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科学防衛隊イシュライザー  作者: kuro96
四.ヴェルドーアの過去編
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20.リュウヤとカズミ2


「今日は何で私を誘ったの?」


 当然の疑問だ。

 僕が誘ったのはカズミにある言葉を伝える為だ。

 しかし、このヒューマン・キャッスルの人間にそれがわかるだろうか……

 恋愛感情など忘れてしまった人間に……

 今から僕が言おうとしているのはそんな人間に対する挑戦とでも言える。

 ヴェルさんたちから学んだ言葉をぶつけるんだ。


「たまにはいいだろ? いつも地下深くの研究室にいて、太陽の光を浴びていない」


「でも……私と一緒じゃなくていいんじゃない?」


「いや、カズミと……一緒に来たかったんだ」


「え、私と!? な、何で……」


 カズミらしくない慌て方をする。

 いつも冷静沈着で、言葉に詰まる事などないのだ。


「少し、座らないか? 立ってると疲れるからな」


「それはそうね。折角ベンチがあるんだし……」


 公園の一番奥のベンチに腰掛ける。

 あたりには誰も歩いていない。

 ここなら誰にも邪魔されないな。


 しかし、木の陰には大きな人影が動いていた。

 その正体は……



 ◇ ◇ ◇


「……リュウヤが心配で来てしまった。

 うまくやってるかのう」


 自分ごとのようにソワソワしたヴェルドーアが顔を覗かせる。


「うむ、ちょうどいいところか。

 そら行け! リュウヤよ」


 ◇ ◇ ◇



「カズミ、知っているか? ヒビキやシミズ、ハヤオカの事を」


「うん。皆それぞれ科学技術庁の職員と二人で住んでいると言っていたわね」


「それについて君は何か感じた事はない?」


「びっくりしたわ。今まで一人暮らしが当たり前の世界だから。

 どうして一緒に住もうと言う気持ちになったのかしら?」


 本当に驚いているだけみたいだ。

 カズミには誰かと一緒にいたいと言う気持ちはないのか。

 かなり不安になる。

 告白しても何も感じないのではないだろうか。

 いや、逆に嫌われて敬遠されるかも……

 今までみたいな関係でいられなくなるかも……

 し、しかし……

 恐れを乗り越えなければ何も始まらない……



「カズミ……僕は感じるものがあった。

 僕は羨ましかったんだ」


「羨ましい?」


「僕も一緒に暮らしたいと思った人がいるんだ……」


「リュウヤも? 誰なの?」


「いや……あの……君と……」


「は?」


「僕はカズミと一緒に暮らしたい!」


 言ってしまった! やばい、顔が見られない。


「わわわ……私と……ななな……」


 カズミは完全に動転している。

 突然言ってしまって申し訳なく思う。


「私となんか、どうして……」


「君に伝わる言葉なのか、わからないけど……

 僕はカズミの事が『好き』なんだ!」


「好き!?」


 カズミの顔はドラゴンの炎のように真っ赤になった。

 今までに見た事無い驚愕の表情。

 瞳は潤んで輝いている。


「……実は好きって言葉……私……知っているの……

 ずっと前、イイノ課長が教えてくれていたの。

 いつか私が聞く時が来る、と言って……」


 イイノ課長が!?

 もしかしてイイノ課長がこうなる事を予想していて……


「何にも知らないフリをしていてごめん。

 本当はあなたに呼び出された時から、とてもドキドキしていたの。

 普段通りに……していようと思っていたけれど……

 あなたの言葉を聞いて……凄く嬉しかった」


「ほ、本当!?」


「うん……

 私もあなたの事……

 ずっと前から……好き……」


 えーっ!!

 まさかっ!!

 カズミが……そんな事を言ってくれるなんて……


「じゃ、じゃあ、一緒に住むって言うのは……」


「前向きに検討させてもらいます」


「そこは科学者みたいだね。

 そうか!

 やったーー!!」


 思わず飛び上がった。

 そしてあたりを走り回る。


「も、もう!

 リュウヤ!

 何やってるの?」


「ごめん、嬉しくて……

 うん?」


 暗闇の中に光る目。

 木の陰に誰かいるぞ?


「う……う……」


「……何やってるんですか?

 ヴェルさん!」


 ヴェルが感動して泣いている。

 それに……何故、隠れている?


「リュウヤ! カズミ!

 よかったな!

 ついに人間の本来の感情が復活するんだなー。

 よかった、よかった」


 涙と鼻水が後から後からと……止まらない!

