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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
一.怪物襲来編
11/247

11.誰もいない部屋

 洗い物をすませ部屋の窓を見ると光が妙にまぶしい。


 光線のようなものが部屋に入ったかと思うとそこにはデスリッチの姿があった。

「姫様……大変お待たせ致しました……」

 光に包まれながら謝罪する。

「りっちゃん!」

「転送の鏡……修復に時間がかかりました。

 今回は……往復できるように……改良致しました」

「……帰るのか?」

「? ……何言ってるんです……

 当たり前……です」

「せっかく来てもらって悪いんじゃが一人で帰ってよいぞ」

「苦労したのに……なんてひどい……」

「とにかく帰りたくないんじゃ」

「……ここに来るのに……鏡は大変な力を使います……あまり持ちません」

「でも帰らん。ここにいたい」

「龍帝様も大変な……ご心配を……龍帝様ご自身がドラゴン・センスを使って……

 姫様を探した……のです」

「父上にも謝っておいてくれ」

「駄目です……姫様がいないと……龍帝様が悲しまれます……」

「悪いと思うが帰ってくれ」

「姫様!」

「……」

 背中を向けるアルノドーア。

「ぐずらないで下さい……帰りましょう……

 自分の家に帰るんですよ」

「いやじゃ!」

「仕方ありません……やりたくはないのですけど……

 失礼します!」


 デスリッチはアルノドーアを抱きしめる格好になった。

「おッ、おい! やめろ!」


「ゴースト・パラライズ!」


 煙のようになってアルノドーアを包みこみ金縛り状態にする……

 と同時に転送を開始する。


「や、やめろー!

 う、動けん! ……タツオ!」

 声がむなしく響くと部屋の中には誰もいなくなった。


 ◇ ◇ ◇


 タツオはいつも通り夕食を買って家路を急いだ。両手に二人分の食料をぶら下げて走る。

「早く帰らないと」

 顔を見たい。それだけの事だが心が弾むのはなぜだろう。

 階段を上がり扉を開けると昨日までと違う。

「アルノ!」

 部屋の中は真っ暗で人の気配はしない。電気をつけるとキッチンは綺麗に片付けられ

 ベッドや部屋の中は整頓されている。

「何処かに出かけたのか!?」

 今朝出かける時に感じた嫌な思いが甦る。

 部屋の隅にはアルノが来ていたマントだけが残されていた。

 待っていればすぐに帰って来るのだろうか?

「アルノ……帰ってきてくれ」

 ベッドに座りアルノの帰りを祈るように待つ。


 ……一時間、二時間経っても何も変わりはない。

 いてもたってもいられず外に飛び出す。

 居住エリアの公園や家の回り、商業エリアの隅々をくまなく探す。

 もう人間もいなくなり店舗もしまって行く。

「ハア、ハア、何処に行ったんだ、アルノ」


  トボトボと自宅に向かう。

 もしかしたら帰ってきてるのではと言う期待は裏切られた。

 一人きりの部屋で呆然と立つ。

「アルノ……アルノ!」

 呼んでもあの尊大な声は聞こえない。


 ◇ ◇ ◇


  城に戻ったアルノドーアは父にすぐ呼び出された。

 どうしていたのか心配されたが空き屋に住んでいたと言ってタツオの事は言わなかった。

 自分の部屋に戻っていたアルノドーアはデスリッチを呼び出していた。

「何で連れて帰って来たのじゃ!」

「……龍帝様のご命令……」

「お前は父上の命令なら何でも従うのか!」

「……その通りですが……」

 怒りが収まらない。

「姫様……そんなに人間の世界がいいのですか?」

「人間の世界は嫌いじゃ! あの部屋がいいのじゃ!」

「そこまで言うのなら……ここにあの部屋を再現しますが……」

「部屋の作りの問題じゃあなーい!」

「……じゃあ何が気にくわないのですか……」

「とにかくもう一度あそこに戻りたいのじゃ」

「……もう鏡は壊れてしまいました……それに外出は…禁止です」

「なんじゃそれは! もう一度作れんのか!」

「鏡は……もうありません。それに……転送は何処に飛ぶか……

 わからないので危険過ぎます……」

「な、なんじゃと!

 ………もういい。一人にしてくれ」

「……それでは……おやすみなさいませ」

 デスリッチは扉も開けず消えるように通り抜ける。


「ああ! どうすればいいのじゃ」

 ジタバタして石でできたベッドに寝転んだ。

「……」

 何も考えない事にしたが耐えられない。

「いっそ父上か、りっちゃんに本当の事を言って

 人間の世界に行けるよう力を貸してもらうか……

 いや、そもそも人間とは戦いの最中じゃ!

 怒られるだけじゃ。それに……何で……

 何でこんなにあそこに帰りたいのじゃ」

 目を瞑るとどうしてもタツオの事を思い出してしまう。

「何なんじゃ、この気持ちは! タツオは人間じゃ。わしとは違うんじゃー!」

 ベッドに拳を叩きつけるとヒビが入る。

「ああッ!

 父上も人間の女と会っていたじゃないか!

 わしもいいじゃないか!」

 何とも言えない複雑な思いが次々に湧き上がってくる。

 我慢してうつ伏せに寝る。本気で寝る体勢だ。


 ベッドが冷たい。暖かかったあの場所が恋しい。

「人間の世界に行く前に戻っただけじゃないか……」

 誰もいない部屋で空しく響く声。

「……でも……帰りたい……え……え……」

 堪えきれなくなって大粒の涙が溢れ出す。

「……うう……うぁぁぁ!」

 ドンドンと殴りつける。とうとうベッドから立ち退いて叫ぶ。

「うぐ……うぐっ……

 ……ドラゴン・ウイング!」

 右手の外側がドラゴンの翼の鋭利な部分に変化する。

「いやぁーッ!!」


 バキバキバキバキッ!


 冷たいベッドに右手手刀を叩き込むと同時に真っ二つに割れる。

 それどころか床の奥深くまで亀裂が入った。

「うあーッ!! いやーッ!! だぁッ!」


 ベキッ! バキッ! ドガッ!!


 思いを振り払うよう手刀が空を舞う。

 今までそこにあったベッドは石の残骸に変わり果てた。

 アルノドーアは力の限り泣きつくすと気を失いその場に倒れこんだ。


 ◇ ◇ ◇


 アルノが消えて三日間、ヒューマン・キャッスルのタワーを除く全域を

 探したが見つからなかった。家に帰っても暗く静まり帰っている。

「アルノ、何も言わないでどこに行ったんだ」

 あの時間は夢だったのか。

 アルノの残して行ったマントを抱きながら確かにここにいたと思い直す。

 ミニトマトを見ると花が咲いている。

「ああ、やっと実がなる。アルノに見せたかった……」

 目に涙を浮かべながら花を触る。

「うう……くっ……うう……」

 何も食べる気にならない。食べないで寝よう。

 アルノが帰ることを祈りながら眠りにつく。


 朝が来た。


 アルノはもちろんいない。

 一晩泣き明かしたが・・・


 タツオは決心する!


「待ってばかりでは駄目だ。外の世界に行って探すんだ」

 外の世界に繋がる出口があるはず。ある可能性があるとすれば中央管理塔(タワー)だ。

 あそこならキャッスル地下に行けるかもしれない。だがタワーはこの世界の心臓部。

 一般人が許可もなくはいれない。侵入者はタワーを守るロボットに逮捕される。

 それでもタツオはタワーへの潜入を目指す。

 会いたい人の為に。


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