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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あたしは悪くない

作者: 大きな兵士


――――とある日の放課後


「俺…三島のことが好きです!付き合って下さい!」


「えっ…い、一ノ瀬くん…」




どーもどーも。茂みの中からこんにちは。

あたしの名前は二階堂真知子(みしま まちこ)

ここは校舎裏。我が高校の告白スポットNo.1であります。


今、告白されたのはあたしの大の親友である三島市華(みしま いちか)

パッチりおめめにくるんくるんカールなまつ毛、通ったお鼻に桜色のプルプル唇。The 美少女を地でいく、にくいあんちくしょう(死語)。体型も悪くない…どころか出るとこ出て引っ込む所は引っ込む、にくいあんちくしょう(天丼)。

これだけなら女の敵だが、性格もよく、仲の良い友達も多い完璧な美少女だ。


…あたし?聞いちゃう、今?


顔?つり目な部分がチャームポイント(笑)。この前、寝不足で登校したら男子に怯えられたけどね。ははっ(白目)


体型?背は170cm超えるでか女。出るべき所は今、ヒキコモリを決行している。何度説得しても出てきやしねぇ(やさぐれ)。

牛乳って意味ないのかねぇ?


性格?よくみんなから男勝りって言われるよ。小学生の頃は男子相手に喧嘩をふっかけたこともあったしね。今でも「姉御!」って呼ばれることがある。あたしは任侠じゃねぇ(任侠の皆ごめんなさい)


…あたしのことはさておき、告白している男は一ノ瀬ホムラ(いちのせ ほむら)


顔はジャ〇ーズ系。つまりはイケメン。背も大きく、185cmはある(あたし調べ)。体型だってサッカーやってるおかげか、いわゆる細マッチョだ。女の子に優しい紳士だし、困ったやつを見ると助けずにいられない自己犠牲野…げふげふ、男気溢れる優しいやつだ。今どきファンクラブすらあるのはこいつぐらいでは?


ちなみにこいつもあたしの親友だ。


…そんでもって、あたしの好きな人でもある。もちろんlikeではなくloveなほう。


さて、なんでこんなあたしが、好きな男の告白シーン(しかも相手はあたしの大親友)を盗み見するという、傍から見ると面白くもおかしい状態にあるかと言うと…。


――――1ヶ月程前


「マッチ!お願いがあるんだ!」


あ、マッチってあたしのことね。真知子でマッチって安直過ぎない?てかジャ○ーズ事務所の大御所の男性名じゃない?とか言わない。先生との約束だよっ。


しかし、ホムラがあたしに頼みねぇ。こいつの場合は、ハイスペックだから結構自分でなんとか出来るはずなんだけど。


野郎友達も多いし、わざわざあたしに頼む必要だってないだろう。


嫌な予感がするが…まぁ、好きなやつから頼られるのは素直に嬉しいからな!嫌な予感も何もないだろ!


「俺…実は…」


あたしへの愛の告白かな!キャハっ!あたしキモwww!


「三島のことが好きなんだ!」


…愛の告白だったけどあたし宛ではなかった!普通にショックだよ!


というかなんであたしに言うんだよ!ダメージ大きいよ!さっきから「!」マークばっか使ってるよ!ちくせう!


傷ついた心に喝を入れつつ訳を聞いてみれば、


「いや…三島は可愛いし、いい奴だし…」


あんたが好きになった理由を聞いてんじゃねぇよ!(錯乱中)


「それで…告白したいんだけど、その…勇気が出なくて…」


あんた程のハイスペックで告白の自信がないだと!世の中の男子高校生99%を敵にまわしたぞ!てか、あたしも敵にまわるぞ!女子高生だけどね!


