12.ライザー・ホワイト見参!
科学技術庁の『ミーティング・ルーム』とやらに案内された。
テーブルを挟み、人間側の副司令官『イイノ』と向かい合う。
「お前とは初めてではない。
わしが一度ここに飛ばされて来た時、公園とやらで見たことがある」
「そう。気分転換に行く時があるの。
いろいろ悩み事があるから……
昔を思い出すと良いアイデアが浮かぶのよ」
じっと見つめながら話して来るイイノの暖かい眼差しに戸惑う。
「お前といると心が安らぐ気がする。
昔から知っているような感じなのじゃ」
「……あなたのお父さんは昔、ここにいたわ。
それにあなたが生まれた時の事もよく知っている」
「何?! わしの子供の頃の事を知ってる?
父上とも知り合いか?」
「あなたのお父さん、空から落ちてきたわ。
懐かしいわね……」
自分と父上をよく知ってるのか……
父上もこの世界の事をよく話していた。
「それと……りっちゃんは元気?」
「りっちゃんも知っとるのか!?」
「元々、科学技術庁の職員だったのだから。
私の後輩で職員の中でも天才だった。
変わった趣味があってガラクタばっかり集めていたわ。
機械いじりが大好きでガラクタを改造して、無線の通信機なんかよく作ってた。
それでタツオ君とあなたが遠距離で通信してるのがすぐわかったわ」
りっちゃんとも知り合い……
「本名は律って言ってね。
りっちゃんと言う呼び方は私が呼んでいたのをあなたが覚えたからじゃないかしら」
「そうだったのか。小さい時からその呼び方だったから」
「そんな仲が良いのに何で敵同士になっとるのじゃ?
それこそ話し合いで解決するんじゃないか?」
「りっちゃんが生きてるとは知らなかったし、
今の私とりっちゃんの目指すところが異なっているのよ。
私は科学技術で人間がより良い生活をする為、科学技術を守る。
りっちゃんは人間が人間らしく生きる為、科学技術を破壊する」
「どちらが正解で正義なんだ?」
「私は正直、どちらも正解で正義だと思っている。
それでもどちらかと言ったら戦いに勝った方じゃないかしら?
あなたはどうなの?」
今まで何のために戦っているか目的があいまいだった。
ただ命令通りに出陣し戦う。
この前だってタツオに会いたい一心だった。
「わ、わしは……どうしたいのじゃ。
ただただ言われた通り戦えばいいと思っていた。
父上やりっちゃんのように崇高な目的がない。
今の目的と言えば、タツオと結婚する事と
りっちゃんを人間に戻す事の2つ……
それが実現できればどちらでもいいのだ」
「そういえばタツオ君はあなたに会った後から肉体変換能力に目覚めたわね?
あなたとタツオ君の間に何かあったの?」
「……何もない! 強いて言えば一緒に寝ていたぐらいじゃ」
「一緒に寝た?
……もしかしてタツオ君と男女の仲になったの?」
「男女の仲ってなんじゃ?」
イイノはなぜか赤くなって口ごもった。
「いや……あなたにはそのような知識はなさそうね。
この件は別の機会に教えます」
「……気になるな」
「あなたの目的の一つ、りっちゃんを人間に戻す事ですが
りっちゃんの『遺体』、正しくはかすかに生きている状態で
この塔の『冷凍室』に冷凍保存されています。
おそらくあなたの父が生命力を遺体に送り続けて、
死んでしまう事を防いでいるのではないのかしら?」
「何故、その事を?」
「今のりっちゃんは、遺体のオリジナル遺伝子の力で霊現象化したものでしょう。
遺体の冷凍保存を停止すれば完全に亡くなって消えてしまいます。
それに科学技術がもっと発達すれば……
りっちゃんを復活させる事も可能になるかもしれません」
「何!? 本当か?」
「科学技術を破壊してしまえば、りっちゃんは死にます。
りっちゃんは自分が死んでもいいと思っているのでは?」
「その通りじゃ。りっちゃんはいつも自分の事など二の次じゃ。
自分はどうなっても目的を果たそうとしている」
顎に手を当てて考えるイイノ。
何か深く考えている。それをじっと見ている。
「りっちゃんを守る為に、敵の侵攻を止めなければ。
敵の目的は『科学技術』の全てを管理、運営している『キャッスル・ブレイン』。
キャッスル・ブレインを破壊されればヒューマン・キャッスル内の設備は
すべて停止してしまうでしょう」
「何? 侵攻して来ているのか!
なんと速い進軍じゃ」
「タツオ君もこの塔の防衛に就いている」
「タツオが……」
「今どうなっているかモニターで見てみましょう」
イイノが携帯型コンピューターを操作しミーティングルームのモニター画面に
塔入り口の映像を映させる。
「タツオ!!」
画面には地面に倒れ血の海にいるライザー・レッドのタツオが映し出された。
「何事じゃ! タツオは大丈夫なのか!!」
早く行かなければ!
タツオの命が危ない!
飛びだそうと立ち上がるがイイノに止められた。
「待って! そのまま出て行ったら、あなたの事が敵にばれてしまうわ」
「ばれてもいいじゃないか! タツオが危ない!」
「あなただとわかったら、あちらに帰れなくなってしまう。
正体を隠して戦うのよ」
「そんな事できるのか? わしの戦闘用マントは置いてきてしまった……」
「それに能力を全開して戦うと元に戻れなくなってしまう。
私に考えがあるわ!
『更衣室』に来て!」
緊急事態にイイノの考えに従うしかなかった。
すぐさま更衣室に向かう。
◇ ◇ ◇
イイノはロッカーに仕舞ってあったアタッシュ・ケースをひとつ取り出し
机の上で開いた。
そこにはあの人間の部隊のスーツが入っている。
「これは!? タツオが身につけていたもの?」
「これはあなたの正体を隠すとともに、頭部の肉体変換能力を防止し
戦闘能力を高める働きがあります。
早くこれを身につけてタツオ君を救出に行くのです!」
「わかった! 早く使い方を教えてくれ!」
「使い方はこれを着るだけ。
ゴーグルのモニターには様々な数字やメッセージが表示されるけど
今は気にしないで、これを着て!
わからない事があればマスク内の通信機を通して教えます。
あっ、戦闘中は正体を隠す為に仲間同士は『レッド』みたいに『コードネーム』で呼んでね」
「これを着て戦えばいいのだな?」
「そう! じゃあ出撃よ!」
◇ ◇ ◇
塔の入り口。
レッドの胸をレオンダルムの爪が突き破ろうとしている!
必死に抵抗するが出血で意識が飛びそうだ。
「終わりですね。イシュライザー!!」
まさにもう一押しでとどめになろうとしていた……
その時!
「ドラゴン・スケイル!!」
ドシュ! バシュ!
「なっ! ぐわぁぁぁ!!」
『ドラゴンの鱗』がいくつもの刃物のようになってレオンダルムの胸に突き刺さった。
レオンダルムは数十メートル吹っ飛ばされ、地面に転がりながら倒れる。
「何者!?」
「レッドを傷つける者は……ゆ……る……さ……ん……」
暗闇の中から白く輝くスーツを身につけたイシュライザーが現れる!
「し、白い戦士!? このような者、聞いてないぞ?」
レオンダルムは驚愕の表情を浮かべる。
「……レオン様……
あ、あれは……イシュライザー……6人目の戦士……
ライザー・ホワイト!
一体、誰が?」
「新しいイシュライザー!?」
ライザー・ホワイトの体からドラゴンのオーラが立ちのぼった。
「ライザー・ホワイト……見参!」




