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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
二.キャッスル防衛編
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09.転送装置Ⅱ


 ドーア火山の頂上には大昔に噴火した火口がある。


 現在は土に埋まってただの窪地になっているが周囲は切り立った崖だ。

 その崖の上に2つの人影があった。



「ダハハ、ここからなら誰が攻め込んで来てもよくわかるな」


「にょ、眠いよー、夜なんだから寝かせて。

 月の明かりでやっと動けているんだから……」


「寝るな! カレン! これが俺たちの任務だ!」


 ゾルタクスとカレンシアは見晴らしのいい火山頂上で『監視』を行っている。

 頂上からは遙か遠くまでよく見える。

 近くは岩だらけだが、その先は緑の森林が広がっている。


「ダハハ、やっぱり俺とカレンは森の中の方が性に合っていると思うがな。

 そういえば姫様は大人しくしてるのかね?

 暴れたらお前の能力で捕らえるんだろ?」


「……スピー……スピー……」


「おい!」


 カレンシアはいつの間にか寝ている。

 足場がわずかしかないが器用に仰向けになっている。


「こんな所で寝ると落ちるぞ!

 ったく!

 何処でも寝るんだな。

 ……仕方ない、朝になったら俺が休むぞ」


 ドカッとその場に胡座をかいて座り込む。


「ハハ、いつでも来やがれ」



 ◇ ◇ ◇



「もう! タツオはどうしたんじゃ!」


 ヒューマン・キャッスルが大騒ぎになっている事など、まったく知らないアルノドーアは

 石のベッドの上でプンプン怒っている。


 通信機になっているドラゴンの骨のマスクにはいつもならタツオから通信が入るはずだが

 今夜は全く無反応だった。


「もう寝てしまったのか!?

 ……こうなったら一晩中起きててやる!」


 そのままマスクを胸に抱いて横になる。


「……やはり声だけだと寂しいな。

 戦いなどなくなればいいのに」


 ジジジ……ジジジ……

 マスクから雑音がした。


「タツオか?」


 ガバっと飛び起きるとマスクを置いてベッドの上で正座した。


「おい?」


「……こちらヒューマン・キャッスルです……

 聞こえますか?」


 いつも聞いている声ではなく女性の声だ。


「タツオではないのか? 誰じゃ?」


「タツオ君は今任務中なの。あなたがアルノドーア?」


「なんでわしの名前を!?」


 アルノドーアは警戒し身構える。


「私はタツオ君の上司、科学者の『イイノ』と言います。

 タツオ君からあなたの事は聞いています」


「えっ? タツオの知り合いか?」


「ええ、よく……

 今日はちょっとお話があって」


 ……敵の指揮官らしい女性だ。

 何か策略でもあるのか?

 

「わしなんかに何の用だ? 敵の将軍だぞ」


「あなたは本当は戦いなんて嫌なんでしょう?

 私も血を流す戦いなんてしたくありません。

 一度こちらの話を聞いてもいいのではないですか?」


「……戦うか戦わないかは、わしが決められないんじゃ」


「ヒューマン・キャッスルにもう一度来てみない?」


「わしはこの前の戦いで失敗してしまって謹慎中じゃ。

 牢獄のような部屋に閉じ込められている。

 行きたくても出られない。

 タツオともこの通信機での会話しかできないんじゃ」


「そうなの……

 でもね、やってみたい事があるの。

 あなた、『転送』って知ってる?」


「ああ、そっちに一度行った時、光のようになって転送されたことがある」


「それを少し応用した技術を使ってみようと思うの。

 この通信機は何で聞こえているか、わかる?」


「知らん。何かの肉体変換能力(ライズ)か?」


「いえ、科学技術よ。

 目に見えない『電波』を使って信号を送っているのよ。

 転送技術は肉体変換能力を使った瞬間に細胞を電気に変えて

 転移させる科学技術。

 それを電気じゃなくて『電波』に変えて転送させたらどうかしら。

 あなたの通信機から、こちらにあるタツオ君の通信機に

 あなた自身を転送させれば、すぐにこちらに来られる」


「え、本当か!!」


 アルノドーアの目が輝く。

 もし、それができれば今すぐにタツオの元に行ける。


「もう、別の通信機で実験を行って成功しているの。

 後はあなたの意思次第。どうかしら?」


 もしかしたら敵の罠かも?


