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3.アークザラッドⅡについて(ネタバレ含む)

 大人になってからは、専らオンラインゲームを好んでプレイしている私。


 正確に言えば、オンラインゲームそのものが好きな訳ではない。


 リアフレ、もしくは、ゲーム内で意気投合した者達とチャットをするのが主目的だったりする。


 自分で言うのも可笑しな話だが、私は人との縁には恵まれている方だと思う。


 オンラインゲームで知り合った人達の殆どは気持ちの良い、面白い人達であった。


 幼き頃から人見知りな性格の私に対し、とても親切に接してくれた人が多かったように思う。


 勿論多少の喧嘩もした事はあったが、それはそれでまた良い思い出である。


 ゲーム内で馬が合い、何でも気兼ねなく話せる友人が出来た事も、私の人生においては大きな収穫だった。


 ちなみにその友人とは互いの電話番号を交換し、出会ってから五年になる今でも、年に数回は、往復300キロの長い道のりを超えて会いに行くほどの間柄になっている。




 ゲームというと、私は元来RPGが好きで、良くこれをプレイしていた。


 小学生時代、FFよりもドラクエ派だった私は、スーファミ版のドラクエⅢをこよなく愛し、しんりゅうを三回倒すまで粘り強く取り組んだのだが、悔しい事に一回しか倒せなかった。


「はかいの鉄球」があと二つ手に入れば何とか勝てたやもしれぬのに、何故一個しか手に入らない様に設計したのだ。制作者に問いたい。制作者はどこか。


 しかしながら、私の四半世紀以上に渡る人生の中で、最も遊び、最も感動したRPGは、ドラクエでもFFでもない。


 1995年にソニーから発売された稀代の名作。


 「アークザラッドⅡ」である。


 当時、『光と音のRPG』という宣伝文句で世に発表されたこのゲームは、国内売上本数106万本という、とんでもない数字を叩き出している。


 その宣伝文句通り、当時のゲームにしてはグラフィックが大層に美しい。


 2Dグラフィックながらそのドット絵は精緻に書き込まれており、戦闘時のモーションはとてもユニーク。


 バックで流れるBGMも種類が多く、一曲一曲が非常にメリハリの効いたサウンドだったのが、印象に残っている。


 ゲームシステムも、大変に充実していた。


 総勢30名近くのパーティーメンバーに加え、最大で12体のモンスターを仲間に出来る、当時としては画期的なシステム。


 登場する武器の種類は、なんと19系統にも上る。


 そして、特定の武器を装備して戦えば戦うほど、高いダメージを与える事が出来ると言う「武器の熟練度」という概念。


 装備する武器が違えば、戦闘時のアクションも各キャラクターによって異なるという徹底ぶりだ。


 前作の「アークザラッドⅠ」からのコンバート、つまりは、データの引き継ぎによりプレイ可能となる特殊イベントの数々も、ファンにとっては嬉しいシステムである。


 時にシリアス、時にギャグ風味のサブイベントはこれでもかと言う位に多く、やりがいがあり飽きがこない。


 本作はCD-ROM一枚でありながら、無難にストーリーを追い、無難にサブイベントをこなしていくだけで、プレイ時間は100時間近くにもなる。


 全フロアアイテムを入手したり、レベルを1000(100ではない。1000である)まで上げようとしたら、200時間を優に超えるのは明らかだ。




 上に挙げたゲームシステム、音や映像の演出以上に、私の心を掴んで離さなかったのが、細かく設定された深い世界観と、個性豊かな登場キャラクター達が織り成す人間模様である。


 ここで、「アークザラッドⅡ」のあらすじを簡単に説明すると……


《幼い頃に村を焼かれ、家族を殺された悲しき過去を背負う少年・エルク。『炎使い』の異名通り、生まれつき炎を自在に操る力を宿していた彼は、育ての親であるハンターのシュウと共に、大都市アルディアで腕利きのハンターとして活動していた。

 ある日、『アルディア空港を占拠したテロリストを捕まえて欲しい』との依頼を受けたエルクは、単身空港に乗り込む。そこでエルクは、人に危害を加えるはずのモンスターをいとも容易く手懐ける謎の美少女・リーザに出会う。

アルディアを裏から支配するマフィアの大ボス・ガルアーノに彼女が狙われていると知ったエルクは、自身の過去と向き合い、精霊の力を授かりし勇者・アークと共に、世界の命運を託されていく》


