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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
二.キャッスル防衛編
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08.幽霊が好きなんです

 

 農業エリアの上空を飛ぶブラックはドキドキしていた。


「……亡霊(ゴースト)が攻めて来たと言う事は……

 あの人も……来ているかもしれない……」


 ブラックは敵の侵攻を聞いた時から、かすかに期待していたのだ。

 軍勢の参謀を務めるデスリッチが来る事を。


「きっと……来ているはずだ……」


 鳥の危険察知能力を発動させ敵の気配を探る。

 敵意のある者ならば姿が見えなくても察知できる。


「あの人と会えるのは……この瞬間しかない!

 想いを伝えるには……」


 レッドに聞いた通りにするんだ。

 想いの伝え方を。


 ブラックはレッドの言葉を思い出す。



 ◇ ◇ ◇



「ヒショウさんは話す事が苦手だそうですね」


「ああ……話そうとするんだが……

 相手に嫌がられると思って躊躇してしまうんだ。

 嫌がれるんだったら何も言わない方がいいのでは、と。

 自分も傷つかないし……」


「それも一つの考えかもしれませんが……

 ヒショウさんの想いは言葉にしないと伝わりません。

 大昔は電子的な通信手段が沢山あったそうですが

 人間同士のコミュニケーションがなくなってしまったので廃止されたそうです。

 だから今は自分の言葉で伝えるしかありません!」


「でも……」


「勇気です! 思い切って伝えて下さい。

 その後の事はいいじゃありませんか。

 何もしなければ何も始まりません」


「なんて言えばいいんだ?」


「それは……」



 ◇ ◇ ◇



 その時、ブラックは何もない農園の通路に気配を感じた。


「いる……

 見えないけど……ゆっくり動いている……」


 察知した地点へ急降下する。

 地面に降り立ったブラックは気配を感じた所へ走った。


「そこに誰かいるんですか!」

 誰もいない空間に向けて声をかける。


 うっすらと人間の姿が浮かび上がって来た。


 地べたまで伸びる長い紫色の髪、白の死に装束に赤い帯、真っ白の肌に無表情な綺麗な顔。

 あの荒野で見た、デスリッチの姿がそこに現れた!


「……よくわかりましたね……

 人間には見えないと思いましたけど……

 どうやらイシュライザーですか」


 途切れ途切れの電波のような言葉が直接脳に入ってくる。


「あ、あなたは……怪物側の参謀、デスリッチ!?」


 ブラックとデスリッチは正面から相対する。


「……どうします? 戦いますか?」


 ブラックはブルブルと震えている。

 恐ろしさのせいもあるが……それ以上に……


「デスリッチ……さん!」


 いきなり土下座するブラック。


「何ですか」


「あ、あなたを……」


「?」


「ひと目見た時から……『好き』になりました!!」


「は?」


「どうか、僕と……

 隊長とドラゴンの将軍みたいな関係になって下さい!」


「……何を言っているの?」


 頭を下げるブラックを見て唖然とする。

 何かの罠か?


「今は戦いの最中……

 何か狙いがあるの?」


「いえ……本気で言ってるんです」


「あの人の策かもしれませんね。

 ……そんな事してないで立って下さい」


 言われた通り、立ち上がるブラック。


「ど、どうすれば信じてくれますか?」


「……戦いましょうか。

 本気で来て下さい」


「……え?」


「どうぞ。あなたから……」


 無防備に立つデスリッチに躊躇するが、

 思いを振り切りやる気を漲らせる。


「……よーし! 俺の本気をぶつけて見せる!」

 ブラックは両腕に力を入れると大声で叫ぶ!


「ファルコン・ウイング!」

 空高く『鷹』の翼で飛び上がる!


「行くぞ! イーグル・ダイブ!!」

 右脚を『鷲』のかぎ爪にしてデスリッチめがけて急降下!


 デスリッチは全く動かない。

 空気を切り裂くブラックの蹴りが襲いかかった! 


 ブンッ!


「なっ!」


 ドキャッ!

 デスリッチの体を通り抜けて地面に激突する!

 地面が抉れ破片が飛び散る。


「くそ、本当に幽霊か!

 ……ファルコン・カッター!」


 翼を水平に振り切り刀のように切り裂く!


 しかし、またしてもデスリッチの体を通り抜ける!


「ウッドペッカー・ピーク!」

 右腕を『キツツキ』の嘴に変え、突きを放つ!


 デスリッチの体はただの映像のようにすりぬける。


 息を切らすブラック。

「はぁ、はぁ、……物理的な攻撃は無効か……」


 さらに、がむしゃらに右腕を振り回す。


「うぉぉぉ!」

 全くかすりもせず無情に通り抜けるのみだ。


「もういいですね。

 ……デス・スリープ!」


 デスリッチは両腕を大きく広げた。

 その途端、紫色の光が放たれブラックを包み込む!


「う……」

 クラクラと意識がなくなって行く……


 光が消えると地面にブラックは、うつ伏せになって倒れていた。


「……仕方ありませんね」



 ◇ ◇ ◇


 

 数分後、意識を取り戻すブラック。


「……何があった?」


 あっという間の出来事で何も思い出せない。

 イシュライザーのマスクが脱がされている。


「気がつかれましたか……」


「えっ?」


 デスリッチが地面に正座していて、その膝の上に頭が乗っているのがわかった。


「……こ、これは『膝枕(ひざまくら)』!!」


「下半身だけ実体化しています。

 ……意識が戻ったのですね。

 しばらくは起き上がれないですけれど」


 ブラックは感動でもう一度、意識を失いそうになる。


「何も策はなかったのですね……

 罠があれば、手を抜くはずです。

 あなたの攻撃は手を抜いてませんでした」


 デスリッチから人間的な優しさを感じる。

 大人の女性、いや母の慈愛のようだ。


「あ、あなたは……姿は幽霊ですが……

 限りない優しさを感じます」


「そうですか」

 感情を感じない受け答えだ。


「恐怖は感じます……

 それ以上に……あなたからは……人間の温かさを感じます。

 本当にあなたは『怪物』なのですか?」


「……私は……元々、『人間』でした。

 ある戦いで死んでしまって、このような幽霊の姿に……」


「幽霊でも……俺は、あなたの事を『好き』……です」


 キョトンとするデスリッチ。


「好き……ですか。

 レッドさんやアルノドーア将軍と同じ事言うのですね。

 ですが……私は幽霊です。

 何も感じませんし……

 いつ……消えてしまうか……わかりません。

 好きになるなら、人間にした方がいいです」


「生きているとか死んでいるとか関係ない……

 そんなの関係ないです!」


「!……」


 胸に響くような感激を受けるデスリッチ。


「あなたの存在自体がいいんです!」


「……わ、私、どうしたら……」


 目を閉じて、ブラックの頭を優しく撫でた。

 少し頬が赤くなった?


「……」


 無言の時間が流れたが

 デスリッチは何かを思い出したように

 ブラックを優しく地面に寝かせ、立ち上がる。


「……有り難うございます。

 初めて、そのような事を言われました。

 幽霊ですから……恋愛と言う感覚がわかりません……

 だけど……

 少し……嬉しいです」


 少し笑ったような、そして悲しそうな表情で姿を消して行く。

 気配がだんだんなくなって行った。


「デスリッチ……さん!」


 ブラック一人を残し、辺りに静けさが戻った。


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