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異世界召喚系物語(仮)  作者: 羽リズム
3/6

プロローグ3

「嘘だろ?」

 あまりにも出来過ぎた話に、勇斗の口からそんな言葉が漏れた。

 そんな勇斗を置き去りにしたまま、神を名乗る老人は説明を続ける。

「お主たちは、異世界の平和な街にまず降り立つことになる。ここで言う平和とは、周辺に生息している魔物が弱っちいという意味じゃ」

 老人のその言葉と同時に、勇斗の足元にいきなり地図が浮かび上がった。

 出現した地図の一点を、老人は指でさす。ようは、その辺りに勇斗が召喚されるということなのだろう。

「まあ、お主たちにはワシからひとつずつ特殊な力を与えるつもりじゃから、弱っちい魔物なんぞ楽勝じゃろう。魔物を倒し、冒険を繰り広げ、そして魔王を討伐するのがお主らの使命じゃ」

 老人の言葉に、勇斗は興奮を抑えられなかった。

 そんな勇斗の姿に、老人は満足げな笑みを浮かべる。

「この使命を見事果たした暁には、お主たちの世界でお主たちを甦らせてやろう」

 そう話を締めくくった老人に、勇斗は食ってかかるような勢いで質問する。

「特殊な力って、いま言ったよな。それはいったいどんな力なんだ?」

「お主の望む力をなんでもひとつじゃ。異なる世界でのお主の能力全般も、お主の望んだ力に応じたものとなるじゃろう」

 老人が口にした答えを聞いて、勇斗は心のなかでガッツポーズをした。

 オタク趣味の勇斗だ。もちろん、自分が異世界で活躍する想像にふけったことは何度もある。

 異世界に行くことになったときに欲しい特殊能力だって何度も考えてきた。

 そのすべてが、いま現実になろうとしているのだ。

「ま、特殊な力なんていきなり言われても悩むじゃろう? 急がず、存分に悩んでから決めるがいいぞ」

「―――いや、ある。俺、欲しい能力ある。もう決まってる!」

 あまりの興奮に、勇斗はもはや片言だった。

 鼻息荒く迫る勇斗に、思わず気圧されながらも老人は尋ねる。

「いったい、どんな力が欲しいんじゃ?」

 その老人からの問いに、勇斗はこれ以上ないほど希望に満ちた表情を浮かべた。

「すべてのものを自分の好き勝手に改変できる能力! そして、その改変を世界の誰にも気づかれないような能力!」

 それは、異世界での冒険を何度も何度も空想するうちに、勇斗が辿り着いた最強の特殊能力。

 異世界の理そのものを書き換える、神にも等しい能力だった。

「……お主、とんでもない力を思いつくのう」

 神そのものである老人も、さすがにこれには呆れた顔だった。

「できないのか?」

 そんな老人に、勇斗は食ってかかる。

(夢のような話がここまで続いてるんだ。まさか、出来ないなんてことはないんだろ?)

「出来ないことはないが……本当にいいんじゃな。後悔することになるかもしれんぞ?」

 勇斗は頷いた。

 何度もの空想の冒険から、いくつも考えた無数の特殊能力から、そのなかから選んだ最強の特殊能力だ。

 ―――後悔する結果になんて、なりようがない。

 強い確信をもって、勇斗は老人を見つめた。

 老人は、躊躇いがちに視線をさ迷わせる。

 少ししてから、老人は意を決したような表情で口を開いた。

「……わかった。本当に、それでいいんじゃな。ならば、次はお主の仲間を決めるとしよう」

「仲間?」

 怪訝な顔になった勇斗に、老人は頷く。

「その通りじゃ。お主は勇者たちの代表。誰を仲間の勇者にするかを決める権利を持っておる。お主と同じバスに乗っていた者たちのなかから、お主の仲間を決めるのじゃ」

「……どういう意味だ?」

 老人の言葉を、勇斗はすぐには理解できなかった。

 そんな勇斗を気遣うように、老人は優しい口調で言う。

「お主と同じバスに乗っておった者たちは、全員死んでしまったんじゃよ。お主が窓から投げ出されたことに気を取られたバスの運転手が、ハンドルを切り損ねての」

(俺のせいでハンドルを切り損ねて……!?)

 勇斗の頭にクラスメイトたちの顔が浮かんだ。

 自分が彼らの死因になってしまったことに勇斗は罪悪感を覚えたが、しかし、それは一瞬のことだった。

「ワシの神通力で異世界に飛ばすことが出来るのは、お主も含めて最大四人じゃ。魔王を倒した暁には、四人全員が元の世界で生き返ることができるぞ」

(俺のせいで死んだ……だと。いい気味だ! 俺のことを散々馬鹿にしてた罰が当たったんだ!)

 思い浮かべたクラスメイトたちのなかに、勇斗が罪悪感を覚えるような相手はいなかった。

 むしろ、道連れに出来たと知って清々しているほどだった。

「仲間なんていらない。俺ひとりで十分だ」

 そんな気持ちからの発言だったのだが、老人は首を横に振って勇斗を制止する。

「見知った者たちのなかから三人だけを選ばなくてはならないことが辛いことはわかる。しかし、魔王の力は強大じゃ。仲間がいなければ立ち向かうことは不可能じゃろう」

 老人は何かを勘違いしているようだったが、一緒に戦ってくれそうなクラスメイトの当てなど勇斗にはいなかった。

 勇斗は、自分ひとりでも大丈夫だと示すように語気を強める。

「俺ひとりで十分って言ったら十分なんだよ。それでいいだろ?」

「しかし……」

 自信たっぷりに言った勇斗に、老人はそれでも食い下がる。

 その表情は深刻で、勇者をひとりだけにすることによほどの不安があるようだった。

(このままじゃ、異世界に連れていってもらえなくなっちまうかもしれない。しかし、仲間か……)

 勇斗は、しかたなく老人と自分のどちらもが納得できそうな答えを考え始める。

 ほどなくして、勇斗はひとつの答えを思いついた。

「異世界への召喚ってやつは、全員を別々の町から始めさせることもできるのか?」

「もちろん可能じゃが、そんなことをしてなんの意味があるんじゃ?」

 老人の疑問はもっともだ。

 クラスメイトたちを普通に仲間として捉えるのであれば、同じ町から冒険を始めたほうが合理的なのは当たり前だろう。

 しかし、それはクラスメイトたちを仲間として捉えるのであれば、の話だ。

(神様からせっかく最強の能力を貰えるんだ。この力で復讐してやる!)

 勇斗の脳裏に復讐の相手として真っ先に浮かんだのは、茜と貴弘だった。

 それに空歩を加えた三人を、勇斗は異世界に連れていく仲間として老人に告げる。

 学校中のみんなから人気だった空歩。そんな彼女を神様から貰った能力で服従させるというのは、きっと胸がすく思いがすることだろう。

「本当に、全員を別々の町に降り立たせていいんじゃな?」

 何度も何度も確認してくる老人に、勇斗は力強く頷いた。

(さあ、楽しい冒険の始まりだ!)

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