「それで、マッチに色々と手助けして欲しいんだ!」


そうだな、あんたとあたしは親友だ。そして、市華とあたしも親友だ。ここは快くいい返事をかえすべきだな。だけど、あたしはあんたが好きだ。つまり、あたしの返事としては「だが断る!」と返したかった。


そう、返し「たかった」


だって一華のやつもこいつが…ホムラのことが好きなんだ。…たぶん。


例えば、ホムラと二人で楽しく(あたしが、かな)話していると、市華が「ねぇねぇ、二人で何の話しているの?私とも話そうよ」と割り込んできたり。


例えば、授業中ホムラのことを見つめてて、ハッと授業に集中しようと視線を前に向けると、市華も顔だけ横にむけてホムラを見つめたり。(あたしの席から斜め前がホムラ、前が市華)


例えば、今日はホムラと話せてないなぁと思っていたら、市華が「今日は一ノ瀬くんとは話とかしてないよね!?あたしとだけだよね!?」と必死に聞いてきたり。(言っておくがあたしにだって友達はいる。あたしから友達をなくすな)


…結構あたしって乙女だな。じゃなくて。


例えを挙げればキリがないほど市華がホムラのことを好きだとわかる。


…わかってしまう。


そりゃ、あたしだって女だから醜い嫉妬はする。でも、市華との友情と、ホムラへの愛情。どちらをとるのか、と聞かれてしまえば…答えられない。


だから、あたしは…。


あたしは…。


――――とある日曜日


「え〜!真知子来れないの!?」


「う、うん。今日、急に予定が入ったって…」


説明しよう!


①週末、あたしは市華に「遊園地で遊ぼうよ」と誘う。(すげー嬉しそうだった。そんなに遊園地が好きか)

②市華が承諾した後に「ホムラと3人で」と伝える。(すげー嫌そうだった。そんなにあたしが邪魔か)

③二人が揃った後にあたしが欠席メールを送る

④二人で遊園地デート!


名付けるならば「友達と3人のつもりが急に友達がドタキャンしちゃって気になるアイツとふたりっきりで遊園地デート」作戦だ!


…ええ、そうですよ。愛よりも友を取りました。トリマシタヨ。


だって、市華は初めての友達。いや、大親友。

カラオケで二人で行った時、何故かキスされるくらいの大親友だもの。(急展開)


…いやだって市華が「大親友だったらキスは当たり前だよ?」とか言うんだもん!

待って!「お前ら百合ップルかよ」とか言わないで!

そりゃ、その後に「実は私のファーストキスなんだよ(ニコッ)」って顔赤くされた時は可愛いと思ったけどさあ!

あたしが男だったら襲いそうだっ…待って。ブラウザを閉じようとしないで。

違うの!待って誤解なのよ〜!


…話を戻そう。閑話休題だ。百合ップルの話は終わりだ。


ともかく、とっとと二人をくっつけて、あたしの恋を終わらせよう。


ホムラは市華と付き合えるし、市華はホムラと付き合えるし、あたしは…ずっと二人と親友でいられる。ミンナシアワセダ。


だから、これだいいんだ。


「…でも真知子いないし」


「でもこの無料チケットもったいないじゃん。だからとりあえず二人でいかない?」


「むー、まぁいいか。一ノ瀬くんには色々と聞きたいことがあるし」


お、どうやらデートに突入ですよ奥さん。(誰だよ)。ふふふ…だってデートですよ奥さん。(だから誰だよ)


付き合ってない二人がデートする。それすなわちいつかくっつくフラグ!


まあ当たり前ですよね。好きでもない異性と二人でデートなんて普通しませんて。こういう時はたいてぇ両方、あるいは片方が好意を抱いているんですから。ねっ旦那。(これはあたしの立場を聞いた方がいいのか)


にしても…市華がホムラに「聞きたいこと」ねぇ。まぁ自分が好きな男のことをよく知りたいと思うのは当たり前のことか。


二人が入場した後、こっそりと後をつけるために(ホムラ公認。市華?なんのこと?)チケットを使ってあたしも入場する。因みに二人の会話は盗聴させてもらっている。


日曜日だからか混んでいて、人気のアトラクションでは待ち時間が2時間というのもある。そこまでして乗りたいものか?ジェットコースターって。


「一ノ瀬くんはさぁ…」


しかし、そんな待ち時間を利用して市華がホムラに質問してくる。時間を無駄にしない。流石、市華。


「真知子と仲いいよね?」


ブフォ!しまった、乙女としてあるまじき行為。しかし、今の質問はあれか。




あたしに嫉妬してんのか?




