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僕に光をくれたのは貴方でした── 作者:柏崎 聖

第一部

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日常を変えたのは貴方でした

誰もが感動する小説を目指して書きます!
 


 人生という名の長く、多岐な道のり。
 決して緩やかではなく、山あり谷ありの一筋縄では行かない道。
 そんな道を人々は歩いていく。

 でも、陽太は違った。
 陽太の道には他の人とは違い道に深い暗闇があった。
 だから、他人よりも道を進んで行くのは難しかった。
 そんな彼はいつも求めていた。
 この道にかかる暗闇を晴らす、救いの光を。



 高校に行くのもあと一年か……。
 そう名残惜しい嘆きをするのが、普通だと思う。
 寧ろ、高校一、二年の間の辛い学校生活から解き放たれるまであと一年だと思うと、喜ばしく思える。
 学校で楽しく話をしたり、一緒に勉強したり、スポーツに勤しんだり、恋愛したり……。
 陽太はそういった一般的な高校生とはかけ離れていた。

 学校までの道のり。
 道路脇に植えられた多くの桜の木は、桃色の花を咲かせ人々を喜ばせている。
 ただ、それだけしか取得のないこの道を一人でゆっくりと歩く。
 新学期という始まりなのに、絶望に満ちている陽太は一歩、また一歩と踏み出すたびに溜息をついていた。

 高校の正門を通り、校舎へと続くコンクリートの道を歩く。
 空は曇模様。陽太のいつもの気分同様、暗めの空だ。
 約二年を過ごしたこの南鳳高校には、いい思い出などない。
 そんな思い出に新たな記録を刻むために、陽太は玄関に入って教室へと向かった。

 陽太は教室に入ると、一番窓側の一番後の席に静かに座った。
 その直後から教室には、こそこそと話し声がし始めた。


『今日は来る日かよ……。予想外れたぁ』
『静かにしろ。聞こえるだろ?あいつの来る確率は二分の一だから今日は来ないって予想したのはお前だろ?』
『ってか、前から思ってたけどあいつ来た日って教室のムード暗くね?』
『確かに。ムードメーカーならぬムードブレイカーだな』


 男二人組には大きな笑いが起きた。
 一方。


『あいつって何のために学校来てるのかなぁ?』
『あいつが勉強のためとか言ったら笑っちゃうよね。成績はいつもビリなんだし』
『でも成績ビリなのになんで進級できるんだろ?』
『土下座してお願いしたとか?』
『だっさ〜い』


 この女二人組にも笑い声が起きた。


『あの人誰?』
菅原(すがわら) 陽太(ようた)って人。あんまり学校来ないんだよ』
『不登校ってやつ?』
『いやぁ、一応進級してるんだし不登校とまでは行かないんじゃない?』

『友達いないのかな?』
『いないと思うよ』
『え?高校生活も三年目なのにいないの?』


 そんな悪口にも陽太は屈しなかった。
 耳にはイヤホンをして聞いてないふりをしながら、小説を読んでいた。
 毎日、毎日つまらない学校生活で唯一楽しいことと言えば小説を読むことと言っても過言ではない。
 授業開始まであと十五分。
 何となく、教室の戸をぼーっと見ていたら窓越しに女の人が見えた。
 そしてその女の人は、戸を開けた。
 綺麗な黒い髪。スタイルもよく、美人。
 そんな彼女が入ってくると、教室には再びヒソヒソと話し声が聞こえ始めた。


『うわっ、学校一の美女のご登場だ』
『別格だな、あの人は』
『あの人じゃなくて彼女のことは、『聖菜(せいな)様』と、様付けして呼べ!』

『やっぱり可愛いよね〜、聖菜ちゃん。羨ましい……」
『ウエストの細さもありながら、胸もあるなんて……』


 その人が入ってくると、陽太の噂はスッキリとなくなった。
 だから陽太は、心の中で彼女に感謝した。
 きっと言葉で伝える時なんてやってこないだろうから。

 彼女の名前は花咲(はなさき) 聖菜(せいな)
 学校一の美女との呼び声高く、容姿端麗、スポーツ万能、性格も良くて成績優秀とみんなの憧れの人物である。
 そして同時に、陽太とは最も疎遠な人物である。
 陽太は、聖菜の存在を知っている。なぜなら学校一の美女と言う噂は嫌でも耳に入ってくるからだ。

