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2ー1ー2

大きな門を抜けると、歓声と群衆に迎えられた.例の金髪の男は列の先頭で、大衆へ爽やかに手をふっている.


[勇者、エリオット万歳!]


大衆の中の誰かがそういった.金髪の男のことはそう呼べばいいらしい.

凱旋を見物する為に押し掛けた野次馬たち.人間とは思えない容姿のものもいる.それらにメイヴィルさんはカメラを回してくれている.私がお願いした.もし縄が解けるたら(そんな機会が訪れるなら)、彼にはもう少し技術的な事を教えてあげたいものだ、がまずは我が身だ.


とりあえずメイヴィルさんにはバッテリーの概念だけ教えて置いた.

予備はあと二つあるが充電は無理そうなので貴重だ.メイヴィルさんは残念そうだったが、やはり話がわかる(ドワーフとのこと)らしく、カメラの電源を切った.

残る心配、これからどうなるだろう?なんて考えていると、いつの間にか玉座の前に着いていた.


[きゃっ]


侍従のだれかが後ろから私をつついた.


[馬鹿、跪け]


小声が聞こえて跪いた.ファンファーレとドラムロール.


[皇帝陛下、皇后陛下、皇女アナベル様のおなり]


しばらくして[面をあげよ]との合図が出るまでうつむいていた.

顔をあげるとそこには立派な冠を戴いた威厳溢れる男性、美しく慈愛に溢れたお顔の女性、可愛らしい女の子、三人が玉座に座って縛られていた私を冷たい眼で見ている.


皆の代表として前で跪くエリオットに対し、苦しゅうないと言ったあと、お縄についた私に対する説明を求めた.カメラと鞄は没収されて、私の説明が始まった.


[なるほど不思議な力を用いる魔女であるか]

威厳に溢れる皇帝陛下.


[陛下、違いますわ...特殊な技術を使うドワーフですわ]

慈愛に道溢れた皇后陛下.


[髪も短いし、小さいしドワーフですわ]

追従するお姫様.


[或いはその両方かも知れぬ]


[お父様、ドワーフで魔法使いなど聞いたこともありませぬ]


[朕もない、珍妙なる格好に小さな体、勇者殿の話では力も強いだとか]


やんごとない身分の方々は私の正体について議論している.抑えた声も厳粛で静かな空間では全て聞こえる.この世界のでは本人に直接尋ねる習慣は無いのか?と苛立ちつつも、首がかかっている.


[それにしても.......このカメラとやら、なんと面妖なのでしょう]皇后陛下の関心はカメラに移る.


[朕も珍しいものは見飽きたと思っておったが、まだ世にはこのような宝が眠っておったか]


皇帝が眉間にシワをよせて手にしたカメラを吟味する.メイヴィル氏と違って手つきは完全に素人のそれだ.辛抱がたまらなくなってきたところで大臣らしき人が物申した.


[陛下、この者やはり怪しうございます、速やかに首をはねるべきです]


待っていても風向きは悪そうだ.なら立ち上がって抗議すべきか、と動こうとした.

その時、遠くで聞き覚えのある鳴き声が聴こえた.


[注心!!!!]


静かな空間に鎧の軋む音が反響した.

近づく声の主は息を切らして王の目の前に滑りこんだ.


[一大事でございます!ドラゴンが、ドラゴンが現れました!]


ドラゴンという単語に心臓が反応した.

皇室の面々は揃って[あなや]と声をあげて、その場の面々は皆息を飲んだ.


ドン


建物が揺れて、埃がぱらぱら落ちた.

カメラを持つ皇帝の手は頼りない.

皆が驚いている隙に、第二波が来る前に、私は痺れた脚でなんとか立ち上がった.


ドン


第二波、皇帝は玉座にのけぞった.皆は陛下と声をあげたが、私の目は弧を描いてこちらへ飛んでくるカメラを見た.

身を捨てて後ろに跳んでカメラを受け止める為のクッションとなる.カメラを受け止めて背を打った.だがカメラは無事だ.口許が綻ぶ.


ドラゴンの鳴き声.

エリオットは皇帝に一礼すると、建物の外へと駆けていく.両腕を縛られながらも、私はカメラを持って外へ駆け出した.


[おい!どこへ行く]と後ろで聴こえたが無視をして痺れた脚を動かした.縛られているとはいえエリオットは甲冑で私はスニーカーにズボンである.縛られて並走するくせ者にエリオットは[貴様]と声を荒げた.構っていられない.半人半馬よりずっと遅い追手を撒いて、私は門を通り抜けた.

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