27.エピローグ~第三章・終
玉座の間、台座で横たわる黒いドラゴン、龍帝は、
何も言わず立ち尽くしているタツオとデスリッチを見て何が起こったのかを感じ取る。
「アルノドーアに何かあったんだな」
「……も、申し訳ありません。姫様のところに着いた時には……もう……」
「……う、うぐ……許して下さい……
僕がいながら……救うことができませんでした……」
二人は悲しみを堪えて伝える。
何も言わず突然の別れだった事を……
アルノドーアが消えて行った事も……
「……
そうか……君たちに辛い役目をさせてしまったな……
わしがこんな体だったから悪いのじゃ……
君たちを責める事はしない……」
「……うう……龍帝様が一番お辛いのに……」
「……僕が……何もできなかった……為に……」
「……
君たちはさがって休みなさい……
それに……わしを一人にしてくれ……」
何も言えず二人は玉座を後にする。
◇ ◇ ◇
「何!? 姫様が……」
「……」
「姫様! うわぁーん!!」
アルノドーアが亡くなった事を伝えられ、
言葉を失う将軍たち。
「アルノが!? そんな……」
「あのドラゴンの将軍が……本当ですか!」
「絶対、復活すると信じていたのに……」
「……うう……うわぁぁ!」
イシュライザーたちにもすぐに伝わった。
共に旅して来た仲間を失った悲しみに暮れる。
やがて城は静寂に包まれる。
誰もがアルノドーアの事を想い……
彼女の安息を願った……
◇ ◇ ◇
タツオとデスリッチは崩れた城門の前に立っていた。
「……タツオさん……あなたはこれからどうするのですか?」
「……何も考えられません……」
「……私もこれからどうしたら良いか……
目標も失ってしまいました……
姫様の幸せの為だけに戦って来たのですから……」
「アルノのいなくなった世界を……守る……なんて……
正直、僕はアルノの行ってしまったところに行きたい……」
「……半分死んでいる私が言うのも何ですが……
あなたには姫様の分も……龍帝様や私の分も……生きていて欲しい。
この自然を……この星を……守って行く事がみんなの願い……
この辛い時に……また責任を背負わせてしまうような事を言って御免なさい」
「いえ……僕も自暴自棄になっていました。
アルノが空から見守っている事を考えると、しっかりしなければいけませんね。
……
無理を承知のお願いなのですが、
これからは……ずっとあの森を、アルノが眠っている大森林を守って行きたいのです。
ここに住む事をお許し願いたいのです」
頭を下げるタツオを見てデスリッチは微笑む。
「……それは私も望む事です。
ドラゴンの継承者であるあなたこそ、この城の継承者……
それにあなたのお仲間もここに留まる事を決めておりますので、
ご一緒がよろしいかと……」
「いえ、城の継承者なんてとんでもない。
ただ森を守りたいだけです」
「……あなたたちがここまで来た事は運命的なものを感じます。
今ここには『オリジナル・ジェネシスの継承者』が9人も揃っています。
1000年前も9体のオリジナル・ジェネシスが10番目の者に、
戦いを挑んで1000年間の平和を勝ち取ったと伝え聞いております……
ヒューマン・キャッスルにはまだ恐ろしい敵がいる事は感じ取っているでしょう?」
「恐ろしい敵……真の10番目のオリジナル・ジェネシスはアルノだったのでは?
消えてしまった事でもうキャッスル・ブレインは利用する事もできない……」
「……これは私の考えなのですが……
姫様は……いなくなってしまいましたが……10番目のオリジナル・ジェネシスの力は、
まだこの世界に溶け込んで、何処かで存在しているはず……
ヒューマン・キャッスルを維持する為、
キャッスル・ブレインが探そうとするに決まっています……
それに、イイノさんは……もしかしたら……何者かに操られているのではと……」
「イイノさんにそのような感じはしませんでした。
とても優しく僕に接してくれていました」
「……ヒューマン・キャッスルの中央管理塔には、
キャッスルの中の人間を自由に操れる事ができる仕掛けがあると聞いたことがあります……
人間はおろか、ロボット、アンドロイドをも操れる何かが……
イイノさんの人が変わったような姿、あれは一定の時間、操作する事ができるからでは……」
「僕たちも操られていた可能性があるのですか?」
「……私たちがヒューマン・キャッスルを攻めた時、
イシュライザーの皆さんは躊躇する事なく戦いの場に出て来られましたね。
皆さん優しい性格なのに、戦闘の時は人が変わったようなところがありましたから。
あれも敵を容赦なく攻撃するように操作されていたからだと思います」
「イイノさんは僕たちがこれ以上操作されないように……
わざと遠征させたのでしょうか」
「……元々、我々と戦いを繰り広げて来たのは、
イシュライザーたちを遠く離れさせる機会を狙っていたと考えられますね。
イイノさんは10番目の恐ろしい力を利用しようとするキャッスル・ブレインを……
自分の身を犠牲にしてでも止める為に、私たちをここに結集させたと思われます……
そうすれば姫様の身も9人で守る事ができると信じていたのかもしれません……
姫様の命を救えなかった事は残念でなりません……」
「デスリッチさん!