 聖菜は教室に入ってきた後、自分の席である窓側の一番前の席に座った。
 そしてその隣に座る女の人に話しかけた。


「おはよう!紗南」
「おはよ、セレナ!」
「そ、その名前で呼ばないでよ」
「いいじゃん、友達なんだし」


 聖菜が話しているのは、中川(なかがわ) 紗南(さな)
 聖菜と紗南は、同じバスケ部で聖菜は主将、紗南は副主将だ。
 この二人は美女コンビとして、よく噂になる。


「ねぇねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
「何?」
「あの人誰?」


 そう言って、聖菜は陽太の方を見た。
 その視線につられて紗南も陽太の方を見た。

 陽太は小説に目が言っているとは言え、学校トップクラスの美女の強い視線を感じないわけがなかった。
 でも、陽太はそれを無視して耳だけをあちらの方に向けた。


「菅原 陽太。学校には2日に1回しか来ないよ」
「そうなんだ……。学校、来ればいいのに」
「え、もしかしてあいつに興味あるの?」
「う〜ん……。何となくほっとけないというか、そんな気がするんだよね……」
「ふ〜ん」
「私、ちょっと行ってくる」
「うん……、え!?」


 もちろん、この緊急事態を陽太が知らないわけがなかった。
 だが逃げようにも逃げられない。
 なぜならこのタイミングで抜け出すと、盗み聞きをしていたことがバレて、余計に変な噂が流れる可能性があったからだ。
 だから逃げずに観念した。


「あの……。初めまして。私、花咲 聖菜。よろしく」
「あ〜、僕のことはお構いなく」


 陽太は、話を早く終わらせるため素っ気ない態度をとった。
 しかし、聖菜は諦めずに話を続けた。


「なんで、学校来ないの?」


 陽太はその言葉を聞いて、素っ気ない態度から暗い態度になった。
 そして同時に怒りが込み上げてきた。
 でもそれをグッと堪えて、こう言った。


「飲み物買いに行くから」


 低く、冷たい声でそう放ったにも関わらず、聖菜はそれを感じ取らなかったみたいで、調子を変えずこう言った。


「私も行く〜!」
「来るな」


 そう少し強く言い返すと、さすがに聖菜も気付いたみたいだった。
 周りの生徒にも声が聞こえたみたいで、再び噂が流れ始めたけど、それを無視した。
 そして陽太は鞄を持って教室を出た。


 こうなってしまうと学校には居づらいと感じた陽太は、保健室へと向かった。
 朝の保健室には、先生以外誰もいなかった。


「帰ります」


 そう告げると、保健室の先生の江沢(えさわ) 八重子(やえこ)は、笑顔でこう返した。


「分かったわ」


 彼女は30代後半に入っているのだが、それを感じさせなかった。
 いつも若々しい笑顔で、陽太に話しかけている。

 ちなみに江沢先生は、陽太が半不登校な理由を知っている。
 そのため、サボりの早退もいつも許してくれていた。


「じゃあ、気をつけてね」
「はい」


 そう短く言葉を交わして、保健室を出た。

 そして朝来た道のりをゆっくり、ゆっくりと引き返していく。
 誰もいない玄関を通り、予鈴がなった校舎の横を歩いて、正門を通った。
 曇りの空からは、雨が降り出しそうだった。
 それでも陽太は決して急いで帰ろうとせず、ゆっくりと歩き続ける。
 朝見た桜の木の横を通り、気付けば新築の家に着いていた。
 二階建ての一軒家。
 建物は大きくて庭は広く、住むのには快適な家だ。
 その家に陽太は入っていった。


「ただいま〜」


 誰もいない家に、声が響いた。
 両親は、共に働いていて夜遅くまでは帰ってこない。
 陽太は、二階の自室に向かった。

 陽太の自室は、かなり広いものの荷物が殆ど置いていない殺風景な部屋だった。
 そのため2つ並んで置いてある本棚が妙に目立っていた。
 その本棚から1冊取り出して、布団に座った。

 今、陽太がハマっているのは恋愛小説。
 青春の憧れは、陽太にとってかなり疎遠だったが小説を読んで少し羨ましく思うようになった。
 この手に持っている小説は中でも最もお気に入りの『あの日を境に』は、恋愛を中心にコメディやギャグが多く書かれとても読みやすい。
 この本を読むのは今回を含めて四度目になるが、全く飽きない。
 何度読んでも面白かった。

