12.希望の光と消えゆく光
タツオはアルノドーアの手を握りながらライフ・ストリームを送り込んでいた。
これは生命力を膨大に消耗する為、この後の戦いに影響を与えかなえない。
しかし、タツオはアルノドーアの命を優先しすべての力を失ってもいい覚悟で能力を放っていた。
その時、空を覆っていた薔薇のツルが徐々に消えて行った……
森の中に太陽の光があふれる。
どうやら、マリカさんかリクトが敵の将軍と交戦し、
能力を解除する事に成功したのだろう。
「やったな。
二人ならやってくれると信じていた。
しかし、二人とも無事なのだろうか?」
敵の将軍は相当な能力の持ち主。
戦って無傷とは絶対に行かないだろう。
ここに戻ってこれる保証はない……。
仲間の心配をするが、それよりも今はアルノの状態だ。
ライフ・ストリームにも限りがある。
かなり生命力を放出しているが目を覚まさない。
熱もまだあるようだ。
荒野を長い距離歩いたり、ドラゴンの能力を使ったり……
体調の悪さを隠して強行したのだ。
このまま、目を覚まさなかったらどうしよう……
不安が募る……
「アルノ……目を覚ましてくれ……」
祈るように手を強く握りしめた。
◇ ◇ ◇
ゾルタクスが森の出口に姿を現す。
「……
カレン……何をやっている?」
カレンシアが気を失って倒れているマリカに抱きついて寝ている。
まるで動物の親子のように胸の上に顔を乗せている。
「にょ、お姉様と寝ているの。
そういえば、ゾル! 命令違反して森に飛び込んだな!
何してたんですか!?」
「俺はちゃんと任務を果たしてきたぜ!」
そう言って背負っている黄色いスーツ姿の男を見せる。
「にょ!? イシュライザー……なの?
捕らえて来たの?」
「そうだ。こいつを連れて城に戻るぞ」
「私も任務完了です。
捕虜ができたのです!
このお姉様、イシュライザーの一人でした。
一緒に連れて行くのです!」
ゾルタクスはカレンシアが何で敵と一緒に寝ていたのか非常に疑問になった。
深く考えたくもないので、考えるのをあきらめた。
「ふ~ん。
じゃあ、そっちはお前が運べ。
それくらいできるだろ」
「にょ、わかったにょ。
……朝顔巻!」
背中から『朝顔』のツルを出す。
マリカの体をグルグル巻きにして持ち上げた。
「早く城に行って、お姉様を治療してもらうにょ。一緒に寝るにょ!」
「何? おい、捕虜じゃないのかよ」
◇ ◇ ◇
ライフ・ストリームの放出は続いている。
アルノの熱は下がってきているようだ。
「少し、顔色も良くなってきているようだ……
それにしても、マリカさんとリクトがなかなか戻ってこない。
二人ともどうしたんだろ?」
時間が掛かり過ぎている。
3時間は経っている……いくらなんでも遅い。
「まさか、やられてしまったか、捕らわれてしまったのか!?」
そちらの方も心配になってくる。
どちらも救いたいが、体はひとつなのでどうしようもない状態だ。
隊の中で無事でいるのは自分一人。
どうしようもない不安が襲ってくる。
「ダメだ、俺がしっかりしないと……隊長なんだから……」
心を奮い起こす。
集中してさらにライフ・ストリームを送り込む。
その時……
ゴソッ
……
タツオが持ってきた謎のリュックがグラグラ動いた。
「わっ! な、何だ!?」
「……よーっと……」
リュックの袋口から、にゅーっと手が伸びた!
「えっ!!」
ビリッビリッ!
リュックが破れ、四方に吹っ飛んだ。
その中から人間?が現れた……
「……じゃーん、私、登場で~す」
「……」
長い銀色の髪と光り輝くメタリックなスーツ。
ウサギの耳型のアンテナが付いた女の子?
「私ー、ブレちゃんで~す。宜しくー」
「ブ、ブレちゃん? ……何者なの!?」
動きがカクカクしていてぎこちない。
ロボット?
