転生…?
「はぁっ……はぁっ……!」
肺が焼けるように熱い。
そんな事を考えながら、結奈暗い路地を必死に駆けていた。
サンダルがアスファルトを叩く音だけが静かな夜に響く。
パカッ、パカッ、パカッ。
しかしどれだけ走ろうと、後ろから聞こえる足音は決して止まらない。
一歩、また一歩と確実に近づいてくる。
(どうして……)
結奈は涙で視界が滲む。
(どうして…どうしてよ…!)
結奈はくたくただった。しかし走り続ける。
けれど……
「つぅ~かぁ~まえた!」
「きゃあっ!!」
突然、結奈は腕を強く掴まれた。
勢いよく地面へ押し倒され、息が詰まる。
「やっ……いやっ! 離して!! 助けてぇ!!」
結奈は必死に叫ぶ。
しかし今いる場は人気のない裏路地、誰も来ないし、誰にも届かない。
そんな現実に絶望している結奈の上には、黒いフードを深く被った少女が跨っていた。
「ふふっ……やっと捕まえた…」
少女は結奈の涙でぐしゃぐしゃになった顔を見つめ、心から嬉しそうに微笑む。
「可愛い……本当に可愛い……♡」
結奈はその笑顔が恐ろしかった。
その少女の笑顔はまるで壊れた人形のようだったからだ。
「だ、誰なの……!? 私が何をしたっていうの!?」
結奈は声を震わせながら、少女に問う。
しかし少女は答えない、ただ愛おしそうに結奈の頬へ触れるだけ。
「ずっと会いたかった…」
「いや……」
「ずっと見てた…」
「やめて……!」
「ずっと、アタシだけのものにしたかった…」
その言葉に結奈の背筋が冷たくなる。
(意味が分からない……怖い……!誰か助けて……!)
その瞬間。
結奈の視界いっぱいに白い光が溢れた。
眩しい、何も見えない。
そして
結奈の意識は、静かに途切れた。
………
「…お嬢……メルー………メルーナお嬢様!!」
誰かが叫んでいる。
「お嬢様!お目覚めください!」
「っ!!」
そして結奈は勢いよく飛び起きた。
「いやあぁぁぁぁっ!!」
全身が震える、呼吸が苦しい。
心臓が壊れそうなくらい速く鼓動していた。
「お嬢様!?大丈夫ですか!?深呼吸を!!」
優しい声に結奈は背中をゆっくりとさすられる。
何度も深呼吸を繰り返し、結奈はようやく落ち着きを取り戻した。
結奈は視界がはっきりしてくると、目の前に綺麗な紫色の髪、落ち着く桃色の瞳を持った、メイド服の女性が心配そうにこちらを見つめている事に気づいた。
「…あ…ありがとうございました」
「いいえ、安心しました」
ほっとしたように笑う美しいメイド。
しかし結奈の頭は混乱したままだ。
(ここ……どこ?)
豪華な天蓋付きベッド、見たこともない家具、白い壁、高い天井。
どう考えても日本ではない。
「あの……ここって……どこですか?」
「……え?」
結奈が思いきってメイドさんに質問をすると、メイドさんは目を丸くした。
「お、お嬢様…?…何をおっしゃっているのですか?」
「え…?…お嬢…様?」
私のこと?
メイドさんの言葉に結奈は固まる。
「す、すぐにお医者様を!!」
メイドさんは青ざめた顔で部屋を飛び出していった。
「えぇぇ!?」
取り残された結奈は呆然と立ち尽くす。
ふと視線を違う所に向けると、布に覆われた大きななにかがあった。
結奈は何かを感じ、ベッドから立ち上がり、恐る恐る近づく。
結奈が布を取り払った瞬間…
「……は?」
そこにあったのは豪華な鏡だった。しかし、映っていたのは、自分ではなかった。
透き通るような水色の長い髪、宝石のように美しい紫色の瞳。
まるで天使のような少女が映っていた。
「うそ……」
結奈が自身の頬に触れる、すると鏡に映る少女も同じように頬へ触れた。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
結奈が叫んだその時だった、バーンっ!と勢いよく扉が開く。
「メルーナ様!!大丈夫ですか!?お医者様をお連れしました!」
さっきのメイドさんを筆頭に次々と人が部屋へと入ってくる。
その中から医者であろう格好をした老人が結奈の前へ歩み寄った。
「……メルーナ様」
老人は穏やかな声で尋ねる。
「ここがどこか、お自分のお名前はお分かりになりますか?」
結奈は小さく首を横へ振った。
部屋の空気が一気に重くなる。
老人は深刻そうに深く息を吐き、静かに告げた。
「あなた様のお名前は……メルーナ・ヌ・ティアラー」
老人の口から告げられる洋風なその名に聞き覚えはない。
「そしてあなた様は、このレミーラ王国を守護する唯一の存在」
老人は結奈に一礼しながら続けた。
「……聖女様でございます。」
「……せい、じょ……?」
その言葉を聞いた瞬間、結奈はようやく理解した。
(もしかして私…今お流行りの…転生…した…?)
――聖女に転生しても、悪夢は終わらない
前の作品のリメイクです。
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