21.戦いの後で
「ウォーター・ショット!」
バーンッ!
「あはは、ブルー! 終わったね!
もういなくなったみたいだよ」
ブルーとイエローは居住エリアを隅々まで走り回り、
亡霊たちを全て撃退した。
「はぁ、はぁ……もう駄目……燃料切れよ。
お肌に悪すぎる……」
水分が不足し、ヨロヨロするブルー。
「俺は全く戦わなかったな……
走り回っていい運動になった」
「いいわね。まだ元気一杯で。
ここは片付いたけど他のメンバーはどうなったのかしら?」
「あは、早く帰って朝飯だ!」
「まだ、戦っているかもしれないじゃない!
さぁ早く中央管理塔へ戻るわよ」
「えー!」
◇ ◇ ◇
その頃、司令室では一人、司令官『ヤマタケ』が椅子にデンと座って
報告が来るのを待っていた。
「ああ、連絡はまだか?
早く敵を片付けてくれー!
また、協議会で袋叩きにあってしまう。
それにキャッスル・ブレインの奴に給料を下げられる」
自分の身がどうなってしまうか気になって仕方ない。
ダラダラと汗を流しては拭く。
ビィー、ビィー、ビィー……
「お、イイノからの通信か!?
……
はい、こちら司令室だ……」
「こちらイイノです。戦況をご報告します……」
「何!?
将軍2体が攻め込んで来た……それで……
うんうん……イシュライザーたちの活躍で撃退、敵は撤退したと……
ブルーとイエローも亡霊どもを全て片付けた?
よし、でかした!」
良い報告で安堵する。もし失敗していたら、えらい目にあう。
通信が終わると万歳をして立ち上がった。
「よしっ! これでキャッスル・ブレインからも褒められる!
給料もアップだー!!」
何度も拳を握って喜びを爆発させた。
◇ ◇ ◇
司令室のすぐそばには医務室がある。
運び込まれたタツオとアルノドーアがベッドに寝かされている。
「……うう……アルノ!?」
タツオは痛みと失血で意識を失っていたが、手当のおかげで何とか回復した。
管が繋がっているせいで頭しか動かせないが横を見るとアルノドーアが眠っていた。
「アルノ……大丈夫か?」
大きな怪我はないようだが体力を消耗しているようだ。
白い髪が美しく輝いているが、顔色が悪い。
「う……ん……」
静かに目を開け、回りを確認した。
「……タツオ!」
「大丈夫みたいだね。アルノ……」
アルノドーアは起きようしたが
生命力を大量に消費した為、身体が思うように動かせない。
「ここは医務室だ、ゆっくり休んでいていいよ」
「タ……ツオ……」
目から涙が流れた……
頬を伝ってシーツを濡らす。
「うう……え……え……、
りっちゃんに……勝てなかった。
わしの想いをわかってもらう事が……できなかったんじゃ。
何でわかってくれない……」
デスリッチとの戦いの中、全力で想いをぶつけたのだろう。
いつも元気なアルノドーアが立ち上がれない程、生命力を使った事が痛い程、わかった。
「デスリッチさんも君の想いをわかってくれたんじゃないかな?
本当にアルノの想いが伝わっていなければ、ここに君はいない。
きっと意識のない時に部下に連れて帰らせているはずだよ。
ここにいると言う事は、アルノの決めた事を気の済むまでやってみろって
言う事なんじゃないか?」
「……りっちゃんが!?
