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第?話「恋のライバル」
「最近どうよ、ゆたとは」
ゆたに付き添って第一層まで連れてくるのが私、単純に第一層に用事があるから同行しているのが俊介。肝心のゆたとはエレベーターを降りてすぐのところで別になってしまうため、私と俊介が毎度二人きりにされてしまう。
すると、周囲の目がカップルを見る目に変わる。とんでもない話だ。
最近は、ゆたまで私たちをそんな風に見ている気がしているので、さりげなく誤解を解いておかなければ…。
「何もないよ。別に」
俊介からいつもの答えが返ってくる。俊介は嘘をつかない。
だから私は、その一言ですべて安心する。
「そういえば」
いつも俊介と別れる大きな交差点まで来て、珍しく俊介から口を開いた。
「桃子、ユルルングルは、興味ある?」
「お父さんから、もらったんだよ。ユルルングル行きの観光チケット」
「でもこれ、二名様まで、なんだよな」