 父やデスリッチの許可もない……

 でも……


 この女性の声に温かさがある。

 父と同じような安心感を感じる。

 言葉が心に響く。


 それに……

 タツオに会いたい……


「わしもそっちに行きたい!

 『転送』とやらをやってくれないか?」


「わかったわ!

 じゃあ、合図を出したらあなたの肉体変換能力を発現させて!」


 アルノドーアはベッドを降りるとマスクに向かってまっすぐに立った。


「いいぞ!」


「転送装置、起動します。じゃあ、お願い!」


 左腕を上に向けて叫ぶ。


「ドラゴン・アーム!」


 左腕があっという間にドラゴンの腕に変わる。

 その瞬間、ドラゴンの骨のマスクから光が放たれる!


「これは……前と同じ……」


 アルノドーアの左腕の先から消え、マスクの中に吸い込まれて行く。


「うぁぁ……」


 左腕から体、脚と消えてアルノドーアは自分の部屋から完全に消えた。

 マスクだけがベッドの上に残された。



 ◇ ◇ ◇



 ヒューマン・キャッスルの最も地下、転送装置が設置された部屋。

 転送装置がドクロの仮面に繋がれて機械音を響かせている。


 仮面から光が放たれ部屋の中心で、人の姿が形成される。


 光の中からはアルノドーアの姿が一瞬のうちに現れた。


「成功よ。ついに転送技術は完成されたわ」


「ここは?」


 アルノドーアはキョロキョロと機械だらけの部屋を見渡す。


「初めまして。

 私がヒューマン・キャッスル特別防衛隊の副司令官、『イイノ』と申します」


「あ、この人は!」


 アルノドーアは見覚えがあった。

 初めてこの世界に来た時、公園のベンチに座っていた女性。


 優しい目と温かい雰囲気。

 警戒しなくていいと細胞が答える。


「わしは、ドーア軍の龍将軍『アルノドーア』じゃ。

 ここは人間の世界か?」


「そう、ここはヒューマン・キャッスルの地下。

 『科学技術庁』と呼ばれるエリアよ」


「こんなに簡単に来れるとは……

 今までの行軍は何だったんだ」


「転送技術は危険性があって近くまでしか使わなかったけれど

 これを使えばかなり遠くまで移動できるわね。

 だけど、今回のように転送先に通信機がないとできないし

 あちらの通信機の電源が切られてしまうと戻れないのが欠点ね」


 イイノはそこまで言うと無言になった。


 アルノドーアを目を細めて見ている。

 少し涙ぐんでいるのか……


「どうしたんじゃ? わしの姿が珍しいのか?」


「ううん……嬉しいのよ」


「転送が成功したからか?」


「……いえ、何でもないの。

 じゃあ、別の部屋でお話しましょうか。

 お互い……初めてだから……」


「そうじゃのう」



 ◇ ◇ ◇



 ドーア火山のアルノドーアの部屋は定期的に見回りが確認に来る。


 部屋は牢獄のような作りになっている。

 岩でできた入り口の扉に開いた穴から中を覗くのだ。

 

「姫様……失礼致します」


 蜥蜴人(リザードマン)の兵士は中を見て驚く。


「い、いない! 姫様が!」


「どうした?」


 別の兵士が駆けつけて来た。


「姫様がいなくなりました!」


「何だと!? 早く将軍たちにご連絡を」



 すぐさまゾルタクスとカレンシアの元へ報告に走る。


「何? 姫様が消えた!?」


「……スピー」


「カレン、寝てる場合じゃないぞ。

 おい、部屋に案内しろ」


 ゾルタクスは部屋に駆けつける。


 ドォン! ドォン!

 ゾルタクスは怪力で岩の扉を叩いた。


「姫様!

 答えないな……

 ホーネット・スティング!」


 右腕を『雀蜂』の毒針に変え、扉に突き刺す!


 グサッ!

 バリバリッ!


 岩の扉は刺し傷から亀裂が入りバラバラに砕け散る。


「本当にいない!?」


 部屋の中には気配がない。

 壊された形跡もない。


「一体どうしたんだ?」


 石のベッドの上にドラゴンの骨のマスクのみが転がっていた。


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