20.銀色の閃光
「デスリッチさんの気配を感じる!」
中央管理塔の周りを飛んでデスリッチを探していたライザー・ブラックは、
予想していなかったヒューマン・キャッスルの外、
地上の荒野に異様な2つの動きを察知する。
「……これは!?
何者かと戦っているのか?
激しく動いている……
しかも、なんだ、この気配は?」
ひとつはデスリッチと同じ気配だがもうひとつは不気味なエネルギーを持っている。
「何だ? 兵器? 何か人間とは違う!?
早く! デスリッチさんが危ない!」
ブラックは天井の通風口から外へ飛び出した。
◇ ◇ ◇
ライザー・シルバーから感じる冷徹で空虚な心。
デスリッチは17年前の戦いを思い出していた……
ーーー
そこは無重力空間……その中を漂っていた……
何処まで暗い……何も見えない……
「うわぁ……ああ……」
どちらが上なのか、下なのか……何処へ行けば出られるのか?
出口を求めて手を伸ばす……
「はぁ……はぁ……ど、どうすればいいの!?」
永遠のような時間を感じる……自分は死んでいるのだろうか。
……手を伸ばした遙か遠くに光が見えてきた……
「ひ、光が!」
光がどんどん明るくなって来た……あそこまで行けば……
地獄で糸を掴むように光へ手の伸ばす……
出たい……ここを出たい……
「!!」
光に触れた瞬間、眩しさで目が眩む。
自分の体が光に溶け込んで……
「……私に……触れ……たな……」
「うわぁぁぁ!!」
デスリッチの体が光に飲み込まれて消滅して行く……
◇ ◇ ◇
何だろう……ライザー・シルバーを見ているとあの時と……
自分が死んだ時の記憶が蘇って来る。
あの時と同じ恐怖を感じる敵……
デスリッチの細胞の全てが拒絶反応を起こす。
この敵からこの世界の危機を感じる。
「……あの敵を倒さなければ!」
デスリッチは人間を傷つけたくなかったが、
全く人間の気配のしない異様な敵に、意を決して
リッチのオリジナル遺伝子を全開にした!
「……全開変換!!
デス・チェンジ……」
ゴゴゴゴゴ……
漆黒のローブを纏い大鎌を持つ『死神』の姿に変わって行く……
頭部の変化を防止する仮面を被っている為、頭部は変わっていないが
体は骸骨、そこら中に黒い気が吹き荒れる。
「……グゴゴ……」
人間が見れば恐ろしさで気を失うような姿だが、
ライザー・シルバーは全く動ぜず、逆に空から降下して接近して来る。
「……」
デスリッチはそれを見るとスーッと浮遊し、シルバーの頭上へ移動すると
高く振り上げた『死神の鎌』を斬り下ろした。
「……デス・サイズ!」
死神の鎌は相手の体ではなく生命を斬り裂く。
直撃すれば確実に死ぬ。
ゴォォォ!
鎌はライザー・シルバーの体を上から斬り裂き、足の先まで通り抜ける。
生命力を確実に奪ったと確信する……
「……これで……終わり……」
ライザー・シルバーが動きを停止する。
墜落すると予想した瞬間だった。
ブーーン
機械的な音がして人差し指を左右に振る。
「!!」
「……ぜんぜん……ききませんよー。
もうあそぶのあきたー」
「お、音声!?」
突如ライザー・シルバーはスイッチが入ったように速くそして高く飛んだ!
ジャンプなんてものではない、ロケットのように山の頂上まで到達する。
「レーザー……スクリュー……」
シルバーはドリルのように激しく体を回転させ、
両脚をキリのように突き出した状態で落下する。
摩擦で光り輝き、レーザー光線のようなスピードで一点を狙った!
ドスッ!!
「……グゥッ!」
デスリッチの胸に穴が開き、その中を閃光が突き抜けた!
「レーザー……カッター……」
シルバーの右腕が輝き鋭く伸びて、『剣』のように変化する!
ズバッ、バシュッ
防御する間もなく、縦、横に閃光が走った。
光は地面を深く斬り裂き、遠くにあった岩をも両断する。
「……ウワァァ!」
ザンッ
デスリッチの右腕、左脚が切断され、はるか遠くに吹っ飛ばされている!
「……ググ!」
立っている事ができなくなり、崩れ落ちるデスリッチ。
あっという間の出来事だ。
斬られた痕から負のパワーが逃げて行く……
全開変換した『死神』の状態から、徐々に元の姿へと変わって行く!
