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記憶  作者: ポメ猫
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忘却

涙と共にパンをかじった者でなければ人生の本当の味はわからない -ゲーテ

4月7日


彼は一人、暗い海岸に寝そべっていた…

ここは小さい頃よく両親に連れてきてもらった彼の数少ない楽しい思い出の一つの場所、夕方ここから見える夕日は素晴らしい絶景だった…

だがその景色ももう今日で見納めだ、一ヶ月ほど前にこの海岸はコンビナートに改築される事が決まった、ここはもう中に入ることはおろか、近付く事さえ出来なくなる、今はフェンスと警備員によって囲まれているためこうして夜にならないとここに入るのはままならない…

見付かれば終わり、だが彼にとっては今さら捕まろうがどうでもいい事だった。

「さて、そろそろ行くか…」彼はゆっくり立ち上がり言った、

「この場所とも今日でお別れか…お前も俺も結局世の中に馴染めなかったな…」そう呟き彼は暗い波打ち際に向け歩き出した。


4月16日


とあるアパートの一室、

「だーかーら!そうじゃなくて!私の留守中になんで勝手に料理したのか聞いてんの!」姉の桜に強く怒鳴られて半べそをかきながら「お姉ちゃんが…昨日…ハンバーグ食べたいって…言ってた…から…」と火傷した右手を冷やしながら答えた、「だからってあんた料理したことないんだし…昨日包丁の切り方教えてて手切ったばっかでしょ…しかも今日は火傷…散々ね」呆れながら泣きそうな妹を見て「でも無事で良かったわ」と慰め、「海…行く?」姉の問いに小さく頷き、二人は部屋を跡にした。

外に出ると日がまだ少し高い位置にあったためかなり明るかった、アパートの駐車場に止めてある車に乗り込み、「えっと…アクセルってどっちだっけ…」「もう…お姉ちゃんったら免許取りたてなんだから歩いて行けば良いのに…海すぐそこだし」すっかり泣き止んだ未来が桜に言った「うるさいわね、良いじゃない、運転の練習に付き合いなさいよ」未来は正直かなり不安だったが、急発進した勢いでシートに押し付けられた、あまりにも痛かったため嬉しそうな姉を睨みながらポケットから出した携帯をいじり始めた。

「それにしても海なんて久しぶりねぇ…」運転に集中していた桜が急に話しかけてきた、しかし顔はしっかり前を向いていた、

「そうだね、いつも辛い事とかあったらいつも行ってたもんね」携帯をさわりながら返した、「そういえばあそこの海岸、コンビナートになるんだっけ?酷いよねーあんな良い景色独り占めするなんて」

「え?そうなの!?」桜はいきなりこっちに向いてきたため、慌ててすぐに前を向かせた、「ちゃんと前見てて!!事故るよ!」「あはは…ごめんって」軽く返してきた姉に若干ムッとしたが、目の前にフェンスで囲まれた海岸が見えてきた為、二人で車から降り、その夕焼けの美しさに見とれた。

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