僕たち9人でキャッスル・ブレインを止めましょう!
イイノさんの願いを叶える為に、
アルノの命を無駄にしない為に……
10番目の力を渡してはならない」
「……きっと将軍たちも、
タツオさんのお仲間も、わかってくれるでしょう。
もちろん私も……想いはタツオさんと同じです」
イシュライザーと将軍が一体となる。
1000年前のオリジナル・ジェネシスを継承した者たちがついに揃ったのだ。
◇ ◇ ◇
ドーア城・大広間には9人の戦士が集っている。
イシュライザーも将軍も関係ない。
この世界を救う同じ志を持つ者として力を合わせる。
「……皆さん、お集まり頂き有り難うございます。
本日より、ここにいる9名のオリジナル・ジェネシス継承者全員の力を結集し、
キャッスル・ブレインの計画を阻む為、戦いを開始致します」
輪になってお互い顔を合わせる。
「ダハハ、改めて自己紹介するが、虫のオリジナル・ジェネシスの継承者、
『ゾルタクス』だ。
もう将軍とかイシュライザーとか関係ないな。
これからは一緒に戦うぜ」
「私は吸血生物のオリジナル・ジェネシスの継承者、『レオンダルム』です。
過去の因縁は忘れて、忠実に任務を遂行致します」
「にょ、私は植物の継承者、『カレンシア』よ。
カレンって呼んで下さい」
「ライザー・ブラックこと鳥類のオリジナル・ジェネシス、『ヒショウ』です。
デスリッチさんの為に戦います!」
「ライザー・ブルーの『マリカ』よ。能力は、水生生物。
大好きなカレンと一緒に戦うわ」
「ライザー・イエロー、巨人のリクトだ。
強さを求める為、ここで訓練させてもらう」
「ライザー・ピンクで獣類のオリジナル・ジェネシス遺伝子を持つ、
『ミミ』と言います。
レオン様に命を捧げております」
「……不死生物のオリジナル・ジェネシス継承者、『デスリッチ』です。
これからもこの軍の作戦担当として、龍帝様の参謀として働きます」
「ライザー・レッドの『タツオ』です。
オリジナル・ジェネシスの遺伝子は『ドラゴン』。
大森林を、いや、この世界を守って行く決意です」
1000年の時を超えて、9人のオリジナル・ジェネシス継承者が一同に介した。
継承している遺伝子から過去のオリジナル・ジェネシスたちの想いが溢れてくる。
「……この軍、オリジナル・ジェネシス軍とも言いましょうか……
リーダー、または隊長とも言いますが、ここで決めておきたいと思います。
やはり、姫様の『ドラゴン』の遺伝子を継承した、
タツオさんにやって頂きたいと思います」
「え、僕なんか……いいですよ。
デスリッチさんがリーダーじゃないんですか?」
「……私はあくまでも参謀です……
ドラゴンは龍帝様、姫様と同じ、皆を統率する力ですよ。
お二人の為にもあなたがやるのが一番良いです」
「ダハハ、そうだ。
お前はこの中の誰よりも強い!」
「そうですね。
龍帝様だと思えば命令に従えます」
「隊長は隊長であるべきだ!」
「隊長、これからも宜しくお願い致します!」
……ヒューマン・キャッスルの時と同じ展開だ。
龍帝、アルノの意志を継ぐ事が僕の使命か……
「わかりました。
これからも隊長として任務を全う致します。
皆さん、宜しくお願い致します」
「ダハハ、隊長さんよ、宜しくな」
「アハハ、その呼び名、やっぱりあんちゃんに似合ってるぜ」
「にょ……隊長って何?」
「隊長と一緒に頑張ります!」
「戦おう。皆の力を合わせて。
本当の人間の世界を取り戻すんだ!」
悲しみを振り払い、戦士たちは再び起ち上がる。
真の戦いが今、始まるのだ。
ここまでご覧頂き有り難うございました!