「……何が起きたのです!? 光……!?
もしや?」
光る腕をさらに腕を振り上げ、デスリッチを八つ裂きにしようとする!
「ざんねんでしたー……これで……おわりねー」
「……く」
デスリッチはとっさに空中高く浮遊し逃れようとする、が……
敵は一瞬でジャンプし迫ってくる!
「……も、もう……命を破裂させるしか……ありません!
……
ライフ……」
黒い気がライザー・シルバーを包み込んだ!
「あはは、なーに?」
「バースト!!」
その瞬間、大爆発を起こす!
スドォーン!!
敵の内部を破裂させる無慈悲な攻撃!
どのような生物も防御不能だ。
「……な、なんて……事なの!?」
ライザー・シルバーはその大爆発の中から平然と現れる。
爆発した胸の部分に小さな穴が開いているが、空洞のようになっているだけだ。
そんな状態でも何事もなく動いている!
「もう!……ていこうはやめてねー」
ライザー・シルバーは腕をこちらにゆっくり伸ばた……
「リフレクター……ターゲッティング……」
青白い光が閃光のように迸る。
「……もしや!」
「シャイン・ラディエーション!」
あの時と一緒だ!
あの光!
これは……10番目の『オリジナル・ジェネシス』の……
「……きゃああ……」
青の閃光がデスリッチを襲う!
霊体のデスリッチでさえ、あっという間に消え去る光の一撃!
……しかし、
光が直撃する瞬間、黒い影がデスリッチを守るように立ちはだかった!
ザンッ!
「ぐぅ……うぉぉぉぉぉ!」
黒い影は翼を大きく広げ、背中でその光を受け止めた。
「デ……デスリッチさん……」
農業エリアで会った、『ライザー・ブラック』!
「……あ、あなたは!」
シュウゥゥゥ!
翼が! 背中が! 真っ黒な炭のように焼け焦げて煙を上げる。
「……や、やめて! あなたが死んでしまう!
私は消えてもいいの! お願い!」
「デスリッチ……さん……は消えさせない……
俺が守る……」
歯を食いしばりながら激痛に耐える。そして……
デスリッチをぎゅうっと抱きかかえて、力の限り遠くへ飛ぶ!
もう朝が明けそうな空の中、
ヒューマン・キャッスルが見えなくなるまで飛んだ!
◇ ◇ ◇
標的が消えてしまった……
ライザー・シルバーは、左右を確認し、動作を停止する。
「……ターゲット……ロストしましたー」
ジジジ……ジジ……
「……ミッション……コンプリートでーす」
ジジジ……ジジジ……
「……リバース……トランスミッション!」
ヒューマン・キャッスルから電撃が発射されシルバーを直撃する。
地上から消えて、誰もいなくなった……
◇ ◇ ◇
高速で飛行していたブラックは力尽きて、どんどん墜落して行った。
「……す、すいません……限界が……」
ズザザザザ……
デスリッチをかばいながら地面を削るような着陸だ。
「はぁ……はぁ……」
翼を含めた背中一面が真っ黒だ。
大火傷でかなり危険な状態だとわかる。
「……だ、大丈夫ですか!」
デスリッチは急いで自分の切断された腕・脚を元に戻し、ドクロの面を取って
ブラックを抱き起こした。
そしてイシュライザーマスクを外し、息を楽にさせる。
「……今すぐ、回復させてあげます……
ライフ・ストリーム!!」
太陽のような光がブラックの背中に降り注いだ。
みるみる傷が……
「……!? 火傷が……治らない!」
ライフ・ストリームを何度も使用するが一向に火傷は治らない……
「……いくらやっても細胞が再生しないなんて……
もしや、遺伝子を破壊されているの?」
遺伝子を強化されたイシュライザーさえ、生命に関わるダメージを受けている。
あのライザー・シルバーは遺伝子を破壊する攻撃を行ったのか!?
「はぁ……はぁ……」
息が荒くなるブラック……
「……ああ、駄目……ライフ・ストリームが全然効かない!」
それでも命をつなぎ止める為、必死に生命を吹き込ませ続けた。
「も、もう……いいですよ……デスリッチさんさえ……無事なら……
僕の分も……生き続けて下さい……ね……」
「……嫌! 死なないで! あなたを死なせたくない!!」
「ヒ、ヒショウ……と呼んで欲しいです……
僕の名前を忘れないで……下さい……」
ガクリと力尽きる……
「……ヒ、ヒショウ……さぁぁぁん!!」




