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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
二.キャッスル防衛編
50/247

23.5 昔の話:金色のおじさんは幼女を救いたい(前編)


 果てしなく続く荒野……


 草木も生えない岩と瓦礫ばかりの光景が続いている。

 かつて栄えていた時代のビルや工場のような建物の残骸がそこらじゅうに散らばる。

 吹く風は生暖かく雨が降らないのか水一滴見当たらない。

 砂埃が舞い、時に竜巻のような猛烈な風が吹き込んでいた。


 そんな何もない荒野を歩く一人の旅人がいた。

 風で飛ばないように紐を付けたテンガロンハットを被り、頭は鮮やかな金髪、

 口の回りには同じく金色の無精髭、登山者用のマウンテンジャケットを来て

 大きなリュックを背負っている。

 見た目は山登りでもするのかと言った姿だ。年はもう50、60代かと言うおじさん。


「このあたりのはずじゃ。

 古い文献によると大昔に作られた避難シェルターの一つがここにあると言う……」


 男はあたりの瓦礫を片っ端から取り除く。

 瓦礫と言っても鉄筋コンクリートや巨大な看板で、とても一人の人間が動かせる重さではない。

 だが、その男はゴミでも拾うように簡単に持ち上げてはその辺にポイっと軽々ぶん投げる。

 一人人間ブルドーザーのごとく、あっという間に更地になる。

 地面が見えてとても清々しい。


「あった、あった。これじゃ。入り口があるな」


 もう砂にほとんど埋まっているがよく見れば地下に続く階段の一部だ。

 砂を軽く蹴りあげると竜巻が発生し、砂を吹き飛ばす。

 入り口を塞いでいた大量の砂はあっけなく排除され、地下への続く道が姿を現わした。


 男は、うむうむとうなづき、躊躇いもなく階段を下りて行く。

 真っ暗闇の階段だが男は目を金色に光らせ、脚をすべらせる事なくスイスイと進む。


 地下の底まで着くとそこは広大な地下空間。

 人間が大勢入れそうな、まさに『シェルター』と呼べる場所だとわかる。


 あたりを見回すと遠くに一ヶ所だけ天井から光が漏れている場所があった。

 男はその場所を目指してテクテクと歩いて行く。

 埃は積もっているが下はコンクリートの床で歩きやすい。

 光のある場所のすぐそばまで来た時、男は一瞬衝撃を受けた。


 ……なんと『花』だ。

 何百、何千もの赤い色の薔薇が小さな山のようになって、びっしりと咲いている。


「こんな場所に花じゃと?!

 ここに『あやつ』がいるようじゃな」


 男は薔薇の山に右腕を伸ばす。

 その途端、ツルのような薔薇の枝が何本も伸びてきて、伸ばした腕に巻き付いた。


 グイグイと絞まり鋭いトゲを男の腕に刺そうとするが全く刺さらない。

 男の腕の皮膚は頑丈で突起物の類いでも貫通できないようだ。

 

「やれやれ、イタズラはやめてくれんか」


 しかし、さらに薔薇のツルが飛び出して来て男の逆の腕をもグルグル巻きにする。


「……仕方ないのう。

 サラマンダー・ファイヤー!」


 ボボォォォ


 男の両腕から火炎が車輪のように発生し渦巻きながらツルを焼いて行く。

 巻かれていたツルは跡形もなく焼け落ちる。


 男はそのまま薔薇の山の中に炎の両腕を突っ込むと枝たちを左右に掻き分けて入口を作った。


「何じゃ!?」


 内側を覗いた男は目を見開いて驚いた。


「きゃっ!」


 そこには、とても小さい少女、少女と言うより幼女と呼んだ方がいいかもしれない、

 この場所に不釣り合いの人間?が居た。


 その幼女は胸と下半身だけは布のような物が覆われてはいるがほとんど裸同然と行った具合だ。

 髪の毛は地面まで垂れ下がった長髪で枯れ葉のような茶色……

 目は綺麗な睫毛が出てパッチリと開いているが顔や肌は砂埃で汚れており、

 長くここにいる事がわかる。

 驚くべきは薔薇の茎が何百本も背中から伸びていてこの薔薇の山の株元になっている事だ。

 両脚は地面に深く埋め込まれており木の根っこのような形状になっている。


 まるで植物……植物そのものだ。


「ふーむ。やはりな。君は『ユグドラース』かい?」


「にょ! 何でお婆ちゃんの名前を知ってるの?」


 人間の言葉は通じるようだ。

 しゃべり方に特徴があるが。


「そうか。君はユグドラースの孫と言うわけか。

 君のお父さんやお母さんは何処に行ったんだい?

