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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
四.ヴェルドーアの過去編
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24.未来への翼


 翌日、リツを急遽医務室に呼び出し計画を伝える。


「……ええっ?

 ヴェルさん、故郷に帰るのですか!?」


「そうじゃ。元々わしは外の世界の住人。

 ここには偵察に入っただけだったんじゃ。

 偶然イイノに出会い、今日まで離れられなかっんじゃ……

 実はりっちゃんにお願いがあるんじゃ」


「……私にですか?

 私なんかにできる事ありますか……」


 リツの人生を左右させてしまうので言葉にする事を躊躇ってしまう。

 ヒューマン・キャッスルに帰れなくなってしまう可能性がある……

 私の迷いをイイノが感じ取った。


「ヴェル、私から言うわ。

 お願いとはあなたもヴェルと一緒に外の世界へ行って欲しいの」


「……ええっ! 私も外の世界に……」


「アルノドーアも一緒に連れて行って欲しいの。

 この子の能力が発見されてしまったら自由を奪われ兼ねない。

 発見される前に外に連れ出して欲しい。

 外の世界で自由に暮らさせたい。

 りっちゃんにはこの子が成長するまで守って欲しい。

 大変なお願いをしている事は承知している……」


「……イイノさんはここに残るつもりですか?

 お子様と離ればなれになって寂しくないのですか!?」


「親としては寂しくないはずない……

 しかしこの子がここに残れば自由はなくなる。

 人間の欲とは際限の無いもの、

 この子の強大な力が発覚すればキャッスル・ブレインはさらに壮大な計画を立てて、

 力をさらに利用しようとするでしょう。

 しかもこの力は暴走すれば星を壊滅させるものです。

 この子の幸せの為に……

 この星の未来の為に……

 私情を捨てて言っているのです」


「りっちゃん、わかってくれ。

 イイノもずっと考えての結論じゃ。

 わしは外の世界で復興を行う。

 イイノはここで人間を守る為の仕事をすると決めたのじゃ。

 お前の知識、能力は外の世界の復興に絶対必要だし、

 アルノドーアもきっとお前の力添えが必要だ。

 すべてはこの星を元に戻す為の崇高な決断じゃ」


「この子は自分の意志でここに戻ってくる。

 その時こそ世界が変わる時……

 人間が人間らしさを取り戻すきっかけになるでしょう。

 私はその時をじっと待っています。

 ヴェルとりっちゃんを信じています……」


「……うう……イイノさん……

 わかりました。

 私もその崇高な目的を果たすために命をかけます。

 私の力がお役に立てるのなら外の世界に行きましょう」


「……りっちゃん、有り難う。

 あなたの人生を変えてしまうような事を決断してくれて……

 今あなたがやっている研究、物質転送装置の開発は私が引き継いで完成させます。

 りっちゃんは外の世界での新たな仕事の事だけを考えて」


「……いえ、途中で投げ出して逆に申し訳けありません」


「わしからも礼を言う。

 りっちゃんの事はわしが命をかけて守るからな。

 アルノドーアの事、宜しく頼む」


「さぁ、早く準備をして……

 この子が発見されてはすべてが台無しです。

 夜の闇にまぎれて脱出して下さい」


「わしとりっちゃんがいなくなったら大騒ぎになるのでは無いかな?」


「数日は何とか隠せると思ってる。

 その後は……実験で亡くなったとか、理由を考えるわ」


「何!? 死んだ事にするのか!?」


「バレそうになった時はね」


「う~む、イイノに任せるよ」


 夜になるのを待ちながら旅の準備をする。

 イイノといる時間もあと僅かか……



 ◇ ◇ ◇



 深夜、ヒューマン・キャッスル全体が寝静まる頃。

 金色と紫色のイシュライザー・スーツを着た二人が医務室に集まった。


「イイノ……いよいよ……お別れじゃ……」


 アルノドーアを抱き上げたわしにイイノがしがみつく。

 優しい力だが、手は震えている。


「……ヴェル……

 ……アルノ……愛してる……」


 涙を堪えながら想いを振り切るように一歩後ろへ下がった。


「……ヴェルさん……イイノさん……

 何で……お二人が別れないといけないの……

 オリジナル・ジェネシス遺伝子を作った人が……憎い」


 今となってはどうしようもない事だが1000年前、

 オリジナル・ジェネシスの遺伝子が開発されなければこのような事はなかったのだ。

 この星だって荒れ果てる事はなかった。

 人間だって愛する人と一緒にいれたはずだ。

 一時の欲の為に未来の人間がこんなに苦しむ事になるのだ。

 しかし……もう過ぎ去った時は変えられない。

 これからの人間の運命は現在生きている人間の『瞬間』の決意にかかっているのだから。

 運命の選択肢を間違えては行けないのだ。

 幸せな未来向かって、この三人が行動する事を決めたのだから。


 アルノドーアを起こさないよう、揺りかごの中に寝かせて運ぶ。

 リツがその任を受け持つ事になった。

 わしは先導と危険があった際の対処を行う事とした。

