遭遇
しばらくすると波打ち際に何か黒い大きなものがあるのに気付いた、初めは流木か何かかと思ったがよく見てみるとそれには手足があった。
「ねぇ…あれ…」夕日を見ていた未来は姉の言葉とひきつった表情を見て視線の先を見た、「え…人…うそ…人間だよあれ!!」この距離では男か女かもわからないが、それは確かに人だった。
「と、とりあえず警察呼べば良いのかな!?あ、でも先救急車…」未来は完全に冷静さを失っていた、「その前に近づいてみないと…」そうだ、まず生きているのか死んでいるのか確認しないと…パニックに陥っている妹を横にそう自分に言い聞かせた「わ…私はここからで良い!!」と座り込む未来を背に、倒れている人影に駆け寄った。
男だ…流されてきたのか全身ずぶ濡れだった、
「あの…大丈夫ですか?」声をかけてみたが返事はない、とりあえずゆっくり仰向けにしてみる、皮膚はふやけ、唇は紫色になっていたが、かすかに胸が上下しているのをみると呼吸はしているようだ。
良かった…生きてる…ホッとしたがすぐに歩道でスマホを握りしめ怯えている未来に救急車を呼ばせようと声を出そうとしたとき、自分の左手首に冷たい何かがまとわりついた、慌ててその奇妙な感触があるところを見てみると、いつ目覚めたのか男が震えながら自分の左手を掴んでいた、男は水を吐きながら「君が…助けて…くれたのか…ありがとう…」と弱々しく言った「いえ、そん…」そんなと言いかけたが男が必死に割り込んできた「すまないが警察は呼ばないでほしい」その言葉の意味が初めはよくわからなかったが、男の呼吸が落ち着き数分経つとだんだんと意味がわかってきた、
あぁ、そうか、この人は犯罪者なんだ。