11.ライザー・ブルーvsカレンシア
森の出口が見えた……
薔薇の動きは止まっている……
そのおかげでスムーズに大森林を抜ける事ができた。
植物の能力を使う将軍に何かおきているの?
一体どのような将軍だろう?
こんな強力な能力、やはり凶悪な顔をしたヤツか。
そういえば、アルノが何か言っていた気がする。
女の子がどうのこうの……
「抜けたーっ!」
ツル地獄の暗闇から光あふれる地へ……
地面を這うように駆け抜けた。
目が明るさに慣れないが徐々に見えてくる。
「えっ!?」「きゃあっ!」
目の前に誰かの顔が!
顔と顔がすれすれでぶつかる寸前の状態。
思わず固まってしまう。
「にょにょ、ちょっとあなた何なの!?」
「あなたも誰よ! こんなところに迷子?」
現れたのはちっちゃい女の子!?
私がしゃがんでやっと同じ背の高さ。
顔がアップでよく見えない。
ヘルメットを取りながら少し離れて見る……
「あっ……」
キラキラに輝く金色の髪、鮮やかな緑のドレス、円らな瞳……
む、胸がドキドキする!
「か、可愛いーーーーー!!」
まるで人形! それが動いているみたい!!
腕の中に入るサイズ!
ひとつひとつの仕草も動物みたい!!
一目で心を射止められた!
「にょにょ、突然現れて何なのよ……」
思わず勝手にナデナデしている……
駄目だ、手が先に動いちゃう。
「ご、ごめんなさい! 私、マリカっていうの。
遠い所から来たの!」
「こんな所に何の用かしら?
私、忙しいの!
ゾルが勝手に森に入ってしまったから、何もできないの!」
うん?
この娘の両腕!?
変化している! 薔薇の枝に変わる肉体変換能力だ!
「も、もしかして!? あなたが花の『将軍』?」
「にょ? 私を知ってるの?
私はドーア軍の花将軍『カレンシア』、
何故、将軍って呼び方を知ってるの?」
「私は『ヒューマン・キャッスル』から来た特別防衛隊の隊員、
イシュライザー・ブルーの『マリカ』よ!」
「にょ! ヒューマン・キャッスルですって!?
じゃあ、あなたがここを侵略しに来た人なのね!」
警戒されてしまったようだ。
少し距離を取られた。
「ライズを解除にょ!」
みるみるうちに薔薇のツルが消えて無くなって行く……
「ゾルのせいで作戦がパーにょ。
全員とは行かなくても何人かは捕まえる事ができたのに……
ぷ~っ!」
ほっぺたを膨らませて怒っている。
それも可愛い!!
「こうなったらあなただけでも捕まえるにょ!
覚悟して下さい、にょ!!」
「ちょっと……私、戦いたくは……」
「黙って下さい、にょ!
ここで何人か捕まえるのが参謀の作戦にょ!
姫様以外には負けないにょ!
龍帝のおじ様の為にここから先は行かせないの」
小さな身体から信じられない程の気を感じる。
あの巨大な薔薇のツルを発現できる程の力だ。
とてつもない能力を隠し持っている!
「行くにょ! 『靫葛』……」
カレンシアの腕が袋のような植物、ウツボカズラの形になる!
「捕獲!」
びよーんと一瞬で腕を伸ばしマリカの上からかぶせる。
「えっ!? 何!?」
袋の口を閉じて逆向きに空中に浮かべた。
「やったー! お仕事完了!
もう出られないにょ!
この中には水が貯まっていて、ずっと入っていると溺れてしまうにょ!」
……袋の中に閉じ込められてしまった……
袋から水が湧いて出る。
足元からどんどん貯まって行く。
「……もしかしたら、私を窒息させようとしているのかしら?」
ふうっとため息をついて立ち上がる。
ヘルメットを被り、肉体変換能力を発動……
「もう、そろそろいい時間かしら? 窒息して気絶する頃……」
チャポンチャポン、振ってみた。
「動かないにょ、見てみるか」
袋を逆さにして中身を出す……
「えっ!?」
ニョロニョロしている物体が飛び出た!?
「な、何これ!? クネクネしてる!?」
ツン、ツン。
「解除!」
「きゃあッ!」
長い物体が人間の姿に戻って行く……
何事もなくピンピンしている!
「あ~あ、狭かった」
「あなた! 苦しくなかったにょ!?」
「あー、私、実は『水生生物』のオリジナル・ジェネシス遺伝子を持っているの。
『ウナギ』に変化したから窒息はしないわ。
ていうか、水の中なら誰にも負けない!」
「ぷ~!
悔しい~!
わかっていれば、他の植物にしたのに~!」
地団駄を踏んでいる。
悔しがる姿も可愛い!
「じゃあ、こっちにしよう!
