05.オリジナル・ジェネシスNo.10の謎
レオンダルムとデスリッチが率いる亡霊の軍勢が夜の暗闇を進む。
レオンダルムが先導し、かなりのスピードで進軍する。
「……レオン将軍は暗闇でも関係ないのですね」
今までは夜の進軍はできなかった。
蜥蜴人や蛇人はあまり目が良くなかったし、
何より夜の闇の中をここまで早く先導する者がいなかった。
今回連れてきているゴーストはデスリッチが兵士の霊を呼び寄せ集めた。
感情はなくただ命令を聞くのみだ。
戦闘能力は低いが、壁を通り抜ける事ができる侵入に適した部隊だ。
「ええ……暗闇でも昼間と同じように見ることができます。
それに闇夜の空も飛ぶことができます」
レオンダルムは翼をはためかせて進む。
デスリッチもゴーストも空中を浮かんで移動する。
だから乗り物は不要で休憩の必要がない。
「レオン将軍……夜のうちに敵の本拠地近くまで進みましょう。
昼間は洞窟などに隠れ……夜を待ち進軍します」
「はい。その通りにします」
一晩中進軍しヒューマン・キャッスル近くの洞窟に駐留した。
「……ヒューマン・キャッスルはすぐそこにあります。
人間が眠る時間になりましたら行動開始します。
先にゴーストたちを侵入させ人間たちを混乱させます。
そのスキにレオン将軍と私が二手にわかれて侵入しましょう」
「狙いは中央の塔という事ですね?」
「はい。一際目立つのでよくわかると思います。
ただ塔周辺は道が入り組んでいますので……なかなか入り口がわかりません」
「そうですか。それならば、その時に人間に聞いてみましょう」
「……レオン将軍は生物を操る能力があるのですね」
「はい。私の能力は隠密・情報収集に向いているのです。
お任せ下さい」
ヒューマン・キャッスルには何度も侵入を試みたがいつも失敗だった。
しかし今回は絶対侵入できる自信がある。
これ以上ない作戦だ。
「敵の部隊『イシュライザー』に遭遇してしまう可能性があります。
その時はやむを得ず戦闘になると思います。
私たち、どちらか先に塔へ到着した方が塔の頂上にある『キャッスル・ブレイン』を
破壊するのです。それで決着がつきます」
「そのキャッスル・ブレインとやらは、どのようなものなのでしょうか?」
「キャッスル・ブレインは人間の作ったスーパーコンピューターです。
ヒューマン・キャッスルではキャッスル・ブレインが全ての事を決定しています。
人間たちはキャッスル・ブレインの言うことに逆らうことができません。
キャッスル・ブレインの破壊は人間の解放と同じ意味です」
レオンダルムは少し首をかしげる。
自分たちの目的は人間の解放なのだろうか。
「参謀殿、それが龍帝様の目的でしょうか?」
「キャッスル・ブレインは1000年前の最高の科学技術で作られました。
そのすべてを搭載したと言われています。
そのコンピューターによる管理で人間の生活がよりよくなると思われておりました。
しかし、人間たちは自分たちで考える事をやめ、
コンピューターの判断でしか動かなくなりました。
その結果、家族や人とのつながりが煩わしくなり
人間同士のコミュニティーがなくなり、結婚や家族の制度もなくなってしまいました。
人間の数は減少が続きキャッスル・ブレインは遺伝子操作による
人口の維持をするようになりました。
ただ遺伝子操作は非常に危険です。失敗ももちろんあります。
それにより人間はさらに減少しています」
「人間が滅亡しそうなのはわかります。
キャッスル・ブレインを破壊すれば人間は1000年前の状態に戻り
また繁栄するかもしれません。
しかし何故我々がそのために行動しなければならないのでしょうか?」
「人間は遺伝子にさまざまな手を加え強化し、
特殊な能力を持った人間を誕生させました。
『オリジナル・ジェネシス』と言う遺伝子を操作された10人の人間です。
何故このような事をしたのか、定かではありませんが……」
「我々の祖先ですね。
我々、吸血生物の一族は暗闇の中でしか生活できません。
1000年の間、太陽の下がどれほど羨ましかった事か……
すべて人間の為に……」
同じ人間だったデスリッチは言葉に詰まった。
将軍たちはヒューマン・キャッスルの人間には少なからず敵意がある。
ゾルタクスは虫の一族の為、常に敵に襲われる生活を強いられ、
カレンシアは長い間、たった一人で生きてきた。
「将軍のお気持ち、お察し致します……
しかし人間のすべてが悪い訳ではございません。
科学技術が悪い訳でももちろんございません。
龍帝様は人間を恨んではおりません。
人間の心の中の怪物を憎んでいるのです。
我々は科学技術を頼みとする人間を変える為に戦うのです。
その為にすべての元であるキャッスル・ブレインを破壊します」
「……」
「キャッスル・ブレインが作られた目的は
1000年前の科学技術によって人間を守る為です。
キャッスル・ブレインは常に科学技術を第一に考えます。
しかし、今はその科学技術が人間や我々の脅威になっています。
人間が科学技術を元に生活するのではなく人間は人間として生活するべきです」
「……参謀殿、まだまだ難解な問題ですのでなんとも言いがたいですが