 カズミも引きまくっているが……

 ヴェルさんが一緒になって喜んでくれる事が嬉しい!


「ヴェルさん、イイノさんのおかげです。

 お二人がいなかったらこんな気持ちには……」


「よい、よい。

 イイノもきっと喜ぶ事じゃろう。

 イイノの研究の目的は人間らしさの復活じゃからな。

 イシュライザー・スーツを開発して本当によかった!」


「有り難うございます。

 イイノ課長の想いに応えて行かないと……」


「では、わしはもうお邪魔だな。

 邪魔者は去るのじゃ!

 さ……ら……ば!」


 ビュンと強靱な脚をフル回転して去って行く。


「凄い面白い人だね。

 ヴェルさんが来てから皆、変わったね」


「ええ、私たちもヴェルさんのおかげで変われたのね」



 ◇ ◇ ◇



 リュウヤとカズミもついに同居を始める事となった。

 わしとイイノ、

 ヒビキと前の席の女性、

 シミズと同僚の男性、

 ハヤオカと別の部署の女性、

 そしてリュウヤとカズミ。

 もう5組が同居するまでの関係になったか。

 あとヤマタケか……

 ヤツにもその時が来るのだろうか。


 研究室にいるイイノとリツの元を訪れた。


「同居する者が増えてきたのう。

 イイノの研究のおかげだとリュウヤは言っていたぞ」


「リュウヤ君とカズミさんは元々仲がとても良かったですから。

 少し背中を押してあげれば研究に関わらずいい関係になってましたよ」


「本当にここに来た当初から考えると奇跡的じゃのう。

 遺伝子課も明るく元気じゃ。

 りっちゃんも元気になったしな」


「……私、最初に会った時に元気に見えてなかったのですね……」


「実は出会った頃は無表情で何を考えてるかわからず、話づらかったのじゃ。

 でも今はそんな事ないぞ。

 何でも話せる仲だと思っとる。

 りっちゃんも恋愛相談は無いのか?」


「……そんな相談は、ありません。

 気になる人なんていません!」


「りっちゃんもいつかは好きな人ができると思うぞ。

 世話好きじゃからヒョロヒョロの弱いヤツなんて好きになりそうじゃ」


「……好きになんかなりません!

 私は機械ひとすじです」


 頑固じゃの。相当猛烈にアタックするヤツでなければ氷の心は溶かす事はできないな。

 土下座とかするヤツとか……

 そういうヤツがいればいいんだが。


「イイノはどんな研究をやっとるんだ?」


「今は最後のイシュライザー・スーツ、ライザー・ホワイトの調整を行っています」


「10番目のオリジナル・ジェネシスの為のスーツか。

 正体不明じゃがデータがあるのか?」


「……データなんかありません。

 名前すら登録されていませんからね」


「1000年前にここに閉じ込めらたと言うヤツか。

 ヒューマン・キャッスルの何処かに隠れているのじゃろうか。

 全く、謎なヤツだ。

 果たして味方なのじゃろうか」


「白いスーツも他のイシュライザー・スーツと同じような仕組みで作ってあります。

 能力が不確定の為……細胞量調整スイッチは抑制方向に設定しています……」


 オリジナル・ジェネシス全ての力を結集し、復興に尽くしたいが……

 こいつだけは得体が知れない。

 妙な胸騒ぎがする。

 わしがここに来たのも底知れぬ恐れを感じたからだ。

 その恐れの正体がこいつだったら、と不安を感じていた。



 ◇ ◇ ◇



 それから二ヶ月が過ぎた。

 遺伝子課の仲間の同居は続いている。

 喧嘩したなどと言う話は一度も聞いていない。

 仲がいいのはとても良い事じゃ。


 今日も一日仕事が終わり、イイノの部屋へと帰って来た。

 もう当たり前のように部屋の扉を開けて居間のソファに座る。

 イイノはいつも残業なのでわしの方が早く帰宅している。

 食事もわしが作る事になっていた。


「やれやれ、料理の方もかなり上達したのう。

 何でも、やればできるな」


 トントンと玄関を叩く音がする。

 イイノが帰って来たようだ。


「おお、イイノ。お帰り。

 今日は少し早かったな」


「ヴェル! 大変!!」


「な、何じゃ、突然大声を出して!?

 お前らしくも無い」


「シ、シミズさんが……」


「シミズがどうした?

 最近休みが多いようじゃが……どうしたのじゃ?」


「子供ができたそうよ!」


「ハハハ、そう……

 ……な、

 何ぃー!?」


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