貴方が、私の初恋でした。
「うーん……」
目の前に置かれた一枚のはがき。
それは、私の頭を悩ませていた。
「どうしよう……」
はがきに書かれているのは、結婚式のお知らせの文字。
そう、それは結婚式の出欠を問う内容のものだった。
私は今二十七歳。友人も何人か結婚し、結婚式にだって何度も出たことがある。
そして、はがきに書かれた日にちに用事は入っていない。
迷うことなんてなにもないのだ。
――はがきの差出人であり、結婚式の新郎である人物が、彼でなければ。
彼とは幼馴染みだった。
一緒にいるのが当たり前で、彼のことなら何でも知っていて。
彼に向ける気持ちが恋情に変わったのがいつかは覚えていない。
ずっと、彼は私の親友であり、好きな人であり、憧れだった。
引っ込み思案で周りの目を常に気にする私。
自分を持ち、まっすぐに夢に向かう彼。
そんな彼は、私にも夢をくれた。
彼と出会っていない私は、きっと今の私とは別人だ。
そう思えるほど、彼の存在は私のなかで大きかった。
彼の一番近くにいることが、私の誇りだった。
それでも。
その立場は、もう別の人に渡ってしまうのだ。
もう、彼の一番近くに私がいてはいけないのだ。
「……よし!」
頬を伝うものを拭いながら、私ははがきに手を伸ばした。
そして今。私は、結婚式の会場にいる。
舞台の上には、久しぶりに見た彼と、笑顔が素敵な新婦さん。
あの場所に立つことを、何度夢見ただろう。
またじわりと涙がこみ上げてきた気がして、慌てて唇を噛む。
本当は、最後に告白しようと思ってきたんだ。
でも、幸せそうに笑い合う新郎新婦を見ていると、そんな気持ちがすうっと消えていった。
今の私には、ただただ彼らを祝福する気持ちしかない。
彼が幸せでありますように。
私に幸せをくれた彼が、今後幸せになりますように。
新婦と二人で歩く彼に、最大の拍手を送る。
ねえ。
あなたは知らないだろうけど。
あなたは、私の初恋でした。