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もしかしたら貴方はそうかもしれない

3話です!

たくさんの方に読んでいただきたいです!

 



 あの日から……。



「お願い!」



 学校に行けば陽太の席にいつも来るし、休みの日は、



「おはよう!お願い、教えて!」



 と家に訪問してきたり……。

 とにかく執拗くて、次第にイライラが募り始めた。

 そんな時、あの日に読んだ本の内容が頭をよぎる。



『いじめの対策方法は、いじめてくる人に近づがないことが一番である』



 という内容。

 近づかなければ、嫌な気分にならない。

 そのことは、本を読む前から分かっていた事だ。

 しかし、そうしようにも出来ない。

 家にいれば訪問してくるし、学校にいれば陽太が逃げても付いて来ようとする。

 陽太は、対策方法をしっかり考えなければいけないと思っていた。





「とんだ迷惑だな……」



 そうずっと思っていたけど、日が経つごとに気持ちも少しは変わりつつある。

 聖菜が陽太に話しかける時は常に真剣で、一切馬鹿にしようとしては無いなかった。

 だから次第に聖菜は悪い人ではないのではないかと思い始めた。

 だが頑なな陽太は、そうかもしれないと思いつつも、話さないという決定を変えようとはしなかった。




 ―――――――――――――――――――――――――――




 桜の花は散り始め、次第に木には緑の葉っぱが目立ち始めた。

 日が経つにつれて、外は夏に近づき始めますます暖かくなってきた。


 未だに私は菅原君からなぜ学校に来ないかを聞けていない。

 これだけ拒絶されれば、誰だって諦めるだろう。

 でも私は決してやめようとしなかった。



 それは、彼は私と同じような立場の人間である気がしたからだ。



 気がしただけで本当にそうなのかは分からない。

 でももしその立場に置かれているのなら、助けてあげることが出来るのは私しかいないかもしれない。

 そう思っているからこそ、約一ヶ月間の拒絶にも屈することなく粘り続けた。



「もういい加減やめたら?尚更、気分悪くするんじゃない?」



 四月も最終週。

 間もなく五月に入る。

 外の寒さが和らいだため、教室内での生徒の動きはかなり活発になり始めていた。

 私に問いかけた紗南も、最近はいつもより元気に感じられる。



「そうなんだけど……」



 諦めたら菅原君を救うことは出来ないかもしれない。

 だから私がその件から身を引くことは出来ないのだ。



「人助けってさ、案外大変だよ?助けられる方じゃなくて、助ける側の方が辛い思いすることだってよくあるし」



 確かにそうかもしれない。

 事実、変な噂が教室に流れ始めていた。

 その噂は決して気持ちのいいものではない。

 だけどそこから得られるものは、遥かに大きいのだ。



「二日に一回しか学校に来ない。来ても教室の隅で本を読んでいるだけ。寂しいでしょ?やっぱりみんなで楽しい学校生活にしたいし」

「セレナってさ、人が良過ぎるんじゃないかな」



 紗南は、小さな声でボソッと言った。

 だから私にはよく聞き取れなかった。



「え?何?」

「うんうん。何も無いよ。それよりも無理しないでね」

「うん」



 そう私が返事をすると、予鈴が鳴った。

 そしていつも通りの授業が始まった。




 ポカポカ陽気となった次の日。

 私がいつもの時間に学校に行くと、教室には菅原君の姿があった。

 いつも通り、イヤホンをして本を静かに読んでいた。

 一方、他のクラスメイトはガヤガヤと話して正直うるさいくらいだった。


 最近、毎日のように欠かさず私は彼に挨拶をしていた。

 そしてそのついでに『教えて欲しい』と伝えることにしていた。



「おはよう、菅原君」



 そう挨拶すると菅原君は、右耳のイヤホンを外して小さく、



「うん」



 と言葉を返してくれた。

 これでもかなり進歩した方だ。

 最初の方は、挨拶しても無視。

 そしてコクリと頷くようになり、最近では返事をしてくれるまでになった。

 これも執拗く話しかけたからだろうか。



「ねぇ、菅原君。なんで私のことが嫌いなの?」



 初めて菅原君の家に行った時に彼は、私のことが嫌いだと言った。

