23.イシュライザー出撃
ゴゴゴ……
「な、何!? 地震?」
「……お姉様、こわーい!」
ドッ!
「わっ!」「きゃっ」
ベッドから放り出されるマリカとカレンシア。
抱き合って辺りを見渡す。
「カレン、外で何か起こってるんじゃない?」
「にょ、入口が破壊されているみたい……
伸ばした根っこの手応えがないにょ。
誰かに攻撃されている」
◇ ◇ ◇
「何だ!? この揺れは?」
ドンッ ドシッ!
「何かが山にぶつかっている?
敵の攻撃!?
おい、ゾル! 目を覚ませ!」
「……む……おぉ、リクト……
今まで気を失っていたのか……」
「気がついたか!
ゾル! よかった……
だけど……今、やばいところみたいだぜ」
ゴゴゴゴ……
強い揺れが続いている。
「この揺れ……ヤツの仕業だな」
「ヤツ? こんな山ごと揺らすヤツって?」
「ライザー・シルバーとか言ってたな。
無茶苦茶なヤツだ。
話が通じねぇし、何を考えてるかよくわからねぇ」
「ライザー・シルバー?
と言う事は『イシュライザー』の一人か?
でも、そんなヤツ見た事もないし、
聞いたこともない」
「俺がやられたのもそいつのせいだ。
パワーも凄いがスピードが桁違いだ。
人間じゃないぜ、ありゃあ」
「ヤツを止めないとこのままじゃ……」
「ダハッ、今度こそ命がやばいぜ」
◇ ◇ ◇
ガラガラガラ……
ガラクタが部屋中に散らばって埃が舞い上がる。
折角掃除したのに……
しかし、そんな事言っている場合ではない。
「やばいっ、やばいっ!
外にやばい気配を感じる!
もの凄いエネルギーの塊だ!」
……デスリッチさんも出かけているし、どうする?
「そうだ、仲間たちを集めよう。
ここにはイシュライザー4人いるんだ。
将軍たちも……いる!」
◇ ◇ ◇
厨房。
メイド服で料理を作っていたミミを心配し、
レオンダルムがやって来た。
「レオン様!」
「ミミ、大丈夫ですか?
外の方から異様なエネルギーを感じます。
何者かに攻撃されているようです」
「まさか、敵が他にいるのでしょうか?」
「……参謀殿が言っていた者が現れたのかもしれません。
『ライザー・シルバー』と言う者です」
「ライザー……
シルバーなんて仲間にはいなかった……
一体、誰なんでしょう?」
「情報によると光の攻撃を得意としているようです。
私には防げない攻撃です。
あなたをお守りできないかもしれません。
その時は申し訳ありません」
「私はどんな時もレオン様と共におります。
覚悟はできております」
レオンダルムの服を掴み、力を込めた。
「……とにかく集合しましょう。
参謀殿がいない以上、結集して戦うしかありません」
◇ ◇ ◇
崩れかけた城門に続々と将軍たちが集まる。
イシュライザーの仲間たちも一緒だ。
「マリカさん! リクト! ミミ!」
「ヒショウ君も、良く来たわね」
「緊急事態のようですから!」
「アハハ、相当やばい感じだね」
「私たちがいるせいで敵が……
ドーア火山がこんな無残な姿に……」
全員イシュライザー・スーツを装着し攻撃に備えている。
「ゾル将軍、傷は大丈夫なんですか?」
先程までのゾルタクスの姿を知っているレオンダルムは回復具合が気にかかる。
「おお、何とか立っている事はできる……
しかし戦いとなると力が出せねぇ。
レオンも外はまだ昼間だぜ。光は苦手じゃねぇのか?」
「ええ。外に出ても数十秒しか活動できないでしょうね」
「にょ? ゾルもレオンもダメなの?
カレンが何とかしないと!」
カレンシアが出ようとするとマリカが手を取って抑える。
「ダメ! カレンは肉弾戦は無理!
ボロボロにされてしまうわ。
それにあなたや将軍たちも傷を負っていて無理よ!
ここは私たちイシュライザーが何とかする!」
「おい! ライザー・シルバーはお前たちを取り戻しに来てるんだぜ。
出て行ったら捕まっちまう。
いや、下手すると殺されちまうぜ」
「ここはカレンの安住の地。破壊させるわけには行かない……」
「俺もデスリッチさんの宝を消滅させるわけには!」
「ゾルに無理させる事もできないぜ」
目を合わせ頷くイシュライザーたち……
「ったく。
お前らは『人間の世界』を守る戦士じゃなかったのかよ。
特別防衛隊が聞いてあきれるぜ」
軽口は叩いているが、イシュライザーたちの心は理解する。
「今までは人間ではなく科学技術を守っていただけだ。
これからは本当の人間の愛を守って行く……」
「なぁに、ヒショウ!
