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1.なんでも鑑定団

「開運!なんでも鑑定団」というテレビ番組がある。


 一時期、引退報道で世間を微妙に賑わせた、島田何某とかいう芸能人が司会をやっていた番組だ。


 知らない人の為に一応説明しておくと、国内外問わず、様々な人が抱えている「自慢のお宝」を、その道の専門家が鑑定し、値段をつけては一喜一憂するという番組である。


 今年で21年を超える歴史を誇り、「月曜から夜ふかし」に並んで好きな番組だ。


 私の地元・福島県では、毎週日曜日の昼一時から放送していた。


 まだ、絵画だとか骨董だとかアンティークだとか、そういう芸術に対してなんら興味も無かった頃、昼飯を食らうついでに見ていた感がある。


 むしろ、あの番組を楽しんでいたのは、私ではなく、母の方だった。


 テレビの向こうで、依頼人が「これは有名な画家の誰それが描いたもので~」と、自分の妄想を垂れ流しているのを見て、母は「へぇ~。すごいねぇ~」なんて口にしていた。


 特に、棟方志功の木版画が出品されていたときは、その真贋に関わらず、私に「棟方志功は凄い」と、一体どこがどう凄いのか、ろくすっぽ説明もしないでやたらと興奮していたのを、今でもはっきり覚えている。


 当時、小学生だった私は、あまり母の事が好きでは無かったから、曖昧な反応でこれを適当に流していた。


 子供の私には寧ろ、依頼人が自信満々に本物ですと宣うその品々が、果たして本当に本物なのか。本物だとしたらいくらの値がつくのか。そっちの方に興味があった。


 今となっては、そんな事にばかり目が言っていた自分に、少し嫌気が差す。




 中学を卒業し、高校に入ってからも、私はなんとなく、その番組を見続けていた。


 特に意味はない。


 ただ、何故かあの番組を見ないと、日曜日が始まった感じがしなかった。


 大人になり、酒を覚え、煙草を覚え、ちょっとした博打を覚え始めた頃、ふと、芸術に対して興味が湧いた。


 きっかけになったのは、フランスに旅行した際に見た、クロード・モネの「かささぎ」という作品だが、今回、その事について詳しく話すのは割愛しようと思う(話したら長くなるので)。


 とにもかくにも、あのフランス旅行を境に、私の芸術に対する意識が変わった。


 中でも心惹かれたのが、焼き物や日本画ではなく、洋画だ。


 水彩も良いが、私は特に、油絵で描かれた洋画の虜になった。


 社会人になった今では、時間と金の許す時に、美術館へ足を運び続けている。


 確か、今月末からルネ・マグリットの回顧展が、上野だか六本木だかで開かれる予定だったと思う。それも当然、鑑賞しに行くつもりである。




 前置きが長くなったが、今回私が言いたいのは、先に述べた「開運!なんでも鑑定団」で流れる、ナレーションの妙についてだ。


 番組の運びは、スペシャル放送等の特別な時を除いて、何時も決まっている。

 具体的に言うと、下記のような具合だ。


1.ビートルズの「Help!」で始まるオープニング

2.司会者の小話(1分も無いが、正直、これは無くしても良いと思う)

3.依頼人No1(芸能人)

4.依頼人No2(一般人)

5.出張!なんでも鑑定団

6.依頼人No3(一般人)

7.エンディング


 たまに、5と6の間に「幻の一品買います」「私のお宝売ります」というミニコーナーが挟まれる場合がある。確かこの前は、「京極堂シリーズ」で有名な京極夏彦先生が出演していらしたので驚いた記憶がある。


 さて、この番組では、必ずと言っていい位に3、4、5、6の場面でナレーションが入る。


 3は芸能人の来歴などという、非常にどうでもいい事を述べているので省く。


 重要なのは、4、5、6だ。


 4番目と6番目では、依頼人による鑑定品お披露目の後、その鑑定品に纏わる時代背景や制作者の生き様等が、ナレーション入りのVTR映像で解説される。


 5では、今回訪れる地方都市の歴史や文化遺産、施設等についてのナレーションが、やはりVTR映像付きで流れる。


 このナレーション、今まで何となく聞き流していたが、良く聞いてみると非常に分かりやすい文章で構成されている事に気付かされる。


 それ程難解な語彙を使わず、さりとて幼稚な言い回しは一つも無い。尺の関係上、或る程度手短にしなければいけないのだが、ちゃんと過不足無く情報を伝えている。


 特に凄いのが、やはり4と6の場面。


 ただ漫然と事実のみを伝えるのではなく、所々で、作者の人生を小気味よく賛辞したり、皮肉ったりと、情緒あふれる表現をしている。


 文章におこしてみると、その上手さがわかる。


 生半可な構成力で出来る業ではない。


 台本を書いている人は、相当な筆力をお持ちなのだろうと思うのと同時、こんな駄日記を書いている暇があったら、さっさと新作を仕上げろよ自分。と、思ったりもする。



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