 ここには誰もいないみたいだが……」


「わたしが生まれた時にはママしかいなかったにょ……。

 昔はここに沢山、人間が住んでいたんだって……

 ママからお婆ちゃんの事は聞いていたにょ」


「ママはいないのかい?」


「ママは……物心ついた時に死んでしまったにょ……

 私を産んだときにかなり力を使い果たしたみたい……」


 何て事だ。どのくらいの間、孤独に耐えていたのか……

 悲しみを堪えている幼女を見て男は心をひどく痛める。

 その悲しみを少しでも取り除けたら……


「君はずっと一人でここにいるのかい?」


「もう、長い間ずーっとここにこうやって一人でいるにょ。

 人間に会うのはママ以外、初めて!

 『おじさん』は誰にょ?」


「おじさん……

 わしは『ヴェルドーア』と言う旅の者だ。

 ヴェルと呼んでくれ」


「おじさん、優しい人にょ……

 気配でわかるにょ、攻撃の意思がないって。

 変な動物に襲われないようにこうやって薔薇(ローズ)(プリズン)の中にいたにょ!

 敵と思って攻撃してしまったにょ。ごめんなさい……」


 名前がおじさんになってしまった。

 この年の者は皆おじさんに見えるのか。


「どうしてここから出ないんだい?

 外の世界は瓦礫ばかりだけど太陽の光があってとても暖かい所だよ?」


「ママが危ないからお外へ出るなって。

 お外には悪い人間がいて世界を壊してお空へ飛んで行ったって。

 だからここでじっとしていたにょ」


「何年くらいいるの?」


「うーん、と100年くらいかな、木に変化すれば年輪でわかるから」


「100年……どうやって生きてきたんだ?

 水も食料もないだろう?」


「えへへ、これ!

 この脚は地面の奥深く地下水がある所まで根を伸ばしてる。

 だから水は大丈夫なんだ!

 養分も地下の汚れていない土から吸収するにょ!

 でも……そろそろ水も養分も尽きかけて来たにょ……」


 見つけられなかったら危ないところだった。

 髪の毛も体もエネルギー不足になって色艶が落ちてきているのに違いない。

 ヴェルドーアは彼女が植物(ユグドラース)の正統なオリジナル・ジェネシス継承者で

 ある事を確信する。

 

「わしは君を探して旅をしていたんだ!

 君はオリジナル・ジェネシスの一体、植物すべての遺伝子を持っていたユグドラースの継承者。

 我々の世界ではその者の事をその系統遺伝子の統率者である『将軍』と呼んでいる」


「にょ、何なの?

 難しすぎてよくわからない……」


「簡単に言うと君を仲間にしたいと言う事じゃ。

 突然じゃが、わしと共に来ないか?

 外には君の住むべき世界がある。君が歩むべき未来があるのじゃ」


「いや! 私、怖い。

 ここから出るのが……

 ずっとお外に出たことないから」


「安心するのじゃ! わしが……

 この『おじさん』がずっと一緒じゃ!

 ……こんな初めて会った変なおじさんじゃ嫌かもしれんが、

 君一人で生きてゆくのは大変な事じゃ。

 わしの国を紹介しよう」


 太陽のような明るい、そして頼もしい笑顔。

 幼女は母親以外、初めて人の微笑みを見た。

 心が温かくなる。


 情熱的なおじさんの言葉に心が揺れ動いた。


「……

 おじさんなら……いいか……

 ……

 でも、私の足、地中深く進み過ぎて出られないにょ」


「おじさんに任せなさい!

 ……ゴールド・ドラゴン・アーム!」


 おじさんは左腕を金色に輝くドラゴンの腕に変化させると

 幼女の根っこに変化している足の先を持った!


「ふーんっ!!」


 ちょっと力を入れると地中から長い根っこが一気に抜ける。


「わぁー! すごーい怪力にょ!

 これなら根っこを戻せるにょ!

 解除(リバース)!」


 幼女の背中と足がみるみる人間の形に戻って行く……


 立ち上がってみるが久しぶりに立ったのですぐによろめいてしまう!


「おっと!」


 おじさんは幼女を受け止めるとそのまま抱き上げた。

 片腕に収まってしまう程、小さい。


「にょ! 初めてママ以外に抱っこされた!

 感激にょ!」


「はは……まだ感激するのは早いぞ!

 ダブル・ゴールド・ドラゴン・ウイング!」


 背中から金色のドラゴンの翼が生える。

 天井の光が差し込んでくる穴に向かって飛びあがった!


 外に世界に出るとそこは太陽が輝く眩しい世界……


「わぁぁ! 明るーい!

 いい気持ち!」


「そうじゃろ、そうじゃろ、これが太陽じゃ!

 植物のエネルギーの源じゃ!

 そう言えば、君の名前を聞いてなかったのう」


「私? 私の名前は……

 カレンシア!!」


「そうか、『カレンシア』か。

 そうじゃな、わしはお前の事を……

 『カレン』と呼ぶ事にする!」


「カレン! にょにょ!」


 感動するカレンシアを抱いておじさんは自分の城がある方角へ飛ぶ。


「さぁ、行こう! 新しい世界へ!」


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