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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
一.怪物襲来編
26/247

25.5 間の話:りっちゃんの一日

 私はドーア軍将軍兼参謀デスリッチ、通称りっちゃん、そう呼ぶのは姫様のみ。

 毎日とても忙しい。


 幽霊(アンデッド)なのでもちろん寝ない上に疲労もなく24時間営業だ。


 ……横になってるだけだが

 朝6時起床。


「さぁ……姫様を起こしに行かないと……」

 姫様(アルノドーア)を起こす事から一日が始まる。


 ◇ ◇ ◇ 


 部屋に向かう。歩いているように見えるが空中を浮遊しながら足を動かしているだけ。


 姫様の部屋の扉は分厚い岩の扉だ。

 蜥蜴人(リザードマン)数人がかりでもなかなか動かない。

 姫様なら肉体変換能力(ライズ)を使えばいくら分厚くても一瞬で細切れだろう。

 なので私は扉を破られた時の為に警報(アラーム)をセットしている。

 警報が鳴れば自分がすぐに駆けつけて問答無用で姫様を麻痺(パラライズ)させる事にしている。

 言わば警備員も兼ねている。

 そうだ、自分が不在の時は今度新しく加わった将軍たちに頼もう。

 確か姫様並の怪力がいたはずだ。


 扉の前であれこれ考えたが今は朝一の任務だ。

 我に返り扉の中へ進む。

 幽体なので扉を簡単に通り抜けられる。

 もちろんノックもなく勝手に入りまくりだ。


 中に入ると姫様は石のベッドの上で横向きに寝ている。

 ドラゴンの骨のマスクを大事そうに抱いて。

「……姫様……幸せそうな顔で寝ていますね」


 こないだの遠征の前までの事を考えるととても嬉しい。

 少しは元気になってくれた。

 姫様の夢を早く叶えてあげたいけれど、もう少しお待ち下さい。


「姫様……起きて下さい……もうすぐ時間ですよ」

「……う……ん」

 まったく起きない。

 最近は夜遅くまで起きているようだ。

「……姫様……タツオさんがお出かけになる時間ですよ。

 ……朝起こせと言っていたじゃないですか」

「んん……」

「仕方ありませんね……」


 ふぅ。


 姫様の耳に息を吹き掛ける。

 息と言っても能力で冷たい空気を起こしただけだ。


「……つめたっ!」

「目が覚めましたか……姫様……」

「りっちゃん! いつもその起こし方はやめろ!」

「……こうでもしないと起きないじゃないですか」

「ドラゴンの眠りは深いんじゃ」

「それはそうと……朝のお見送りの時間ですよ」

「あ……そうじゃった! すまん、りっちゃん」


 姫様はマスクの通信機に向かってタツオさんと何やら話している。


「……タツオさんも朝早くから夜遅くまで大変……

 姫様のことだ……なかなか切らないだろう……」


 とりあえず姫様を起こすと言う任務は完了だ。


 ◇ ◇ ◇ 


 ……続いて、玉座の間で龍帝様のお世話だ。

 ご健康状態の確認、玉座の間の掃除を行う。


 ドーア火山の中は広大な空洞で中央付近は大広間になっている。

 そこを通った先が玉座。

 玉座には龍帝ヴェルドーア様がお休みになられている。


「……デスリッチです。失礼致します」


 深い眠りに入っているようだ。

 姫様の言われた通りドラゴンの眠りは深い。

 龍帝様は17年前の戦いで体中傷だらけ。

 本当は黄金色(ゴールド)のドラゴンでいらしたのに敵の攻撃を受けて真っ黒になってしまった。


「お痛わしいお姿……」


 年々お体が動かなくなって来ている。

 衰弱している証拠だ。

 龍帝様にもしもの事があれば生命力を頂いている私も消えていなくなってしまうだろう。

 時間的な猶予はあまりないかもしれない。


「龍帝様や私がいなくなったら……姫様お一人で大丈夫だろうか」


 いつも心配するのは姫様の事だ。

 姫様が生まれた時から16年、常に共に生活していた。

「ほとんど……母親ですね」


 幽霊だから年を取っていないから、もう姫様とあまり変わらない年になってしまった。

「人間だった時は……18歳……あっという間……母親というよりお姉さんか」


 何としても消える前に世界の危機を除いておかなければ。

 ……姫様の幸せの為に。

 ……姫様がご無事であれば自分などどうでもいいのだ。


「そう言えば……今の姫様にはあのタツオさんがいる……

 献身的な人のいい性格でヒューマン・キャッスルでは大変珍しい人間……

 もうお一人ではなかった」


 自分がいなくなった後はきっとあの方が支えて下さる。

 一抹の寂しさを感じる。


 でも……

 ヒューマン・キャッスルを攻略するには

 タツオさんが所属している特別防衛隊『イシュライザー』たちと

 戦わなければならない。


 ……ヒューマン・キャッスルの人間はキャッスル・ブレインの命令に忠実。

 キャッスル・ブレインは必ず外からの敵を排除しようと命令するだろう。

 タツオさんといえど命令に逆らう事ができない。

 タツオさんが戦いを嫌がっても他の隊員たちは戦うだろう。


「……とりあえずイシュライザーとはなるべく……正面衝突しないような作戦を

 考えなければ……」


 人間たちを攻撃したくない。

 あの人が作ったイシュライザーを傷つけたくない。


 イシュライザーと戦わずに……先にタワーとキャッスル・ブレインを占拠して