確かに……りっちゃんはわしを連れ帰れたはずじゃ。
……わしの想いが少しは通じたのか」
「まだ戦いはこれからだ。
君はデスリッチさんの復活を信じて戦っていけばいい。
必ずその時が来る事を信じて。
僕も皆が幸せに暮らす事が出来る日を信じて戦う。
だから……一緒に戦って行こう」
「……タツオ……」
まだ終わりではない。
デスリッチも生きて行く理由を見つける日が来るはずだ。
アルノドーアは自分の信念の為に進む事を決意する。
「タツオ……お願いがあるんじゃ」
「何?」
「手を……繋いでもいいか」
タツオは決意を込めて手を伸ばす。
「うん」
アルノドーアも力強く手を伸ばした。
二人はギュっと固く、そして強く手を繋ぐ。
共に戦って行くとの想いを込めて……
◇ ◇ ◇
ヒューマン・キャッスルから遠く離れた荒野。
デスリッチは飛んで来たレオンダルムと合流していた。
「……参謀殿、申し訳ありません。
任務を完全に果たす事ができず……」
「……レオン将軍、謝らないで下さい……
私も任務を果たす事ができませんでした……」
朝が来ようとしている中、二人とも宙を舞いながら城への帰還を急ぐ。
「……レオン将軍にひとつ聞きたいのですが……」
「何でしょう?」
「……その腕に抱いている『もの』は何ですか?」
レオンダルムの腕の中には幸せそうに眠っているミミが抱かれている。
「こ、これは……捕虜です。
イシュライザーを捕らえておけば有利になります」
「……捕虜? そんないつでも逃げ出せるような格好なのに?」
ミミはレオンダルムの首にしっかりと手を回していた。
「この者が何を考えているか私にはわかりかねます……」
「……レオン将軍もそんなに大事そうに抱いていて、まんざらでもなさそうですね」
「……」
少し照れているのがわかるがわざと見逃す。
「デスリッチ参謀……私もひとつ質問してよろしいでしょうか?」
「……何ですか?」
「そちらも腕に抱いている『もの』は何ですか?」
デスリッチは両腕を実体化し、ぐったりしているヒショウを抱いている。
「こ、これは……捕虜です。
私もイシュライザーを捕らえておけば有利になると思いまして……」
「捕虜? もう死にそうですよ?」
デスリッチはヒショウの心臓へ絶え間なくライフ・ストリームを注いでいる。
心臓にだけはライフ・ストリームの効果が少しある事を発見したのだ。
かろうじて心臓だけはかすかに動いている。
自分にもかなりダメージが残るなか、しっかりと抱きかかえ、
懸命にスピードを上げて急いでいる。
「……龍帝様なら……この方を生き続けさせる方法をご存じかもしれません!
私は……ヒショウさんを……死なせたくない!」
「そんな参謀殿を初めて見ました。
いつも冷静でしたので……そこまでその者のために必死になられて……
よほど大事な人間なのですね」
二人の将軍は、イシュライザーのふたりを抱いてさらにスピードを上げた。
捕虜ではなく自分の大切な者として……
◇ ◇ ◇
「帰還しましたー」
ヒューマン・キャッスルの最上階。
キャッスル・ブレインの本体が設置されている球体の中だ。
そこはさまざまな電子機器に埋もれ、中央には超巨大なコンピューター、
『ブレイン・サーバー』が設置されている。
まるで本当の脳のような形をしているグロテスクなコンピューターだ。
その前に現れた二人の人影。
一人は『ライザー・シルバー』。
一人は『イイノ』。
「……二人ともご苦労様」
「はい、任務完了です」
イイノはそう報告するとライザー・シルバーのマスクを取った。
そこにはキャッスル・ブレインのアンドロイド型代替端末、
自称『ブレちゃん』の顔が現れる。
ウサギの耳型アンテナがピョコンと揺れた。
「ふー、あつかったー」
「……イイノ君、まさか対生物戦で無敵の『不死生物』対策として、
生物でない『機械』のアンドロイドを使って防衛する作戦とは……私も驚いたよ……」
「はい、改造の為、彼女を長い時間お借りしてすいませんでした。
彼女には『戦闘機能』を搭載させて頂きました」
「……君の肉体変換能力を蓄積・放出できる装置まで搭載されているようだね」
「リッチは普通の攻撃ではダメージが通りませんもの。
弱点の『光』の力を使うのは当然です」
「……このアンドロイドを実戦投入させれば、もう無敵か?」
「いえ、ここからリモート操作を行う為、送受信電波が必要になりますし、
エネルギーを大量に消費しすぎる弱点がありますので長時間は活動できません。
それにこのアンドロイド、独自の人工知能を持っていて、
勝手に動いたり話したりして指示通り動かない時があります。
アンドロイドが使えるのはヒューマン・キャッスル内かその周辺だけでしょう」
「……では防衛の任務には使用できるね?」
「はい。現段階では防衛の任務限定になるでしょう」
「……イシュライザーの人員は増えたのだろう?
戦力が増えたと言う事か?」
「はい……
『ホワイト』を増員できました。
『シルバー』は敵に能力を隠す為、暫く存在は秘密にします……
問題は『ブラック』『ピンク』が敵に捕らわれてしまった事です。
二人に関してはスピードがあるのでそのような事はないと思っておりましたが、
捕らわれたのは何らかの別の要因があったようです。
結果、2名増えて、2名失いました。
プラスマイナス0で今回の戦いは引き分けと言ってもいいですが、
オリジナル・ジェネシスの遺伝子が敵に渡ってしまったことになります。
これでは10体の遺伝子を集める計画が崩れます。
次の作戦はこの奪回となりますね」
「……そこは天才科学者の君を信用しているよ。
科学技術の宝を守る為、力を貸してくれ。
……
イイノ君……
いや、10番目のオリジナル・ジェネシス……」
イイノの目が赤く変わって行く……
「……『ストレンジクォーク』!」




