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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
三.ドーア城攻略編
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26.薔薇の葬送


  夕暮れの大森林の中を疾走する。

 嵐の中にいるように通り過ぎて行く景色。

 果てしなく感じる距離は無限の宇宙空間のようだ。


  アルノに託された龍帝への封筒は無事届ける事ができた。

 仲間を助けると言う目的もある意味達成できた。

 あとはアルノを救うだけだ……


  これからどうすればいいのだろう……

 ライザー・シルバーの言っていた『命令』とやらを無視してしまった。

 しかも、仲間たちを守る為とはいえ……撃退してしまった。

 僕たちがもうヒューマン・キャッスルに帰らないと言う選択は、

 キャッスル・ブレインに敵対する選択をしてしまったと言う事。

 もう帰る場所がない……


  また、ライザー・シルバーはやって来るのだろうか。

 あの様子だと修理と補給が終わり次第、駆けつけて来る可能性大だ。

 エネルギー不足だったのか全力全開で戦っていなかったし、

 最後に放とうとしていた技は何なんだ!?

 直感的に自分も死を意識した……

 自分を犠牲にして仲間を救おうとした。

 恐ろしい波動を本能で感じ取っていたからだ。

 もしエネルギーが充分あった状態で放たれていたらどうなっていたのか……


  それにイイノさんは……

 僕たちをここに送り出したのは龍帝たちに会わせる為?

 ヒューマン・キャッスルに反抗させる為にわざとここへ?

 そんな事がバレたらイイノさんも無事でいる事が出来るだろうか……


  イイノさんはアルノの母親だった。

 それも『10番目』のオリジナル・ジェネシスの継承者……

 その遺伝子はアルノに継承されている。


  アルノの事はヒューマン・キャッスルで秘密にしていたと言っていた。

 キャッスル・ブレインはアルノが現在の正統な継承者である事を知っているのだろうか?

 10番目の遺伝子を、まだイイノさんが保持していると思っていたら、

 イイノさんが処分される事はないはず。


  でも、イイノさんのオリジナル・ジェネシスの力は、

 だんだんと弱っているとも言っていた。

  いずれ誰かに継承されている事がわかってしまうはずだ。

 10番目の遺伝子の力がなければヒューマン・キャッスルを維持できない。

 その時、キャッスル・ブレインは現在の継承者であるアルノをきっと奪いに来る。

 絶対アルノを守らなければいけない。



  森の風景はずっと同じく見える。

 アルノの居る場所が何処だったのか、

 発見する事が難しい……

 デスリッチさんも発見できたのだろうか。


  そうだ。ドラゴンには気配を探る能力があると聞いたことがある。

 その能力を使ってみよう。


「……ドラゴン・センス……」


  感覚を研ぎ澄まして皮膚から気配を鋭く感じ取る。


「……そこか」


  ここより南に数百メートル、デスリッチさんの気配を感じるぞ。

 木々の間を抜け、気配を見つけた場所に急行する。


  薔薇の花びらが散らばっている。

 間違いない。

 カレンシア将軍の『薔薇』のツルで襲われた場所。

 花びらの数がだんだんと増えて行く。


  まるで薔薇の絨毯のように色鮮やかな場所に出た。

 そこに二人はいた。


「アルノ! デスリッチさん!」


  デスリッチさんがアルノのそばで座っている。

 正座の状態だ。手はアルノの手を握っていた。

 白いスーツが傍らに脱がされて置かれている。

 アルノの格好は白いワンピースを着ていて赤い薔薇の中で一際目を引く。


「ライフ・ストリームがまだ充分に効きませんか!?

 僕も一緒に行います!」


  アルノのもう片方の脇へ膝を着いて座った。


「アルノ……」


  薔薇の中にあるアルノの手を取る。

 ライフ・ストリームを放つために強く握った……


「ああ……冷たい……こ……これは……」


  あれほど熱かったアルノの手が氷のように冷たい……


「ア、アルノ!」


  呼びかけたが反応がない。

 眠っているのか……

 血の気が引くような不安が胸をよぎる。


「デスリッチさん! 熱はさがったんですね。

 だけど、何でこんなに冷たいんですか!?