 最悪の敵の復活を阻止する。


 …………


 しかしもう最悪の敵が復活していたらどうするのか。

 あれがいた場合、将軍たちも全滅覚悟で全開変換(フルライズ)しなければいけないのだろうか。

 あの時は龍帝様の全開変換攻撃で何とか倒した……自分たちにできるのか……。


 …………


 それに

 こちらが17年前と同じ相手と気づかせたくなかった。


 だから今までこちらは肉体変換能力(ライズ)をなるべく使わず

 一般の兵士だけで戦っていた。


 先の戦いで、姫様が肉体変換能力(ライズ)して戦って

 ドラゴンのドーア軍だと、おそらくバレてしまった。


 きっと敵はこちらに対応する手を打って来るに違いない。

 科学力ではこちらは叶わない。

 肉体変換能力(ライズ)を無効化するような驚くべき手が

 開発されるかもしれない。


 龍帝様も人間の科学力を最大限に注意されている。

 慎重に慎重を重ねて来たのだが……


 頭の中が激しく回転する。


 いろいろ心配してもしょうがない。

 今は新たな将軍たちとともに戦おう。


 玉座の掃除を隅々まで行って退室する。

 

 ◇ ◇ ◇ 


 ……午前中


 新しい将軍たちと会議。各将軍の能力を把握し作戦を考える。


 午後になると周辺の国々の代表との懇談。

 様々な問題を資料に纏め、後日龍帝様にご報告する。

 これを一人で全て行っている。


「幽霊じゃなきゃ……とても勤まらない」


 今度来た将軍の一人にこのような内政に力を発揮しそうな方がいる。

 仕事を任せられるようになるのはとても有難い。

 

 ◇ ◇ ◇ 


 ……夜6時、龍帝様や姫様のお食事を作る。


 ドラゴンってどのような食べものが好みなのか。

 ここに来たとき悩んだが基本、肉食のようだ。

 家畜の肉がいいのだが、お二人とも半分人間の血をひいているので

 人間が食べられるものなら何でも食べれる。

 姫様はトカゲやヘビのヒモノなどあまり人間が食べないものがいいらしい。

 人間からしたら引いてしまうが、本人は保存食まで作っていつでも食べられるようにしている。

 将来もしかしたら毎日食べさせられるタツオさんが気の毒でしょうがない。

 今日は人間らしくお米やパンにしよう。

 幽霊なのに料理ができるのは龍帝様の力を借りて瞬間的に実体化しているから。

 味見や物を運んだりしないといけないし。

 あまり龍帝様を消耗させてはいけないので力を使うのは最低限にしないと。


 ◇ ◇ ◇ 


 食事を用意して姫様の部屋に運ぶ。

 食べ物は通り抜けられないのでノックしてから扉を開けて入る。


「……姫様……お食事をお持ちしました」


「りっちゃん! いつもすまないのう。

 監禁されていなければわしが作るのじゃが」


 最近、姫様は炊事を覚えた。

 人間の世界に行っていた時、やっていたらしい。


「姫様は……いいのですよ。

 私や家臣の者にお任せ下さい」


「いや……いろいろと覚えたいのじゃ。

 人間の好物とか……」

「トカゲやヘビ以外なら……何でもいいんではないでしょうか。

 タツオさんなら何でも笑って食べそうですが」

「……よく知っているのう」

「お二人の話を……横で聞いていると何となくわかります」


「りっちゃん。わしは思うのじゃが……」

 姫様が真面目な顔で語りかけて来る。

「りっちゃんも……誰かと結婚しないか?」

「……はっ?」

「タツオがわしら以外にも、好きな者同士ができるよう

 変えて行きたいと言うのじゃ。

 だからわしも、一番身近なりっちゃんにも好きな人と結婚してほしいのじゃ」


 ……いつも突拍子もない事をいきなり言う。


「姫様……お気持ちは嬉しいですが……私は幽霊です……

 そのような事は……できません……

 それに私は……いつか……消……」


 は……これは言ってはいけない。

 姫様をご心配させては……


「りっちゃん!

 わしはお前にも幸せになってほしいんじゃ。

 りっちゃんは大事な家族じゃ……

 お前の嬉しそうなところを見たいのじゃ」


「……姫様」

 幽霊でなければ泣いていたかもしれない。

 

「有り難うございます……でも姫様が幸せなら

 私は幸せです」


「りっちゃんは自分の事はすべて後回しじゃ。

 自分が幸せじゃなくて何でまわりの人を幸せにできるのじゃ。

 わしはお前にも幸せになってほしい」


「!……」


「幽霊でもいいじゃないか……

 わしもドラゴンじゃ……

 あと……わしがお前を絶対消えさせはしない!」


「……

 ……姫様……人間の世界へ行かれて本当に変わられましたね」


 感情のない幽霊であってもその思いは嬉しい。

 ……自分は生きる事をあきらめていたのかもしれない。

 皆で生きる為に戦おうとしているのではないか。


「……好きな人ができるかはわかりませんが……

 その時はご協力いただくかもしれません」


「うむ。そうじゃ。何事も前向きがいいぞ。

 りっちゃん、絶対協力するぞ」


 姫様はどんどん成長されて行く。

 私がいなくてもいい時が来るのも近い……


 ……その時は姫様の言われている通り結婚もいいかも。


御礼申し上げます。

第2章は制作中です。

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