違うんだ市華!いや、たしかにあたしはホムラは好きだけど、ホムラはあたしのことを(恋愛としては)好きじゃないんだ!自分で言っててスゲェ傷ついた。しょぼーん。


もちろんホムラの答えも、


「ああ、マッチは親友だからな」


って答える。うん、覚悟してても傷つくよね。


「で、でも最近よく二人で色々話したりしているし、真知子と最近喋れてないし…」


うう…ごめんよ市華。でもやっぱり気まずいんだよ。だって、


ホムラ→市華が好き(両想い?)

市華→ホムラが好き?(両想い?)

あたし→ホムラが好き(振られてやんのざまぁ)


…んだとこらぁ!まだ振られてないわボケェ!ただ好きなやつに自分以外が好きだと恋愛相談受けただけじゃバーロー!


あたしは何に対して怒ってんだろう。かっこ内に対してだな、うん。


…と、まぁそういう訳で最近あまり市華と話せてないし、二人で遊んだりしてない。


「それに一ノ瀬くんと話している真知子はすごい楽しそうだし…」


ち、違うんだよ〜。違くないけど違うんだよ〜。


ああ、迂闊な自分を殴…るのは痛いから説教したい。二人をくっつけるって決めたのに、結局あたしは二人のために行動できてない。


このままじゃ二人のデートが失敗してしまう。そしたらホムラは市華と付き合わなくなって、そしたらホムラは傷ついて、あたしはそれを慰めて付き合…最悪だ自分。あたしはあたしのことしか考えてない…。あたしは、


「俺は三島と居る時も楽しいぞ」


「えぇーそうなの?」


「だって俺、今日のこと楽しみにしてたしな」


「まぁ、私も?デート出来ると思って楽しみにしてたしね」


「で、デートって…」


「あ…か、勘違いしないでよ!私は真知子と…」


この二人みたくは他人のことを想えない。


そんなことを考えながら二人のデートについていった。まるで、輝く光に着いていく醜い虫のように。


――――そして話は冒頭へ


あの後の遊園地デートはうまくいった…と思う。二人とも楽しそうだったし。あたしは一人で煤けてたけど。市華がナンパに絡まれた時も綺麗にホムラが助けたし。あたしは近寄って来た男を睨むだけで退治出来たけど。最後に仲良く観覧車に乗ってたし。あたしはバレる訳にはいかないのでコソッと隠れてたけど。


本当にあの時のあたしはろくでもないな。


それ以外にも、市華が病欠した時に、ホムラに発破かけて市華の家に上げさせたり。市華に手作り弁当を持って来させたついでに「あーん」をやらせたり。市華の背中を(物理的に)押してホムラに抱きつかせたり…。


とにかくあたしは頑張った。痛む心に負けずに頑張った。


そして、作戦名「人気の告白スポットで市華を意識させた上で告白してそのままのムードでOK貰っちゃおうぜ作戦」を始動した。


そういう訳であたしはふたりの告白シーンを観察もとい見守り中だ。


「三島は、みんなに優しくて、誰に対しても笑顔で…それに頑張り屋だし、」


あんた好きになった理由は可愛くて、いい奴って言ってたじゃん。ウソハダメダヨ、ウソハ。


「だから…俺…」


ウソつきはあたしだけどね


でもいいよね?