かっこつけちゃって。
変わったわねぇ。
それじゃあ、行きましょうか」
イシュライザーたちが城門から飛び出して行く……。
「にょ、お姉様……私の為に……」
「私たちを守る為に戦うとは……本当の戦士ですね」
「リクト、かっこいいぜ。
何も言わず出撃する姿に俺も惚れちまうよ」
◇ ◇ ◇
城門は完全に破壊されていてすぐ崖になっている!
飛び出したはいいが寸前で急停止した。
「ファルコン・ウイング!」
ライザー・ブラックのヒショウはすぐに『鷹』の翼を発現し、空へ飛び立つ。
「皆、俺に掴まれ!」
「おうっ!」「ええ」「はいっ」
全員が飛び上がりブラックの体にしがみつく!
「えっ!? ちょ! しまった! 重さを気にしてなかった」
ヨロヨロと落下して行く4人……
「わーっ!」「何やってるのよ!」「きゃああ!」
ズンッ! ズズン
地上に尻から激突する。
「イターッ」「お尻が痛い……」
「皆、重いぞ! 誰だよ、一番重いのは」
「失礼ね! あなたの翼の力が弱かったのよ!」
辺りはメチャメチャな状態だ。
山の片側は崖崩れで半壊している。
「酷い。どうやったらこんな事になるの?」
「森の方に被害が出てないのが救いですね……」
「誰だ? こんな事をするのは! ん?」
上空が輝いていて眩しい。
リクトが見上げると皆つられて空を見る。
「ライザー……シルバー!」
全身メタリックな銀色のヘルメットとスーツが光っている。
静かに空中で浮遊している。
「やっと出てきたねー。
もう少し遅れたらこの山と一緒に土の中だったかもねー」
一定の音程でしゃべっている……
感情のこもっていない冷たい声。
「おい! お前の正体は誰だ! 答えろ!」
リクトが怒りを露わにする。
「私の正体は……そこに倒れているレッド君に聞いてみたらー。
もうダメかもしれないけどー」
「レッド!? た、隊長!」
大きな岩の上にうつ伏せになって倒れている!
岩は血で真っ赤になっている……
「大人しく私と一緒にヒューマン・キャッスルに帰るんだったら何もしない。
だけど、抵抗すればそこのレッド君みたいになるわよー」
「ふさけるな! ドーア火山を破壊し、隊長を傷つけるヤツとなんか帰るか!」
ブラックも怒り心頭だ。
「何故こんな事をするの! 仲間じゃないの?」
「仲間?
キャッスル・ブレインの命令に従わない者は仲間ではない。
敵と同じだ。
レッド君もお前たちを引き渡そうとはしなかった。
だから斬ったんだ」
「命令なら仲間も殺すのかよ! そんなのってあるかよ!」
「あなたから人間の気配が伝わってこない……機械!?」
その時、ライザー・シルバーは仕方なさそうにヘルメットを取った。
そこには銀色の髪の女性が現れる。
顔は人間そっくりだが表情はなく金属で出来ている事がわかる。
「正解ー。
私はキャッスル・ブレインの遠隔操作型リモート端末、
アンドロイドのブレちゃんよ。
よろしくー。
キャッスル・ブレイン本体が遠くの情報を得たり音声で指示する為に存在する者。
だけど半分はAIの頭脳が判断して行動を決める」
「ア、アンドロイド……」
「遠隔操作? 監視カメラみたいな?
キャッスル・ブレインそのものかよ」
「道理で冷酷な判断が下せたんですね……」
スーッと地上に降りてゆっくりと4人に近づく。
「戦闘機能も付いているのー。
全開での戦闘は禁止されているけど、あなたたちなんか10秒よー。
オリジナル・ジェネシスの遺伝子であるあなたたちを倒したくない。
でも言う事聞かないと破壊して遺伝子だけ持ち帰る事になるんだー。
命令に従ってくれる?」
「あなた、将軍たちも連れて行くつもりでしょ?」
「今回はブラック君とピンク君の確保命令と
レッド君はじめイシュライザーを無事ヒューマンキャッスルまで帰還させる命令しか
されてないけどね。
いずれは全員確保されると思いますー」
「帰ればまたキャッスル・ブレインの言う通りの暮らしになってしまう。
俺たちは俺たちのやりたい事をするんだ!」
「キャッスル・ブレインのおかげでここまで生きてこられた事をお忘れ無くー」
「命令なんか聞かないわ!
私には大切な人がいるから……
皆! いい? 戦うわよ?」
「おお!」「いいぜ」「はい!」
シルバーが急に歩く事をやめる。
「お前……らー。
命令に従わない者は許さない!
お前たちも……破壊する!!」