「私、スーパーコンピュータ『キャッスル・ブレイン』のリモート操作型サブ端末……
自足歩行アンドロイドの『ブレ』って言いま~す。
ブレちゃんって呼んでね!」
「……
ヒューマン・キャッスルからリュックに入っていたのか……
キャッスル・ブレインが操っているロボットって事?」
「今は、私に搭載されているAIで勝手に動いていま~す。
イイノ長官の命令でリュックに入っていました。
危機が訪れた時の為に……」
……ロボットが助っ人?
でもイイノさんの指示なら頼もしいか。
「確かにヒューマン・キャッスル製のロボットのようだね。
なんでリュックなんかに入っていたの?」
「私、エネルギーの消耗が激しいので~す。
緊急の時だけ動くように設定されています~」
そうだった。
今が緊急の時だ……
胡散臭いロボットだけど少しは役に立ってくれるかもしれない……
「ブレさん……あの……
ここから先に森の出口があります。
そこまで行って仲間がどうなってるか、見て来てくれませんか?」
「OK! 行ってきま~す!」
ドヒュ~ン!
「す、すごい速さ……」
ドヒュ~ン!
「は~い、見てきたけど誰もいなかったよ。
ただ、遠くに山が見えました~」
「もう見てきたの?
何という速さ……どういう仕組みなのか……
え、仲間も誰もいない? 本当?」
「そうで~す。人っ子ひとりいませ~ん」
……本当に捕まってしまったようだ。
と言う事はやはり敵の本拠地に連れて行かれた?
「早く連れ戻さないと……
でも仲間が4人も捕まってしまうなんて……
どうしよう……」
「いやね~。私がいるでしょ~」
「君では戦えないんじゃない?
僕が行きたいけど……アルノを置いてはいけない……」
「私、ひとりで行って来てもいいよ~」
「気持ちは嬉しいけど君を壊したら怒られそうだし……」
ロボットが将軍と戦えるなんて思えない。
能力で壊されてしまいそうだ。
「……どうしよう」
「タ……タツオ……お前も、城まで行ってくれ……」
アルノが目を覚ました!
苦しそうな声で訴える。
「アルノ! 意識が戻ったか!
よ、よかった……
もう気がつかないんじゃないかと……」
「……城には将軍が4人も待ち構えて居るぞ……
お前1人ではなぶり殺しじゃ……
せめて2人で行け」
「で、でも、アルノを置いては行けない!
背負ってでも行く!」
「わしは……もう……お前のおかげで……大丈夫じゃ。
この体では……足手纏いになるから……な……
ここで……待っている……
それに……お前には頼みたい事が……あるんじゃ……」
アルノはスーツの内側のポケットから封筒を取り出す。
弱々しい力で手を伸ばし、タツオに手渡した。
「これを持って……城の玉座にいる……わしの父上に渡してくれ……」
「アルノのお父さん!?
王様だね。
これは手紙?」
「イイノが……これを渡せと……言っていた……
とても……重要な物だと思う……」
「ア、アルノ……
君の願いを叶えたいけど……
君とは離れたくない……」
アルノの手を握った。
こんな状態のアルノを置き去りにするなど……
「タツオ……城に行けば……りっちゃんがいる……
わしの事を……りっちゃんに話せば……戦いにならない……
それに……りっちゃんは……わしを迎えに来てくれる……」
そうだ。
デスリッチさんに相談すれば、アルノの病気の治し方がわかるかもしれない!
このままだと何も解決しない……
「わかった。行くよ、アルノ……
城へ行って、助けを呼んで来る!
それに君のお父さんに会って、話しをすれば戦いだって終わるはずだ!」
……再び手を強く握る……
それに応え、アルノはうんと頷いた……
「ブレさん!
一緒に城へ行ってくれ!
戦いを終わりにするんだ!」
「了解~! 行きますよー」
「急いで行ってくる!
絶対アルノを助けに来るよ!」
「……頼む……ぞ……」
心を決めて立ち上がると二人の手が離れた……
迷いを捨て振り返らずに走り出す。
「……タツオ……
お前に会えて……本当によかった……
ありがとう……」
伸ばしていた手が力なく冷たい地面に落ちた。




