は離れたところにあって、

 歩きを推奨しているのです」


「コンピューターで何でもできると?

 ならば仕事なんてしなくていいんじゃないですか?」


「全てをコンピューターやロボットがやったら人間の存在する意味がなくなります。

 自分たちが管理しているんだと言う意識を持たせる為に、

 仕事と言うものが与えられているのです。

 目的がないと生きる意欲さえなくしてしまいますからね。

 仕事をして給料をもらうと言う目的が設定されているのです」


「何? 生きる目的もコンピューターに決められていると!?

 何だかこれではコンピューターに飼育されていると同じですな」


「そうしなければ人間が絶滅してしまいますから。

 ですが科学技術庁には研究熱心で働く意欲が高い人間が集まっていますよ」


 何ていう世界じゃ。

 全てコンピューター管理されているとは……

 住みやすくて便利ではあるが何か違和感が。


 それは後で考えるとして大通りの先には何があるんじゃろう?

 もう少しあたりを確認しようと大通りに出てみる。


 ドカッ


 歩いている人にぶつかってしまった。

 しかし、ぶつかった人間の方が跳ね飛ばされる。


「い、痛い! 何ですか、あなたは!

 ルールを守って下さい」


 怒りながら通り過ぎて行った。


 ドンッ、ドカッ!


 さらに歩いて行くと次々に人間がぶつかって来る。

 そんなものお構いなしに強靱な肉体で突破する。


「ヴェ、ヴェルさん!

 そっちじゃありません」


「ああ、イイノさん、早くこっちに」


「ここは一方通行なんです。

 進行方向が逆です」


「何? そんな決まりがあるのか」


「そうです。こちらに向かって歩きましょう」


 イイノに手を取られて逆方向に向かって行く。


「ルールと言っていたが?」


「ここヒューマン・キャッスルでは『キャッスル・ブレイン』と言って、

 中央管理塔のスーパー・コンピューターが全て決めているのです。

 人間が間違った事をしない為、秩序を守る為、『ルール』と言う物があります。

 大通りの通行方法、夜間外出時間、仕事の時間、休息の時間等です。

 皆、非常に真面目なのできっちり守っているのです」


「人間が生きて行くとは面倒くさい事もあるんだのう。

 外の世界はルールなんてないからな。

 実力で相手を倒すのみじゃ……

 でも人間の世界では必要か」


「ルールを決めておかないと統制が取れませんからね。

 ある程度は仕方ありません」


 ん? 道の反対側に食料を置いてある家があるぞ?

 腹が減っていたのを思い出した。


「ほー、これは美味しそうだ……」


 大通りの真ん中は一段低くなっており、誰も通っていない大きな通路がある。

 そこへ一歩踏み出し反対側へ渡ろうとする。


 ゴゴゴゴー!!


「ん!?」


 通路の向こうの方から巨大な車輪の付いた物体がこちらに猛スピードで向かってくる!


「きゃあ、ヴェルさん!!」


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