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眠るにはまだ早い  作者: めいじ
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まずはお友達から1


「「「かんぱーーい!」」」

紅く灯る提灯をいくつか壁にぶら下げキッチンから漏れ出す芳ばしい香りと店内のBGM、申し訳程度に区切られた各テーブルごとから聞こえる声のカルテットを奏で賑わいを見せる居酒屋で高らかとお酒の入ったグラスを乾杯する三人の男女。

皆が座る椅子が固いことなど感じさせぬ笑顔で窓ガラスに映る夕暮れを背後にお酒で喉を鳴らした。


「改めて誕生日おめでとう!優!」

ビールを頼んだ二人をよそに一人だけカシスオレンジという甘く飲みやすいカクテルを頼んだ可憐な女性が、隣に座っている猫毛で黒髪の青年に向かってそう笑顔で言った。

「ありがとう、あずさ」

花も恥じらうような笑顔に対し微笑みで返した青年のような女、矢野 優(やの ゆう)は幼馴染である片倉(かたくら) あずさとは対照的なほど中性、どちらかといえば男性寄りな体格と顔つきである。男物の洋服やアクセサリーで身を固めているためより一層性別の判断が難しくなっている。

今日はそんな優の誕生日なのだ。


「ね、ね、メシが来る前に俺からのプレゼント、開けてみてくださいよ!」

そんな二人の対面に座る如何にも遊び人代表と言わんばかりの風貌の男、七瀬 拓海(ななせ たくみ)は乾杯の前に注文したメニューが目の前のテーブルを埋め尽くす前に手渡した誕生日プレゼントの開封を促した。

「いいの?じゃあ心置きなく今開けさせてもらうよ」

この居酒屋に入店する前に二人から手渡しで貰っていたプレゼントに手を伸ばすと

「ま、待って!私のはおうちに帰ってからにして!」

と、あずさが自分のだけはまだ開けないでほしいと少々焦った様子で優の手に触れた。


「うん、分かったよ。楽しみにしてるね」

あずさの指先が桃色に染まった白く細いのに柔らかな手を変わらぬ笑みのまま優しく握り返すと、あずさが照れた様子で俯きカシスオレンジを口元に運び出したので、拓海から貰った青色の黒字で店名が書かれている小さな紙袋をテーブルの上に運んだ。袋の小ささからして何かの装飾品だということはほぼ確定だろう。


優は耳にピアスを付けていれば時折ネックレスを首にかけていたりと、常に隣に居るあずさが一般的な理想の女性像そのものだからこそ見た目には多少気を使っていたし、目の前のベージュブラウンに染まった髪の毛先を軽く遊ばせている男のセンスが自分と合わなかったことは今まで一度もなかった。

期待を胸に丁寧に紙袋から取り出した箱のフタに手をかけ、ゆっくりと開けていく。


「わあ、指輪だ!とってもカッコいいね」

箱の中には翠色の宝石が埋め込まれている銀色の指輪があった。

大きめな宝石を囲むように刻まれている装飾と、男性が好みやすいぶ厚めで無骨なデザインのソレは使い古されたかのような傷が多々あったが、それらも重厚的な味を出していて優の好みであった。

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