表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羽無し朱雀は青龍王に愛される  作者: 空飛ぶひよこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/72

【羽無し】と講義

「ーーこの国の四神制度は、今ゆるりと崩壊に向かっています」


 玄武の口から出た衝撃的な言葉に、口内の唾を飲み込んだ。



 朱雀として、王宮に来て5日。

 私は玄武によって、王妃になるうえで必要な知識を。

 藍華さんにより、朱雀を冠するに相応しい、舞と歌を教わっていた。

 宰相や、王族にそのようなことをさせるなんて……と最初は必死に固辞したが、「それが最善の人員だ」と周囲から押し切られ、午前中に歌と舞の稽古を行い、午後は玄武の講義を受ける日々が続いている。


「崩壊……?」


「ええ。純血にこだわった結果、三神の出生率が低下しているのはご存知でしょう? そして国民の混乱を防ぐ為に、情報規制をしておりますが、現在残存する王族は三人のみ。そして、竜人は2人しかいない」


 そして、その事実が国民に露呈するのも時間の問題でしょう、とさらりと告げた玄武の言葉に、ぞっとする。

 四神国は、竜人が治めることで成り立つ国家。それによって繁栄したこの国に、竜人がいなくなったら。

 初代青龍王が現れる以前の、亜人にとって悪夢とも言える歴史が脳裏に過ぎる。人族と亜人との確執は、未だ根付いたままだ。……王がいなくなれば、必ず争いになる。


「何故、王族はそれ程減少してしまったのですか?」 


 私の問いに、玄武は小さく苦笑いを漏らした。


「元々、竜人族も他の三神同様に、出生率は低下しつつありました。元々は、たった一人の初代青龍王の遺伝子から派生した一族。より、初代王の遺伝子が濃い子どもを残す為に、他の三神以上に近親婚も盛んでした。……余り公にしたくない醜聞ですので、一般にはあまり知られておりませんがね。あくまでそれは王以外の一族での婚姻であり、王族から朱雀を選ぶこと自体は稀だったと聞きますし」


 王族の情報は、いずれ王の妃になるはずの鳥人族の中においても、謎に包まれていた。ただ、選ばれた朱雀のみが、知るべしと。

 それには、こんな背景もあったのかと、乾いた唇を舐めて湿らせた。


「それでも10年前までは、もう少し沢山の王族がおりました。竜人族も、鳥人族も。しかし、この10年で急速に数が減少した。……何故か、分かりますか?」


「……流行病、ですか?」


「いいえ。……反乱と、粛清です」


 恐ろしい事実を、玄武は薄い笑みさえ浮かべながら、至極あっさり口にした。


「先代の青龍王………我が王と、藍華様の祖父に当たる方ですね。彼は、一族における近親婚を忌み嫌いました。そして、先代が次期青龍王に選んだのは、自らの息子でも、息子が竜人の正妻に産ませた子でもなかった。選ばれたのは、先代の息子が鳥人族出身の妾妃に産ませた、当時8歳の我が王です。………そのことが、我が王のお父上には大変ご不満だったようで」


 先代陛下のことは、噂に聞いたことはあった。

 歴代の青龍王に勝るとも劣らない、優秀な王。

 奇襲のようなやり方で戦を仕掛けてきた隣国の人族を、瞬く間に退けたと言われている。

 妻である朱雀を15年前に亡くして以来、すっかり意気消沈して表舞台にはあまりでなくなり、当代に王位を譲って6年前にとうとう亡くなったと聞いていた。彼の葬儀の間は、村中も喪に服し、普段の華やかな生活とは打って変わった日々を送っていたので、よく覚えている。


「『我が父は老齢の為、次期青龍王の選定を見誤った。王の選定などという、王本人にしか分からない妄言を今こそ退け、真に優秀なる者を後継に選ぶべき』……でしたかな? まあ、自分に都合の良い言葉をそれらしく取り繕い、他の一族を扇動して反乱を起こしたわけです。妻を亡くして以来覇気がなくなった先王と、幼い我が王なら、勝てると踏んで。……しかし、それは誤りだった」


 先代陛下の粛清は、苛烈を極めた。

 彼は、当時はまだ存命だった先代白虎と共に、反旗を翻した王族達を容赦なく屠っていった。

 どれ程血縁が近くても、相手が幼くとも、制裁の手を緩めることはなかった。

 先王陛下は、乱心されたと誰かは言った。王族を滅ぼす気なのだと叫んだことで、さらに反乱側に手を貸すものが増え、それに伴い、粛清数も増えた。

 殺して。殺して。殺し尽くして。


 ーーそして、反乱に加担しなかった、僅かな王族のみが残された。


「それでもまだ、6年前まではもう少し王族は残っていたんですよ。一族を減少させるきっかけになった、我が王と先代陛下に対するわだかまりを残しながら。ですが、先王陛下が逝去され、蒼燕様がお生まれになったことで、また反乱が起こった」


 蒼燕は、先代からも当代からも、次期王で間違いないと言われて生まれた王族だった。今は亡き彼の父親にあたる竜人も、残された王族の一人で、その系譜の正しさは当代にも劣らない。

 彼の存在と、先代の死が、残された王族達の復讐心に火をつけた。

 彼らは結託して、当代王を殺し、生まれたばかりの蒼燕を王に立てることを目論んだのだ。

 しかし、その反乱もまた、失敗に終わった。


「10年前はまだ見つかってませんでしたが、当時は既に白虎がおりましたからね。あれは、頭は足りませんが、敵を屠る腕と、我が王に対する忠誠心は、先代以上だ。王の敵となった相手を、あれは躊躇いなく切り捨てました」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