 とまぁこんな所か。


 私は毎回、このリーザという女の子をパーティーメンバーに加えていた。


 理由は可愛いからだ。それ以外に何があろうか。


 彼女を前線で活躍させる為に、何とか頑張ってサラマンダーを合成させたのが、今となっては懐かしい。サラマンダーと魔法のリンゴを装備させたリーザは、鬼の様に強いのだ。


 因みにこのリーザ、年齢は14歳である。


 つまり、ロリである。


 そしてドット絵からは分かりずらいが、あの肩出し白ブラウスの衣装からして、彼女が巨乳であることは間違いない。


 西川先生の漫画でも爆乳キャラとして描かれていたので、ほぼ間違いない。


 つまり、リーザはロリ巨乳である。


 ロリ巨乳なのである。


 それを踏まえた上で先に述べたあらすじに目をやると、彼女を狙っているガルアーノなるマフィアは、ただのロリコン拗らせたオッサンにしか見えてこないから不思議だ。




 それにしても、ガルアーノか。


 名前からして邪悪度十分な響きであるが、今思えば、あれほど『外道』『下衆』の二文字が似合う悪役もそうそういまい。


 奴のせいで、トラウマを植え付られたプレイヤーも多いのではないだろうか。


 ガルアーノは、エルクの村を滅ぼした軍事国家・ロマリアの将軍であるだけでなく、本作の前半部分において重要な立ち位置を占める「キメラ研究所」なる、特別な力を持った子供をモンスター化させる研究を行っている施設の最高責任者も務めている。


 実は、エルクは村を滅ぼされた後、キメラ研究所の施設の一つである「白い家」に連行されている。


 そこで少年・ジーンと少女・ミリルの二人と出会い、良き友人となる。


 しかし「白い家」の実態を知ってしまったエルクはミリルと脱走を試みるも、これが発覚してしまう。


 逃げる途中、ミリルは自ら囮となって施設の職員に捕まり、エルクを「白い家」から逃がすのである。(回想で、エルクを逃がそうとするミリルの行動に、子供心ながら胸が熱くなった)。


 以上の背景を知った上で、ガルアーノが本作で行った悪逆非道な所業の数々に目を通して頂きたい。以下に挙げよう。


・強いモンスターを造る為に、世界各地から特別な力を持った子供たちを誘拐。

・ジーンを醜いモンスターに改造させ、エルクと戦わせる。結果、ジーン死亡。

・「白い家」から子供達を逃がす為に乗り込んできたエルク一行に対し、既に モンスターへ改造済みの子供達をけしかける。結果、子供達死亡。

・そんな目に遭っても、昔、好意を寄せていた幼馴染のミリルだけでも助けようとするエルク。しかしガルアーノは薬物投与と精神操作を用いてミリルを洗脳し、施設の地下に二人を閉じ込めて無理矢理戦わせる。

・途中でミリルが意識を取り戻すも、尚も洗脳。戦いを続けさせる。

・最終的にミリルは精神が崩壊。自棄になったガルアーノは、あらかじめミリルの体内に仕込ませておいた爆弾を起動。

・ミリル粉微塵になり、死亡。


 明らかにやりすぎである。


 ここまでやったら、そりゃあプレイヤーの大多数のヘイトがコイツに集中するのも納得がいく。


 あの小沢○郎そっくりの悪徳面が画面の向こうで嗤う度に、「この野郎!」と口にしかけたのは、私だけではないだろう。


 当時プレイしていた私は、「なんだかんだでミリルは助かるんでしょ?」と思っていたから、この展開には、しばらく口を開けてボーゼンとしていた。


 とまあ散々にひどい運命・試練が主人公達を容赦なく襲う訳だが、それでもエルクとアーク達は世界を救おうと、必死になってロマリアの陰謀と戦う訳である。




 結論から言おう。


 この物語はバッドエンドで幕を閉じる。


 ラスボスを倒したはいいものの、結果的にエルク達の世界は崩壊。


 前作の主人公であるアークは死に、彼と相思相愛の中であるククルという女性も死んでしまうのだからやりきれない。(因みにこの二人は、前作では物語の終盤で熱いベロチューをかましていやがる。いや、ドット絵だからそこまで詳しくは分からないんだけども、シチュエーション的に絶対舌入ってると思う)。


 だが、この終わり方が私は好きだ。


 何か、一つの神話を見届けた様な感慨深さがある。


 それに、完全なバッドエンドかというとそうでもない。


 確かに世界は崩壊し、多くの人が死んだが、それでもほんのわずかな希望が残されている限り、あの世界の人々は、しっかりと前を向いて生きていけるに違いない。


 その絶望に塗れた世界から立ち上がる人々の姿を描いたのが、本作から数年後の世界を描いた「アークザラッドⅢ」な訳であるが、私は正直「Ⅲ」はそんなに好きじゃない。


 開発会社がジークラフトから別会社に変更されてしまったせいで、データコンバートが不可能になってしまった点など、好きになれない箇所は沢山あるが、しかし一番の原因は……前作『Ⅱ』で壊れてしまった聖柩を、何故にまた造らせたのか、という点だ。


 だって、あんなに簡単に聖柩が造れるなら、一体何の為にアークやククルは死んだんだって話だ。違いませんか?奥様。












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