16.アルノドーア出陣
ヒューマン・キャッスルより南に200キロメートル、
1000年前ドラゴン・ドーアが焼きつくしたとされ周辺は岩石だらけだ。
ドーア火山と言われるが噴火したのは1000年前である。
その火山地帯の回りには逆に緑が広がり多くの種族が暮らしている。
ドーアの流れを組む爬虫類や両生類のような姿の異形種の楽園だ。
皆、ドーア火山に住むドーアの直子であるヴェルドーアを王として尊び敬っている。
ヴェルドーアも民を天災からよく守り慈悲深く接している。民たちは繁栄しその数も数万。
今や一大国家でもある。それでも城は質素で火山そのものである。
ヴェルドーアの超能力で穴を掘って岩を削り取っただけなのだ。
家族は娘アルノドーア一人だけでその世話役デスリッチ、
同じ種族の代表十数人が仕えてる。
アルノドーアは自分の部屋を破壊しまくった為、別にもう一つ作られた部屋に引っ越した。
しかし今度はそこの部屋に引きこもり出て来なくなっていた。
「姫様……出て来て下さい……出てこないと……私から入りますよ……」
容赦なく扉を通り抜けるデスリッチ。
「よ……っと」
アルノドーアは石のベッドにうつ伏せになり寝ているようだ。
「もう起きて下さい……3日間も部屋から出て来ないじゃ……ないですか……」
「うるさい! 勝手に部屋に入りよって!」
「いつも……じゃないですか……そろそろ……次の作戦を……」
「もうわしは行かん! 戦いなどしたくないんじゃ!」
「どうしたんですか……龍帝様もお待ちになられています……こっちを見て……下さい」
「いやじゃ。こっちに来るな! こっちを見るな!」
「……姫様。……いかが致しました?」
反対側に回りのぞきこむとアルノドーアが反対側を向く。
「……どうしました?」
また反対側に行くとまた反対側を見る。
「もう……顔を見せて下さい……」
上に乗っかって首に息を吹きかける。
「冷た!」
びっくりして起き上がってしまった。
「姫様……!」
アルノドーアが涙を流している。
「泣いてらっしゃるのですか! ……姫様! ……」
「えッ……うぇッ……うぐッ……
何でもないんじゃ! 嫌な夢を見ただけじゃ! 気にしないで出てってくれ!」
止めどなく涙を流すアルノドーアをどうしたらいいのかあたふたする。
「そんなに悲しい事がおありで……」
「ない! 悲しい事など、ない!」
「悲しくないと……そんな涙を流しません」
「違う! ほっといてくれ!」
必死に顔を隠そうとする。
「……わかりました……あまり触れられたくないのですね。今はそっとします……」
「父上には内緒にしてくれ……」
「わかりました……戦いの方は私が何とかします。今はお休み下さい……」
「すまん……」
デスリッチが出て行った部屋は冷たい風が吹いている。
「……ひっく……ひっく」
涙を強引に止める。
「……泣いてばかりでは……」
顔を引き締めるがすぐに泣いてしまう。
「え……え……」
こんなに弱かったんだろうか?
父やデスリッチに会えなくなってもそこまで悲しくなかった。
もう壊すのも疲れたのでまた横になる。
眠れないまま、また一晩たった。
「姫様……姫様……起きて下さい」
「……りっちゃん。どうしたのじゃ」
泣き腫らした目を擦る。
「お休みのところ……申し訳……ありません。
次の戦いの……作戦を考えて参りました……」
寝てばかりもいられない、起き上がりベッドに腰かける。
「そうだったのう。父上に報告をしなければいけない日であった」
「姫様……今回は……前回みたいにものものしく軍勢を……前進させるのではなく……
密かに音もなく進みます」
「そんな事が出来るのか?」
「蛇人の軍勢……使います」
「何? ヘビ? トカゲの次はヘビか?」
「……彼らは……ヘビ……に変身できます。……地面を音もなく進みます……
敵に気付かれず……たどり着けるでしょう」
「ヘビで勝てるかのう。」
「彼らは……毒を使います……それに……人間はヘビが苦手です」
「平気な人間もいるんじゃないか?」
「大丈夫です……私も……苦手……」
「司令官がそれでいいのか? ……でもせっかく考えてくれたんじゃ。それで頼む」
「承知致しました……それでは、龍帝様に……ご報告して参ります……」
消えるようにいなくなった。
「今回は戦いをりっちゃんにまかせて……!?」
その時、ひとつの方法を思いついた。
「そうじゃ! 戦いじゃ! あの部隊を倒し人間の世界を破壊する!!」
アルノドーアの顔に決意の表情が浮かぶ。
「こちらの世界と人間の世界の境界線をなくす。そうすればこんな思いせずに会いに行ける!
戦いもなくなる。一番いい事じゃ!」
立ち上がり拳を見つめる。
「わし自身が戦うんじゃ! 力を全開で! 奴らを倒すのじゃ!」
うんと頷くとドラゴンの骨の仮面と白いマントを装備し、颯爽と部屋を後にした。
デスリッチは蛇人の集落に伝達を出し、軍を組織した。
総勢は500名。少数精鋭だ。少ない方が作戦を実行しやすい。
「蛇人族の部隊、集合完了致しました。精鋭でございます。」
ドーア火山近くの荒野に軍勢が集結した。
ドクロの面をつけたデスリッチは報告を受ける。
「……ご苦労様です……今回は私が指揮を……」
「ちょっと待った!」
アルノドーアが戦闘スタイルで姿を現す。
「え……姫様……どうしたのです?」
「軍隊の指揮は今回も私にまかせてもらおう!」
「姫様……戦いはしたくなかったのでは?」
「私では不満か?」
「そ……んな事……ありません」
「父上には許可を取って来た! 私の命令に従ってもらおう」
「はっ!」
「ははー」
「よし。人間の世界ヒューマン・キャッスルに向けて出陣じゃー!」