人間から科学技術をなくすことで我々が守られるという事ですか?」
「……その科学技術の象徴とも言える10体のオリジナル・ジェネシスですが
そのうち……
鳥・水生生物・巨人・獣・不死生物の5つのオリジナル遺伝子は人間の世界で受け継がれ
虫・植物・吸血生物・ドラゴンの4つのオリジナル遺伝子は
こちら外の世界で代々受け継がれています。
……ですが……
それ以外の……10番目のオリジナル・ジェネシスは
1000年の間、ずっと存在していました。
ヒューマン・キャッスルの中に潜んでいたのです。
それが『最悪の敵』と呼んでいる者です」
「最悪の敵……ですか……なぜ最悪なのですか?」
「それは……完全に倒す事ができないからです……
なんでこのような者が生まれてきたのか……誰もわかりませんが……
この敵は1000年前、この星を瞬く間に荒野にし、
人間が地上に住めなくなってしまった原因を作りました。
遺伝子を強化された者しかこの地上では生きられなくなったのです。
普通の人間はあのヒューマン・キャッスルから出られません」
「!! 我々が繁栄しているのは強化された遺伝子のおかげだと……」
「そうです……1000年前に他の9体のオリジナル・ジェネシスが
捨て身で戦い、消滅させたと言われます。
ヒューマン・キャッスルではオリジナルたちが暴れた為、
宇宙に避難したと言う歴史になってますけれど……
本当は9体のオリジナルたちは星を守っていたのです。
傷ついた9体のオリジナルたちは後に復活するであろう敵と戦う為、
自分の遺伝子を受け継ぐ子孫を残し、
絶滅しかけた動物たちに自分の細胞を分け与え、地上で生活できるようにしたそうです。
オリジナルの遺伝子を受け継いでいるのが
人間の世界では『イシュライザー』、
外の世界では我々5名の『将軍』。
異形種と呼ばれている者は、オリジナル・ジェネシスの細胞の一部を移植した動物たちです」
「!」
「……イシュライザーも5名の将軍も本来目的は同じなのですが
イシュライザーはキャッスル・ブレインに命令権を握られています。
意思に関係なく、戦えと信号を発せられると
戦わなくてはならなくなります。
ヒューマン・キャッスルが持っている科学技術を守る為、
イシュライザーたちは利用されているのです。
キャッスル・ブレインを破壊すれば命令など受け付けないでしょうけど」
「破壊すれば戦いはなくなるのですね」
「……そうです。
それにキャッスル・ブレインはオリジナル・ジェネシスの遺伝子の管理権も握っています。
最悪の敵の復活を命じれば人間はそうするでしょう。
その為にもキャッスル・ブレインを破壊するのです。
我々の真の目的は……最悪の敵、『10番目のオリジナル・ジェネシス』の
復活を完全に防ぐ事……これが最終目的です……
科学技術の負の産物……世界の脅威……
この敵がいる限り……人間も……我々も……いつ滅亡してもおかしくありません」
「……わかりました。
我々だけでなく、この星すべての問題なのですね。
それに龍帝様のご命令とあらば命を賭けましょう」
「……わかっていただいてありがたいです。
しかし、注意せねばならないのは
既に10番目のオリジナルが復活していたりしたら……」
「倒せばしばらく復活しないのですか?」
「17年前に一度、復活してしまったのです。
復活したばかりで……まだ完全に目覚めてはいない状態でした……
それに気づいた人間はごく一部でした……
その時……龍帝様は奥様とキャッスル・ブレインに住んでいらしたのです。
龍帝様と一部の科学者が協力して……命がけで戦いました。
戦いの末、相手と相打ち。
私も死んでしまい……龍帝様も瀕死の状態で記憶も一部消えてしまいましたから
……どうなったかあまりわからないのです」
「もし、遭遇してしまった場合、どうしますか」
「……10番目のオリジナルかどうか一目見てもわからないでしょう。
それに攻撃された瞬間にこちらは何もわからず倒されていると思います。
……本当に恐ろしい敵なのです……実体がなく……正体不明ですから」
「参謀殿のように霊のような存在でしょうか?
何か少しでもわかる方法はありますか」
「龍帝様ならドラゴン・センスという事前に敵の気配を察知する能力があるのですが
……我々では敵かどうかわかりません。
ただ光を使った攻撃をすると言うのはわかっています」
「光……ですか」
「それを感じたらすぐに退却して下さい……すぐにです」
「わかりました……それでは、夜になりましたら行動を開始しましょう」
「あとひとつ言い忘れました。
強敵と戦う時はこのドクロの面を付けて下さい。
頭部の肉体変換能力を防止する働きがあります。
頭部を変化させてしまうと元に戻れなくなりますので……」
「そうですか……気をつけるとしましょう」
デスリッチとレオンダルムは
一抹の不安を抱えながら、夜を待った。
……辺りが真っ暗になった頃
「レオン将軍……そろそろお時間です」
「承知……ではゴースト軍団、敵の本拠地に静かに侵入しなさい」
ゴーストたちはキャッスル・ブレインの下で姿を消した。
暗闇の中……
いよいよ攻撃が始まる。




