14.五年後
「どうしてそんな事になったんだ~!」
俺の大音声がホール中に響いた。
なんでそういうことになったのか納得いかない。
俺はただの魔法使いだろ。まあ、王都では俺のお師匠さんであるイカルスに次いで、第二位にはなったけどさ。
なんでさ~俺がそんなことしなくちゃいけないわけ?
俺は別に駄々を捏ねてるわけじゃない。
あん~~~まりにも理不尽だから起こってるわけだよ。
俺はこの王都で、必死こいて五年間も魔法の修業に明け暮れて、イカルスのとんんんっでもない指導のもと一流どころの魔法使いになれた。
なれたけどね。確かに魔法使いになれたけどね。
死ぬかと思ったことが何度もあって、俺は何度この世からおさらばしなきゃいけないなんて思った事か!もうホント数えたらきりがなかったよ。
そりゃ魔法使いになれたのはイカルスのおかげだよ。
オウラの力をまともに使えるようにしてくれたのはイカルスのおかげだよ。
先輩の魔法使いからのやっかみとか、暗い苛めに合いながらもなんとかやってこれたのも、イカルスのおかげだよ。
けど、死ぬような目に合わせてくれたのもイカルスのおかげ、ってかイカルスのせいだ!
でもだ。これはないんじゃないか。
俺が憤慨している傍らで、気の毒そうに、でも嬉々としているのはファンだ。
気の毒そうにしてるのは、嫌な仕事を押し付けられた俺に同情してくれて、だが、嬉々としてなのはこの世界の女神に会いに行けるからだ。
ファンがこの世界に生まれてから百年近くたつというが、そのうちの七十年は女神のもとにいたという。女神のもとから巣立ちして三十年近く、初めての里帰りが出来ると言うので喜んでいるのだ。
行くのはファンだけでいいじゃないか、って言ってももう決定したことだから、と俺の意見は撥ねられた。
これってお師匠さんの役目でしょ、って言っても聞き入れられなかった。
で、冒頭の俺のセリフに至るわけだ。
俺はこの世界の女神に会いに、別次元へと行かなきゃいけなくなったのだ。
用事は闇の勢力との決戦についての助力を受けるためだ。
会いに行かなきゃいけない女神とは、ノヴァと言う光の女神、日本で言う天照大神と同じような神だ。
で、闇との決戦と言うのは、別に闇の神も悪者じゃあないんだけど、近頃闇が強すぎて昼間でも薄暗いことになっているから、力を抑えて欲しい、ってことを女神に忠告してもらうために交渉に行くのだ。
昔は女神の神殿で祈れば通じていたのに、この三百年ばかりは直接願いに別次元にいかなければならないという。そして百年前までは、大神官とかだけで良かったのに、ある時から魔法使いと一緒に魔法陣を使用しなければ行けなくなったというのだ。
そして、今回は本当ならイカルスと大神官が行くべきところ、順位の八位である若い神官とイカルスと俺が行くようにと言われたわけだ。
なぜそんな役目を順位八位の若手にさせるのかと言うのは、大神官が年を取っているため別次元への旅はつらい、と言う理由からだった。他に二位とか三位とかもいたのだが、七位まではなぜか体調不良を理由に辞退したというのだ。
普通女神の次元に行くのは、名誉なことだと言われているのに、何故か今回は辞退者が続出しているという。
それは神殿側の理由だから、特にどうと言う事もないが、俺も一緒に行かなきゃいけないというのは納得がいかない、と俺は言ってるわけだ。
イカルスが神官とファンを連れて別次元に一月あまり行くと言うので、俺はその間骨休みが出来るとちょっと浮かれてたのに。ちょっと町で遊んだりしたいな~なんて思ってたのに。撥ね伸ばし放題だって思ってたのにぃ~。
それなのに、どうして一緒に行かねばならんのだ~!
しかも移転の魔法陣に俺がオウラの魔力を注がなきゃならんとは。なんでそんなことせにゃならんのだ。イカルスがすればいいのに。
俺はこの五年間一日たりとも休みがなかったのだから、ひと月くらい骨休みさせてもらってもいいんじゃないの、って理不尽な仕打ちに憤ってるわけ!
「いいじゃん。もう、きまったことなんだもん。いっしょにいけてあたしはうれしいよ~。おねえさまたちにもスシローをしょうかいしたいよ。」
「俺も会ってみたいとは思うけど。ってか、俺の休みの計画が~!俺のバラ色になるはずだった夢の計画を返せ~!」
「うるさいぞ。せっかく女神に会えると言うのに、光栄に思わんか。お前はすぐにグータラしたがるからの。ひと月も一人に出来ん。」
いつのまにか、ホールにお師匠さんが来ており、後ろから声を変えると同時に俺の頭をぽかりと叩いた。
痛くないけど、驚いた。気配を消して現れるのは忍者みたいだっていつも思うよ。
「グータラって、そんなことしてませんよ。」
「ほう。休みがないと言いつつ、夜に抜け出して国王の親衛隊の若者たちと、何度も悪所に遊びに行っていたのは知っておるぞ。」
「それは・・・。え~っと、それはですね。」
「とにかく、女神に合えるいい機会なのだから、お前も行くんだ。これは決定だからの。」
俺の講義もむなしく、別次元への旅は決まってしまったようだ。
王都での生活は苦しかったし、毎日死ぬような思いもしたけど、おかげで何とか一流と言われる魔法使いにはなれた。
まあ、仕方がない。
師匠と旅するのは三度目だ。死の谷での訓練とか死にそうになったりしたけど、つらいばかりじゃなかったから今まで出来たようなもんだ。
仕方ない。お供しましょう。
そして。
俺とファンと師匠の異世界放浪がこの時から始まったのだった。
スシローの魔法使いとしての滅茶苦茶さは、次回ご披露します。