 ……ライフ・ストリームだ。

 まだ生命エネルギーが足らないんだ……

 ライフ……」


「タツオさん……もう無駄です……」


  言い知れない恐怖。

 強ばるデスリッチさんの表情に最悪の事態を察知する。


「姫様は……もう亡くなっています。

 私が来た時には……既に……亡くなっていました……」


「え……」


  恐れていた言葉を聞いて真っ白になる。


「う、嘘だッ!

 あんなに元気だったじゃないかー!!

 きっとライフ・ストリームで蘇生できるはず……」


「私も限界まで行ったのです……

 スーツも脱がせました……

 私の知っている対処方法も全て行ったんです……

 それに……亡くなってしまったら龍帝様の延命の術も、もう効きません……」


「いや……まだだ……僕の力も使って……」


  必死に生命力を送り込んだ。

 何度も何度も手を握ってライフ・ストリームを発動する。

 生命力が尽きそうになって力が入らなくなってもやめなかった……


「う……うう……

 タツオさん……あなたまで……死んでしまいます。

 あなたが死んでは……あなたを守ろうとした姫様が悲しみます……

 もう……やめて下さい……お願いします!」


  デスリッチさんが涙を流して懇願する。


「うう……ううう……

 何故だー!! アルノー!!

 僕なんかをー!

 僕が君を守りたかったのにー!!」


「姫様は……継承されていた10番目の遺伝子の力が日に日に大きくなって行く事を、

 気がついていらしたのでしょう。

 お体が耐えられない程、力が大きくなってしまった。

 その力が何れあなたを傷つけてしまう……

 ご自分は死んでもあなたを守ろうと……だまっていたのかもしれません」


  何故だー!

 なんでこんな力を!

 オリジナル・ジェネシスなんかを作ったのだ!

 こんな事しなければアルノも普通の人間として幸せに暮らしていたはずなのに!


「うう……こんなドラゴンの力もない方がよかった……

 オリジナル・ジェネシスの遺伝子なんて、なければよかった……」


  ガンガンと頭を地面に打ち付ける。


「タツオさん!

 自暴自棄に……なってはいけません……

 姫様は……あなたに託したのです……

 そのドラゴンの力で……世界を変えて行くんだと……」


「わかっています……

 わかっています……

 でも僕はアルノと一緒に生きていきたかった……」


  薔薇の花びらの絨毯の上に横たわっているアルノの体を抱き上げる。


「アルノ……アルノ……」


  きつく抱きしめるがその体にはあのアルノの強い力を感じなかった……

 冷たい……冷たい……ただの人形のようだ……

 


「アルノ……何で僕は君一人にしてしまったんだ……

 一人で遠い所に行ってしまうなんて酷すぎるじゃないか!

 目を覚ましてくれ……アルノ……

 ずっと、ずっと、離ればなれでやっと会えたのに……」


  アルノとの過ごした日々が脳裏に蘇る……


 ヒューマン・キャッスルの路地で初めて出会った……

 自分の部屋で一緒に夕食を食べた……

 離ればなれになってどうしても会いたかった事……

 正体がわからず戦って傷つけ合った……

 将軍との戦いにライザー・ホワイトとして駆けつけてくれた……

 遠征の前に初めてデートをした。またデートをしようと約束……


「うう……アルノ……

 アルノー!!」


「ううう……姫様……

 何で私より先に逝ってしまうんですか……

 姫様ー!!」



  慟哭する二人……

 その時、抱いていたアルノの体が透明になって消えて行く……


「ア、アルノ?」



  アルノの顔は穏やかに……笑みを浮かべているようだ。

 


  塵のようにキラキラと輝いて、やがて空に溶け込んで行く。

 まるで宇宙に帰って行くようだ……


  抱いていたアルノの体は完全に消え去った。

 この宇宙のどこかへ行ってしまったのだろうか。


  薔薇の花びらが一斉に空に舞う。

 それはまるで薔薇がアルノを見送っているような気がした。


  寂しく薔薇が散る……


  二人は夕闇の空を見上げながら立ち尽くしていた。

 永遠の宇宙の中でアルノドーアが見守っている事を感じていた……


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