 その理由は言ってくれていなかった。


 菅原君はいつもの質問ではないことに気づいて驚いていた。



「先にそのこと、教えて欲しいな」



 そう言うと、菅原君は口を開いた。



「いじめ……」



 声が小さすぎてよく聞こえなかった。

 菅原君はなんて言ったんだろうか。



「何?」

「そのうち話す」



 彼はさっきとは明らかに違う言葉を発して、再びイヤホンをして本に集中した。

 私は、そのうち話すと彼が言ってくれたことに少し嬉しさを感じていた。

 だから今日は執拗く彼に話しかけるのはやめて、自分の席の方に向かった。


 そして、少し嬉しい気分でこの一日を過ごした。



 ―――――――――――――――――――――――――――




 暖かく、空は澄み渡っていた。

 そんな今日、二日ぶりの学校に来ていた。

 学校に着き自分の席につくと、慣れた手つきでイヤホンをして本を読み始めた。

 イヤホンはカモフラージュで、一切音楽は流していない。

 陽太は、教室の声に耳を傾けた。



『聖菜様、もしかして()()不登校のことが好きなのかな?』

『えぇ?そんなぁ……』

『いや、毎日話しかけてるからそうだと思っただけ』

『もしそうだったら、あいつボコボコに殴る』

『やめとけよ。停学食らわせられるぞ』



 二人の男子生徒に、笑いが生じた。

 陽太は、『好き』という言葉に反応していた。

 別に恋心が揺さぶられた訳では無い。

 反応したというのは、ある可能性が見えたからだ。

 聖菜が陽太に話しかけているのは、単に陽太を救いたいからという理由ではなく、単純に恋愛するためという理由なのではないかという可能性だ。


 もしそうであれば、きっと陽太は聖菜を更に拒絶するだろう。

 恋愛といういわゆるスクールカーストの上に位置するものだけが出来る特権をするためだけに、話しかけてくるのは単に腹が立つ。

 その上、救いたいという気持ちが本物なのではないかと思い始めていたのを壊してしまえば、陽太は気分を悪くするだろう。


 でもそれはあくまでも可能性。

 だから陽太は、暫くの間は変わらない対応を取って様子を見ることにした。



「おはよう、菅原君」



 当の本人が陽太に微笑みながら挨拶する。

 それに陽太はイヤホンを外して、



「うん」



 と陽太は小さな声で反応した。

 最近は、少しずつ嫌いという意識も薄れ始めてきていた。

 聖菜には裏がなく、陽太のことを本気で気にかけているのではないかと思い始めたからだ。

 しかし、気にかけているのではなく馬鹿にしたり、いじめの材料にしたいと思っている可能性も捨てきれない。

 だから、陽太の反応は少し躊躇いが混じっていた。



「ねぇ、菅原君。なんで私のことが嫌いなの?」



 初めて陽太の家を訪れた日に、陽太は聖菜を嫌いだと言った。

 その理由を聖菜は聞いてきた。

 陽太は、いつも趣旨の違う質問に驚きを隠せなかった。



「先にそのこと、教えて欲しいな」



 そう優しく聖菜は言ってきた。

 それに釣られてか、陽太は小さな声で答えを言った。



「いじめ……」



 でも、途中でやめた。

 それを言うのはちょっと嫌だったからだ。



「何?」



 しかしながら、もう既に言葉に出してしまった。

 恐らく聖菜には聞こえていないだろう。

 だから陽太はこう言った。



「そのうち話す」



 と。

 そう言った後に陽太が再びイヤホンをして本に集中したふりをすると、聖菜はそれだけで満足したのか自分の席の方に向かった。


 陽太は、予鈴になったのを聞いてイヤホンを片付けて授業の準備に取りかかった。

 しかし、その一日。

 陽太は、考え事で頭がいっぱいで何一つ授業の内容は頭に入ってこなかった。




 陽太はあの時、言うことを躊躇った。

 もしかしたら何一つ悪いことをしていない聖菜を傷つけてしまうのではないかと思ったからだ。


 陽太が聖菜に言おうとしていたこと。

 それは……。



『君は、()()()側の人間であるだろうから』




ゆっくりではありますが、話は次第に進みつつあります。

今後の展開に期待してください!


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