20.仲間との再会
玉座の間を後にし、大広間に出た時だった。
ドシッ
「……きゃっ!」
誰かとぶつかってしまった。
「ごめん……あっ!」
食材を運ぶメイド服を着た女性だ……人間?
いや、見た事ある顔だ!
「ミミ!? こんな所で何してる?」
「隊長? 隊長こそ、こんな城の奥で何を!?
もしかして私たちを連れ戻す為に遠征されて来たんですか?」
「そうなんだ。君たちを救い出す為にここまで来た……」
「将軍たちが4人も守っているのに……たった一人でここまで……
凄いです。隊長」
「いや、アルノやブレさんに助けられたし、デスリッチさんにも助けられた。
運良くここまで来たんだけどね。
それより、他の者は無事か!?」
他のイシュライザー3人の行方も気になる。
無事なんだろうか?
ここに捕らわれているはずだ。
「ええ、マリカさんも、ヒショウさんも、リクトも凄い元気よ。
いや、むしろ『ヒューマン・キャッスル』にいた時より、よっぽど元気……」
「そうか! 3人は何処にいる?
牢獄にでも入れられているのか?
そういえば、ミミは外に出てるけど何してるの?」
「……私、志願して料理係をやっていて……
厨房が今の働き場所なんです。
城の食事を毎日作っているんです!」
働かされているのか?
それにしては何だか生き生きしてるな……
「3人の居場所に案内しましょう」
◇ ◇ ◇
ミミに案内されて将軍たちの部屋を訪れる……
「まずカレンシア将軍の部屋です」
「マリカさん! 無事ですか!?」
扉を開けて躍り込む……
「きゃあっ!!」
「えっ? 何やってるんですか!?」
マリカさんと女の子が抱き合って寝ている!!
「にょ! 誰にょ! 勝手に人の部屋に!!」
「き、君は! あの『花』の将軍!!
マリカさんに何してる!」
両腕をドラゴンに変えて構える。
「隊長! やめて! 私を捕らえているわけではないのよ」
「えっ!? でも、この部屋に閉じ込められているんじゃ!?」
「私が望んでここにいるの!
『カレン』は戦いで疲れているからこうやって一緒に寝てあげてるだけ!」
「カレン……って」
「にょ! 一時休憩にょ。
城門には罠が仕掛けてあるから誰も入れないにょ」
「私とカレンはずっと一緒に住む事にしたのよ!
もう私はカレンたちとは戦わないわ。
折角来てもらって有り難いけれど、
私には構わず、このままにしておいてほしいの」
「えっ!? もう戦わない!?」
「イシュライザーと将軍が戦わなければ平和になるでしょ?
ヒューマン・キャッスルも静かになっていいじゃない?」
「それはそうですが、本当に帰らなくていいんですか?」
「ここまで来て、気がついたの。
このカレンと一緒にいる事こそ私の使命だと言う事。
私、カレンの事が好き!
彼女と一緒にいる事ができるならヒューマン・キャッスルと戦ってもいい」
「にょにょ!」
将軍も照れながら喜んでいる。
今まで戦っていた者同士が何故こんな事に……
この将軍と戦う必要はなくなったようだ。
肉体変換能力を解除して元の姿に戻る。
「そこまで言うのであれば、僕もその気持ちよくわかりますし、
戦わなくてよくなるのは良い事だと思います。
マリカさんが龍帝の語っていた『愛』に目覚めたと言う事でしょう。
それこそイシュライザーの真の目的……」
「隊長、止めないの?
捕虜奪還の命令を守らないと重大な違反になるのよ?」
「イイノさんの本当の目的は捕虜の奪還じゃなかったようだ。
人間が愛を取り戻す事だったんだ。
キャッスル・ブレインの命令には違反するけれど……
龍帝に会って俺たちがやるべき事が少しわかった気がするんだ」
「私にはよくわからないけど、この想いを大切にしなければいけない事はよくわかる」
カレンシアをギュっと抱きしめる。
「僕は仲間たちの無事を確認したら、アルノに会いに大森林に行く。
将軍、悪いけど僕が城門を出る時だけは罠を解除してくれ」
「カレンって呼んでくれてもいいの。
お前はマリカの仲間、参謀もお前は信用している。
もう戦う必要ないからその通りするにょ」
「有り難う。ちょっとは信用しれくれた?
じゃあ、宜しく頼む。
ミミ、別の部屋も案内しれくれ」
◇ ◇ ◇
それぞれの部屋は一本の道沿いにある。
火山の中を掘って部屋や回廊を作っているようだ。
常に地熱で温かいし、風通しもいい。
自然を利用して生活空間としている。
質素だが普通に暮らす分には充分すぎる。
「次はゾルタクス将軍のお部屋です」
「また将軍? やっぱり牢獄とかじゃないんだね」
ギィッ
ドラゴンの腕で岩の扉を開ける。
「あ、あんちゃん! ここまで来たのか?」
「リクト! 君も無事だったのか!
