プロローグ
先生が、私の名前を呼ぶ。
「母がいないのです。
もう、私に、魔法を学ぶ意味はありません」
母は、父から離れ、女手一つで私を育てた。
私の魔法の才を、最後まで信じていた。
私を、天才だと、私を産むために自分は生まれてきたのだと。そう、信じていた。
それが、間違いだと、最後まで認めなかった。
「あなたは、西の魔女が、何者か知っているわね。
全ての魔女の中で最も強い力を持つ魔女。人の持ちうる限界を越えた魔力を使える魔女」
私は、頷いた。
「それは、自らの名前を失うことでこの世の理から離れ
他人のためにしか『西の魔女』の力を使わないと言う制約により成し得る呪い」
「先生。今更、授業ですか?」
「そうよ、私の最後の授業」
私は、目を見開いた。
先生――現在の西の魔女を見上げる。
「西の魔女の代替わりは、いつ起きるかわからない。
西の魔女は長生きだから。その死期を悟ったら、次の西の魔女に相応しい魔女を探す。
いいえ、私の場合は逆だった」
先生が何を言おうとしているのか、わからない。
いや、わかりたくない。
「あなたほど、西の魔女に相応しい人はいないわ」
嘘だ。
だって先生の弟子には、もっと素晴らしい魔女がたくさんいた。
私を特別扱いしたことなど一度もなかった。
「でもね――
私は、あなたの先生として
本当は、あなたが、あなた自身の生きる希望を、生きる意味を見つけてくれることを
望んでいるわ。
そのことを、忘れないで」