『蠅取草の罠』!」
ウツボカズラからハエトリソウの形に変化する。
ギザギザでトゲトゲ、まるで怪物の口のような右腕。
それを開いたり閉じたり、面白そうに動かしている。
ガシッガシッ
「パクパクしちゃうぞー! それ!」
バックン!
頭からおいしそうに食われた!
う、動けない。
「今度こそー、やったー!」
「ウォーター・ショット!!」
ダンッ、ドンッドンッ!
勢いよく水の塊を連射する。
怪物の口を突き破り、すらっと脱出する!
「ふ~、いろんな植物があるのね、
でも簡単には捕まらないわ!」
「きっきー!
もう! 捕まえるなんて面倒くさい!
やっつけるー!!」
ゴゴゴッ
怒りの気を放って体を震わせる。
「まずい、本当に怒らせちゃった。
機嫌直して?」
「だーめっ!
仙人掌・針地獄!
針千本飲ーます!!」
ドドドドドド……
鋭く尖った細い針がカレンシアの体から放たれる!
「きゃああああッ!」
サササッ!
千本近い針が飛んで来る!!
「……防御しないと……ドルフィン・スピン……」
ギュルギュルと後ろ向きに反り返って数回転のバク宙……
何とか遠く、後ろに避けて地上に着地……
「うう……」
数十本は針が刺さってしまった……
刺さったところからは出血が止まらない……
「追撃にょ! 椰子……」
空中にヤシの実を何個も出現させた。
「落下!」
ズドドドド……
「きゃぁぁぁ!!」
硬い実が体を打ち付ける。
「うう……」
一体どれだけ能力を発現できるのか。
次々と肉体変換能力を繰り出される。
「あなたたち人間のせいで植物は絶滅しかけたにょ!
オリジナル・ジェネシスたちが植物を助けなかったら、
この星の生物は全滅していたにょ!
なのに、また森を壊しに来たか!」
……そうか、1000年前の人間の過ちで世界がこんな状態に……
この娘の怒りは無理もない……
「枸橘・倒木!」
両腕から『カラタチ』の大木が飛び出してのし掛かって来た!
ズガッ!!
「……うう……」
巨大な木に棘が飛び出ており、体に突き刺さる。
「人間のせいで! 私は100年間もたった一人だったにょ!
その寂しさ、悔しさを味わせてやる!」
「……ごめんなさい。人間のせいで……
そんな辛い時が……」
「あなたが謝っても、寂しさはなくならないにょ!
……竹の槍!」
鞭のような長い枝を振り回して怒りを叩きつける。
バチッ!
ビシッ!
一発当たるたびにスーツに筋のような痕ができる!
針や棘での出血に加えて切り傷が……ますます血が飛び散る。
バンッ!
ドガッ!
「にょ……なんで!?
あなた、反撃して来ないにょ!?
敵なんでしょ?
私に全然向かって来ないじゃない!?」
竹の枝を振るいながら問いかける。
全く無抵抗の相手に疑問を抱いているようだ……
ビシッ!
ドシッ!
スーツが散り散りに裂かれて行く……
「あなたと……戦いたく……ないの……」
「何で!? 私たちをやっつけに来たんじゃないの?」
「私たちは世界を救う為に来たの……」
「そんなはずないにょ!
口から出まかせにょ!」
「私は……あなたの寂しさを消したい」
「そんな優しい人間がいるわけない……」
「わ、私……」
ガランッ
ヘルメットが飛ばされるが構わない。
この娘の為に身を捧げる覚悟で突っ込んで行く。
「な、何よ!
死んじゃうよ。
何で……ここまで……」
ビシッ!
ビシッ!
スーツが半分以上、裂けて半裸のような状態になりながら
カレンシア目指して飛び込んで行った……
ガシッ
「えっ!?」
相手の意外な行動に手を止めた。
血だらけになりながら優しく抱きしめられる!
「私……あなたの事、『好き』になっちゃった……」
「にょ!! す、好き!!?」
「こんな気持ちになるの、初めて……
あなたが凄く可愛い……」
蛸のように真っ赤になり、頭から湯気が出るような感覚になった。
「好きって?
カレンをとっても気に入ったって事?」
「……そう。あなたを私だけのものにしたい……」
抱きしめられる腕が温かい……
この者の想いが伝わって来る。
怒りの気持ちがなくなって行く……
それに今まで感じた事のないような、嬉しい気持ち……
「にょ……こ、こんな気持ち……」
激しい動悸に襲われる。
誰かにこんなにも想われて抱かれた事は無い……
100年間の寂しさが消えて行くような想いに駆られた。
「う……うう……うわぁん」
何故か涙が溢れて止まらない。
……抱きしめられている両腕が血に染まって行く。
マリカは次第に意識を失って上にのし掛かって来た。
小さな身体でそれを必死に支えた……
「……お、お姉様……」




