表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この海は流れ落ちない  作者: うみ
2/11

第?話「500年間、絶対に折れないボールペン」

僕が入学祝いにお父さんからもらったのは、クロックチタン製のボールペンだった。


「500年間、絶対に何があっても砕けない」

 あのユルルングルも、これでできている。

 歴史上の人類の発明の中でも、群を抜いて素晴らしいものだよ。

 その時、父さんはそう言っていた。


 

「そんなのうそうそ! メーカーの作り話だって!」

 その話を聞くなり、桃子はクロックチタンのキャッチコピーを笑い飛ばした。

「こーんなほっそいボールペン、折ろうと思えばゆたでも折れるよ」

 僕も最初は父さんの話を信じなくて、軽く試したことはある。

 実際その時、このボールペンはまったく曲がらなかったし、3年前から今まで、傷一つついていない。


「ほらゆた、これ折ってみな?」

 だから、そんな言葉とともに桃子がゆたにそれを手渡すのも、黙ってみていた。

 ゆたは急に水を向けられ「ゅぇ!?」といつもの呻きをもらし、おずおずと受け取る。僕の顔色をうかがってから、ペンの両端を持ち、力を込めた。


 それから1分近く苦闘したが、ペンはぴくりともしていない。

 力を込めているゆたの顔は真っ赤になっていて、それでも負けず嫌いが顔を覗かせ、ペンを手放そうとはしなかった。見かねた桃子が声をかけようとしたとき……!


「うりやぁ!」


と、およそ普段のゆたに似つかわしくない声とともに、彼女はペンを机に叩きつけた。



それが、桃子がゆたに恋した瞬間らしい。なるほど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