ダッテフタリノタメダモノ


「俺…三島のこと好きです!付き合って下さい!」


「えっ…い、一ノ瀬くん…」


あー、とうとう告白したか。これであたしはお役後免。市華はホムラのこと(たぶん)好きだからこの告白を断ることもないし。


超人的にカッコよくて誰からも好かれる美男子と、超人的に優しくて誰からも好かれる美少女のカップル。


みんなから好かれるカップルはみんなから祝福されてみんなから認められるリア充カップル。


最高のカップル成立だね。お似合いじゃねーか。


…お似合いじゃねーか。


そりゃ端からあたしは眼中にないよね。


こんな目つき悪い、スタイル悪い、性格悪いあたしなんかを、


「一ノ瀬くんは真知子が好きなんじゃないの?」


何故そこであたしが出てくる。…そういやいつも一緒に居たな。それは勘違いするわ!(衝撃的)ち、違うんだからねっ!何だこのツンデレモドキは。


「いや、俺が好きなのは三島…お前なんだ!」


「そうだったんだ…」


そうだ!いけ!もっとせめろ!勘違いを吹き飛ばせ!




そして、あたしを早くあきらめさせろ!




「だから、俺と…」


「ごめんなさい」


…は?


「私…もう好きな人がいるの」


…ほわい?なぜ?なんでフるの?


だってホムラだよ?


イケメンで、サッカー上手くて、体つきも 良くて。


意外とヘタレだけど、誰にでも優しくて、誰をも助ける、こんなあたしにさえ優しいヒーロー。


それを「好きな人がいるから」ってフるの?


「そ…そのひとは?」


気になるよね?あたしも気になる。だってホムラを超えれる男子なんてそうそういるわけ、











「真知子」











「……」


……

……

……は?


「…へ?」


「だから、私が好きな人は二階堂真知子」


イヤイヤイヤイヤイヤイヤ


なんだって?


あ、同姓同名のニカイドウマチコ君かな?そんなヤツいたっけ?アハハハハ。


「そ、それは三島や俺の親友である…」


「うん、真知子だよ?」


あたしだったよ!


そっかー、ホムラを超えれる男子はいないけど女子だったらいたのかー。光栄だなー。


しかも、ホムラではなくて市華があたしのことを好きだというスーパーミラクル。




なんだこれ!(混乱中)


と、混乱中なあたし(実際にはホムラ)に対して追撃をかけていく市華。


「真知子はいつもあたしに優しくて、私のみんなに対する優しさを『好き』じゃなくて、『あんたは凄い』って褒めてくれて」


いやそりゃ、大親友には優しくするし、みんなに対する優しさはいつも凄いとは思ってるけど。


「それに私が小学生の時にこわい男の子から守ってくれたの」


うん、あったねそんなこと。そのせいであたしは「男勝り」の称号を手に入れたんだゾ(泣)


「真知子はね、私にとってのヒーローなの」


「いや、でも君は女の子で、マッチも女の子…だよね?」


うん、その問題がある。あとホムラ、何故あたしの「女の子」には「だよね(疑問系)」なんだ?


あたしはそこに疑問系を突きつけたいぞ。


まぁそれは置いといて、女の子同士付き合うことに対する市華の答えは!?






「うん、それがなに」






うん、それがなに


うん、それがなに


うん、それがなに


……そんな答えでいいのかあんたは!?


「だって好きになったから好きなんだもん。女の子同士がとか、私は関係ない」




そう言い切ったあたしの大親友は、




「だから、一ノ瀬くんとは付き合えません」




かっこよかった






…かっこよかったけどさぁ、それってつまり、


ホムラ→市華が好き。ただしフられる。

市華→あたしが好き。ただし女の子同士。

あたし→ホムラが好き。ただし相手の好みの対象ではない。


となるので、


真知子(あたし)

↑ ↓

市華 ← ホムラ


(矢印の方向が好きな人)



という三角形ができるわけでして…



…なんだこの負のループ。


…なんだこのいびつな三角形


…なんだこれ。


…な、なん…




「なんじゃこりゃーーー!」


その場で叫んだあたしは悪く無い…と思う。

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