怪我はしてないのか?」
「ああ、少し怪我したけど治してもらったんだ……」
「ベッドに寝ているのは、『虫』の将軍か?」
さっきまで戦っていた将軍がグッタリ横たわっている。
リクトはその横で心配そうに座っている。
「虫の将軍に何かあったのか?
僕も戦ったけど途中で気を失ってしまった。
その時まで将軍は全然元気だったけど……」
「聞いた話によると城門で激しい戦闘があったそうだ。
全身貫かれて、腕も飛ばされたって話だ。
死神の参謀が治したけど……出血がひどかったらしくまだ血が元に戻ってないって」
……あんなに頑丈だった男をそこまで追い込む奴なんていたのか?
アルノもまだ森にいるんだし、何者だ?
「ゾル! しっかりしてくれよ!
目を開けてまた説教してくれよ!」
リクトは将軍の大きい手を握り、祈っている。
「リクト、何故、そこまで心配している?」
「……俺はこの男の生き方、考え方に惹かれた。
だから、これからは一緒にいてそれを教えて欲しいと望んだ。
ゾルも快く答えてくれた。
俺にはこの男が必要なんだ」
「リクト……お前も変わったんだな」
「あんちゃん、俺はゾルと一緒にいる。
任務を放棄して悪いけど、俺の生きて行く道を見つけたんだ。
このまま、放っといてくれないか?」
……リクトがこんなにも人の事を想うようになるなんて……
ここに来て皆変わっている……
将軍との出会いで……
オリジナル・ジェネシスの遺伝子を持つ者同士、心に通じる者が何かあるのだろうか。
そういえば僕とアルノもだ。
見た瞬間、惹かれると言うのはあるかもしれない……
「わかったよ、リクト。
君は将軍が目覚めるまで看病していてくれ。
僕は大森林へ行く」
「あんちゃん……悪い」
◇ ◇ ◇
「最後はヒショウさんだな。
やっぱり将軍の部屋なんだな」
「はい。デスリッチ参謀のお部屋です」
ギギッ
「うわっ、ゴホッゴホッ」
扉を開けると埃が大量に溢れ出て来た。
「隊長!? 何やってるんですか?」
「ヒショウさん……元気だったんですか」
部屋にはガラクタが所狭しと置かれている。
ヒショウは鳥の翼を背中に発現させて、風を起こし、それらを掃除をしている。
「いや、ヒューマン・キャッスルの戦いで重傷を負って死にかけた。
デスリッチさんにここまで運んでもらって、龍帝様に蘇生してもらったんだ」
「……一体何があったんですか。
それに掃除まで?」
「俺は今までデスリッチさんの部屋で匿われていた。
ずっと傷が癒えるまで看病してくれていたし、
食事や寝床の確保だってしてくれていた。
いろいろお世話になってるから、こうして留守中は掃除をしているんだ」
「やっぱり、将軍のデスリッチさんと一緒に住みたいと言う事ですね」
「やっぱり?」
「他の隊員に、将軍と一緒にいたいから帰らないと言われて……
ヒショウさんもそうなんでしょう?」
「もちろんです!
俺はこれからデスリッチさんの為に戦います。
隊長にはここまで助けに来てもらって、とても有り難いのですが……
そっとしておいて欲しい。
今がヒューマン・キャッスルの時より幸せですから」
ヒショウさんの決意も固い。
「……あの、私も……」
「ん?」「え?」
「私もレオン将軍と共にここで働きたいです!
レオン将軍に身も心も捧げています。
もう帰りたくありません」
「……身も心も……って?」「……」
ミミもやはり同じ想いなのか……
「皆を見ていると『捕虜』って感じじゃないね。
捕虜奪還って言う戦いも、バカバカしくなるくらい」
「すいません」「ごめんなさい」
「いや、皆が幸せなら僕も来た甲斐があったと言うものだ。
それにもう将軍との間に戦いは起きないって事になるからね。
わかった。君たちもここにいて欲しい」
「隊長、有り難う」「すいません」
「僕はアルノが心配だ。
大森林の中でデスリッチさんが看病中なんだ。
すぐに行って来るよ。
その後の事は落ち着いたら考えるから……」
二人を置いて部屋を飛び出す。
皆が無事でよかった。
そして、それぞれ自分の歩む道を見つけた。
そう言う自分もだ。
やりたい仕事を見つけた。
この荒野を緑に変える。
龍帝のやっている仕事を僕も……
それにアルノをこれからも守って行きたい……
一緒にいたい……
あれ?
言ってる事が他の皆と一緒だな。
でも僕たちがここに留まろうとする事を、
キャッスル・ブレインが許すだろうか。
オリジナル・ジェネシスの能力者がいなくなる事を阻止しようとして来るのでは……
アルノの病気も気になる……
10番目のオリジナル・ジェネシスの力とは……
どうすれば抑えられるのだろうか……
不安を抱えながら城門を無事抜けて、大森林に駈けて行く……




