点と点2
なんという事だ。
思わずぎこちなく後ろを振り返れば、そこには依然として首を傾げてスマホを見つめているセシルの姿があった。
見たこともない男が優の自宅にいる場面を見てしまった時は、きっとあずさは失神してしまう。
男嫌いなあずさにセシルのことをどう説明するよりもどう隠してこの場を乗り切るかという思考ばかり先立って、刻一刻とすぎていく時間に気付かずにいた。そして、
ーーーピンポーン
心臓が止まるような音が全身を駆け抜けた。
「セ、セシル、ここにいてね。声とか、上げちゃだめ」
裏返る声のままそう伝えるも命令のような発言に不満げな表情をするセシルをよそに優はゆっくりと立ち上がって玄関へ向かった。
「や、やああず」
「優!?どうして連絡してくれなかったの!すっごく不安だったのよ!」
遠慮がちにゆっくりと扉を開けつつ揺れる声でそう発するも、遮るようにあずさの甲高い声と栗色の長い髪が優の視界と聴覚を占領した。
歯がゆい優など御構い無しにあずさから溢れ出す言葉は徐々に瞳へ溜まり、涙をいっぱいに溜め込んだあずさに優は先程までの独り善がりな思考に対する自責と後悔に堪らず、玄関から飛び出してあずさを優しく抱きしめた。
「連絡したかったんだけど、スマホが壊れちゃって…。拓海もごめんね。」
優の腕の中で怒りよりも勝る不安と安堵に声を堪えて泣くあずさを優しく撫でながら、扉を支える拓海に目線を送りつつ苦笑いを浮かべると、拓海はあの日の夜のことなど何もなかったかのように変わらぬ笑みを浮かべて「謝ることないですよ」と口にした。
その表情に、優は頬を綻ばせた。
しばらくして泣き止んだあずさから離れて立ち話もなんだと思い家の中へ入れようとしたが中にはセシルが居ることを思い出し、どこかに行こうにもあの状況から置いていくことなど出来ぬと一人で困惑し、明らかにしどろもどろになる優の異変にあずさと拓海は気付き、顔を見合わせる二人を目の当たりにして余計に焦って不意に後ろ髪をかき分けると、その髪の間から見えた絆創膏をあずさが見るや否
優の傍らを駆け抜け部屋へ押し込んで行った。
「あ、あずさ!?」
優の声など御構い無しにキッチンとリビングを隔てる扉を開けるとその先には白銀の髪と真紅の瞳をした男がテーブルに肘をついて、こうなる事を予知していたかのような笑みを浮かべながら扉の前に立ちはだかるあずさを見つめていた。
「ようこそ、お嬢さん」
セシルの嫌らしいほど透き通った程よい低さの声は頭を抱えている優の耳にもしっかりと入っていた。
あずさの行動に呆気を取られていた拓海も徐々に状況を読み取っていき優を不安げに見つめた。
ーーーーーーー
ーーーー
ヒステリックと言っても過言ではないほどの行動力を見せたあずさの思考力は、ソレと並ぶほどのものだった。
セシルが優を脅して連絡も取らせず家に閉じ込めていたのだと勝手に解釈し、震える拳を握って詰め寄ろうとしたが数時間に渡る優の必死な弁解のおかげでどうにか収まりを見せ、ぎこちなさと険悪な雰囲気を漂わせながら4人はテーブルを囲んでいた。
「…で、あなたは優に助けられたわけね」
テーブルの上に置かれた拳は以前固く結ばれ、震えていた。俯いて目を閉じ、頭の中で真相の整理と自分自身の気持ちの整理を必死に行いながらあずさをそう声を絞り出した。
「はい。なのでこうして僕は優さんにお世話になっているんです」
平常運行の表情を崩さないセシルの肝の大きさには流石の優も笑う他なかった。
「すぐに言えなくてごめんね」
俯いたままの状態なため、栗色の柔らかく滑らかな髪の隙間から眼光を放ちながらセシルを睨むあずさの握りこぶしに手を添えながら、優はセシルに続いてそう言葉を口にした。
居場所を失い空腹で倒れているところを優に助けてもらったというなんともお粗末なストーリーだが、あずさは優が口にした出来事を信じたようだ。勿論、彼が吸血鬼であることは内緒である。
同居している以上首元の絆創膏に触れることはご法度だとあずさと拓海は察したのか、触れることはなかった。
どうであれ2人にセシルの存在を明かし、無事に物事が進んでいる現状に優は安堵でしかなく、胸をなで下ろす姿を拓海が見つめていれば
「…そうと決まれば!」
「決まれば?」
俯き続けていたあずさの拳がほぐれたと思いきや、勢いよく立ち上がりながら先程までとは一転して、意気揚々と声を上げたあずさに優が繰り返しそう言葉を漏らすと、あずさは手を握り優の方を向いてにこりと微笑んだ
「ご飯!作りましょ!」
あずさは仲良くなる相手には必ず料理を振る舞うのだ。そのしきたりは実家から伝わるもので、優が誰よりも知っているあずさの良い所の一つである。
「三人とも本当にごめんなさい。私、優が大事で、それで…いつも周りが見えなくなっちゃうの…。」
あずさにつられて立ち上がった優と、依然として場に取り残されている拓海、笑みを絶やさないセシルの三人を見ながら謝罪をし、頭を下げた。
「もうお昼もいいところだし、ちゃっちゃか作りましょ!」
あずさの行動に声を出しかけた優を遮るようにそう言いながら頭を上げ、優の方を再度見て微笑んだ。
元に戻った声色と表情に何も言うことができず、優は微笑み返し頷いては拓海とセシルを残してキッチンの方へ歩み出した。
内容がボロボロで申し訳ないです
いづれ改稿いたします…