 陽太はその本の世界に引き込まれ、いつの間にか今日、学校であったことの記憶が次第に遠ざかっていった。



 昼食、夕食を途中で挟みながらずっと本を読んでいたからか、気付けば最終巻まで読んでいた。
 途中、感動シーンでは涙を流した。
 ギャグシーンでは、一人で笑っていた。
 そして、クライマックス。
 最も感動するシーンで、陽太は再び涙を流した。
 物語が終わってしまうことに対する寂しさも、最近では小説の良さだと感じるようになった。
 物語を読み終えるたびどこか満足感を得られた。
 それにどんな辛いことがあっても小説を読めば、全て忘れられた。
 だから小説を読むのは止められない。



 ふぅ……。と息を吐いて落ち着いたところで、本を棚に戻して布団に入った。
 時刻は午後九時。
 いつもこの時間に陽太は寝ていた。

 そして布団に入ってものの数分で陽太は眠りについた。


 ―――――――――――――――――――――――――――



 車の窓越しに、外を見るとそこにはたくさんの桜の木が植えられていた。
 桜の木を見ると、春を感じる。
 私は、いつも通りの時間に校門前に着いた。

 車から降りて、正門を通る。
 校庭に咲く花は、四季折々の色を見せてくれる。
 その花々を見ながら、私は玄関を目指す。

 靴箱から綺麗に磨かれた内履きの靴を履き、紐をきっちりと締めて同時に気持ちを引き締めた。
 楽しい気分や、ウキウキした気分は心の中にしまい込み階段を一段一段登っていく。
 そして二階に着き、三組の教室に向かう。

 教室の前に立つと、何となく違和感を感じた。
 その違和感は何かと、教室の中を覗くとこそこそと話している様子が見受けられた。
 私はその違和感を作り出した原因が、昨日は空席だった席に人が居ることだと気付いた。
 でも私は、何事もないかのように教室の扉を開けた。


「おはよ、聖菜!」
「うん、おはよう!」


 席へと向かうまでに、何人かの生徒に挨拶されその生徒皆に笑顔で挨拶を返した。
 そして席に着いて、鞄を下ろした。


「おはよう、紗南」
「おはよ、セレナ!」
「そ、その名前で呼ばないでよ」
「いいじゃん、友達なんだし」


 彼女は、中川 紗南。
 私がいつも話す気の合う親友だ。
 因みにセレナというあだ名は、紗南が付けたものだ。

 私は、教室に入る前から気になっていたことを紗南に話すことにした。


「ねぇねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
「何?」
「あの人誰?」


 私は、その人の方を見た。
 教室の窓側で一番後ろの席。
 そこを見ると、耳にイヤホンをして小説を読んでいる茶髪の男の子が座っていた。


「菅原 陽太。学校には2日に1回しか来ないよ」


 そう紗南は言った。
 昨日居なかったのは、そういう事だったのかと気付いた。


「そうなんだ……。学校、来ればいいのに」
「え、もしかしてあいつに興味あるの?」
「う〜ん……。何となくほっとけないというか、そんな気がするんだよね……」
「ふ〜ん」
「私、ちょっと行ってくる」
「うん……、え!?」


 私は、陽太の席の方へと歩いていった。
 その席に着くと、陽太は私の顔を見た。
 特に驚くような様子はなかった。


「あの……。初めまして。私、花咲 聖菜。よろしく」


 最初は、初対面なので挨拶でもしておこうと思ったのだが……。


「あ〜、僕のことはお構いなく」


 と、あまりにも素っ気ない態度で返されてしまった。
 しかし私は諦めずに話を続けた。


「なんで、学校来ないの?」


 と、私は気になっていたことを素直に言った。
 すると次はすぐには答えが返ってこず、暫くの間があった。
 そして、菅原君は再び言葉を発した。


「飲み物買いに行くから」


 話が途中だったので、私は陽太についていこうと思った。


「私も行く〜」
「来るな」


 でもその気持ちも、陽太のこの一言で消えた。
 菅原君は冷たく怖い声音で、私を拒絶した。
 私は、菅原君が教室から出ていく様子をぼーっと眺めることしか出来なかった。

 私は菅原君が去ってから、すぐに何事もなかったかのように自分の席に戻った。
 すると、紗南に話しかけられた。


「あんまり近づかない方がいいんじゃない?」
「そ、そうかもしれないけど……」


 菅原君の表情とか言動から、何かあるのではないかという気がして私は諦めきれなかった。


「謝りに行った方がいいよね……。なんか怒らせちゃったし、また変な噂が流れちゃったし……」
「まぁ、人としてしっかり謝らないとね」


 私は、明日の朝……。
 次に学校に来た時に謝ろうと決心した。


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