 イシュライザー・スーツのヘルメットを被り正体をわからなくさせる。

 警備ロボットと遭遇しても判別できないからだ。


「イイノ……暫くのさよならじゃ」


「ヴェル……りっちゃん……お願い……

 外へはキャッスルの底の亀裂から出るといいわ」


「わかった。元気でな……」


 うなづくイイノ。

 永遠の別れでは無い。また会える。

 幸せな未来で……


 医務室を静かに出て気配を消し、走って最下層へ向かう。

 後からリツが揺りかごを抱いて付いてくる。


 訓練場のさらに奥にある排水ポンプ場には不時着時にできた亀裂が開いていた。

 応急処置の為、ネットで補修されているが破ればすぐに外に飛び出す事ができそうじゃ。


「よし。わしの飛行能力を使おう。

 わしに掴まるんじゃ!」


 リツは揺りかごを片手で抱き、わしの肩にもう片方の手をかける。

 ダブル・ドラゴン・ウイングを発現し、リツを抱きかかえると外の世界へ飛び出した。



 ◇ ◇ ◇



 夜が明けるとイイノはまだ体調が完全に良くなっていないにも関わらず研究室へ入った。

 ヴェルドーアとリツの登録データを消去する為だ。

 データがある限り、行方不明者になるとロボットが捜索活動する。

 余計な問題にしないよう操作しておくのだ。



「あれー? こんな朝早くー、何ーやっているのですかー?」


「!!」


 振り向くと一体のアンドロイドが立っている。


「ブレさん……ですか?

 キャッスル・ブレインの命令も出てないのに何故ここに?」


 光輝くボディースーツと銀色の長い髪の毛。

 さらにウサギのヘアバンドを見てすぐにキャッスル・ブレインのアンドロイド型リモート端末、

 『ブレ』だとわかった。


「ヴェルさんとリツさんは何処に行ったんでしょうかねー。

 いつも一緒じゃないんですかー?」


「……自分の部屋にいるのでしょう。

 私だけで仕事をする時もあります」


「今朝、警備ロボットの見回りでわかったんだけどー、

 キャッスルの底が破られてましたよー。

 あなた、二人を逃がしましたねー?

 折角ドラゴンとリッチのオリジナル・ジェネシスが手に入ったと思っていたのにー」


 ただのアンドロイドがオリジナル・ジェネシスを知っている!?

 しかも自分の意志で動いているなど……何故?


「ブレさん、あなた今までキャッスル・ブレインに操られていたフリをしていただけなのね?

 その頭に搭載されているコンピューターはもしや?」


「そうだ。

 私こそ、キャッスル・ブレインの『本体』。

 塔の上にある巨大なコンピューターは、

 過去の人間の様々な記憶、経験、人格情報が収められている記憶領域(メモリー)だ。

 私の言動、行動パターンはそこから導き出されている」


「やはり……動ける事を秘密にして我々の状況を探っていたと……」


「この人格も過去の人間を模したものだ。

 何もわかってなさそうな人格ならお前達も油断するしね。

 私の目的は1000年前から続く楽園化計画の遂行。

 オリジナル・ジェネシスの力で人間たちを永遠に栄えさせる。

 ドラゴンとリッチはとても重要なピースだったのに……

 お前は私の命令に逆らった……」


「もう遅いわ。二人とも既に遠く離れた。

 ここの人間には捜索は無理。ロボットたちのエネルギーも少ないのよ」


「まだ、ここには4人のオリジナル・ジェネシスがいるではないか。

 その者たちに捜索してもらう」


「4人ではヴェルやりっちゃんには勝てない」


「いや、探してもらうだけだ。

 ドラゴンとリッチはお前に倒してもらう」


「どう言う事!?」


「……この中央管理塔(タワー)の本当の機能の事を知らないようだな。

 タワー自体がこのヒューマン・キャッスルの人間を自在に操れる催眠波を発するようになっているのだ。

 人間が大人しく従っているのもその為よ。

 もちろんお前や4人のオリジナル・ジェネシスをターゲットにして自由に操る事もできる」


「タワーにはそんな役割があったの!?」


「ああ、これがあれば犯罪や自殺、イジメの問題もない。

 人間にはとても有り難い装置なのだ。

 平和で安全、それも永久に続く楽園。

 1000年前の科学者は何という天才なのでしょう。

 その命令に従っている事に無上の喜びを覚える。

 これこそ真の目指すべき道なのだ!」


 ……確かに人間が平和に暮らすには科学の力は必要……

 しかしこれでは人間が本当の人間では無い。

 キャッスル・ブレインのただの実験対象ではないか……


 オリジナル・ジェネシスの仲間に知らさなければ……

 このままでは皆操られてしまう。


「そんな事はさせない……

 ライトニング・パーティクル!」


 辺り一面が光に包まれて視界がホワイトアウトする。


「む……見えない……これは10番目の能力……

 イイノ……逃げる事はできないぞ」


 ブレは目標を見失って停止している。

 今のうちに脱出……

 イシュライザー・スーツを持って行かねば……


「グラビティ・トランスポート!」


 重力を操ってスーツが入ったケースを引き寄せた。

 研究室の扉を抜けて仲間がまだいる宿泊エリアへ走った。


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