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初めまして地球のひと  作者: 想造力


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13/16

金の粉

残り分が長すぎるため、数話に分割して投稿します。

石の天井、黄色い夕日、湿っぽい空気…。

ふいに瞬きしているうちに、いつの間にか見知らぬ部屋にいた。

幾分か感覚過敏は収まってきていて、おまけに瞼が軽い。おそらく数時間ほど気絶したんだろう。アストラは俺の足元で立方体型に小さく固まり、橙色に点滅するLEDが彼のいびきを代弁している。要はスリープモードだ。

体を起こしてみると、背骨に刺すような痛みが走った。俺はとっさに姿勢を戻したが、それでも背骨の節々に痛みが余韻として残っている。体勢を立て直そうと肩や膝を動かしても同じ痛みがあらゆる関節を襲う。

そしてこの霜焼けのような、掻いても届かない痒み。花粉を吸入した副作用ともとれるこのような症状は、非常に不快だ。

「なるみ」

部屋の入り口となる縦長の穴から、ルイジュの声が聞こえた。

「なるみ…」

首を動かそうにも、関節が心配でどうにもできない。故にルイジュのほうを向くことができないのだが、どうもその声色はどんよりしていて暗い。いつものルイジュからは考えられないネガティブな響きが、床を滑るような硬い音とともに近づいてくる。

遂に俺のそばに来た時に見えたルイジュの顔は、こわばった筋肉でほんのり赤く光っている。その大きな青い目は艶を増し、細かな鱗にはくっきりと涙が伝った跡がある。

「ン、こんばんは、ルイジュさん。どうしたんですか?」

静かに起動したアストラが、小さな声でルイジュに話しかけている。どうも二人とも俺が起きたことに気づいていないらしい。

「ルーネが…しんだ」


俺が寝ているところの傍らで、急に衝撃的で重たい話が展開した。

「…ルーネというのは、樹の中にいた彼女のことですか?」

少しの静寂の後、アストラがルイジュに問いかける。俺は反応もできそうにないため、まだしばらく静かにしていよう。

「うん、ルーネアルバ、ルネットのいもうと、しろいきょじん、ルイジュのともだち」

「死んでしまったんですか?」

「…うん」

今にも涙がまた噴き出してきそうな声で、ルイジュは返答している。

「それはとても残念ですね。良ければ、ルーネさんがどんな人だったのか聞いてもいいでしょうか。」

「ルーネたち、ギヴルのもりびと、だいじなしごとしてる」

「ギヴルとは樹のことですね。守り人ですか、ルイジュさんと友達というのは、どういった繋がりがあるんですか?」

「しろいはだのきょじんたち、いちどルイジュのくににきた、きょじんのくにのおさたち、そのなかにふたりともいた」

「それはつまり、巨人の長たちは皆肌が白いということですか?」

「くろいきょじんもいるけど、ほとんどしろい」

「先ほどの話からして、ルネットさんやルーネさんはその長たちに関係がありそうですね。」

「ギヴルのもりびと、おさのこどものしごと、かふんのえいきょう、わかいほうがすくない」

「やはり、巨人にも花粉の影響が出るんですね。ルーネさんの死因はこれでしょうか。」

「…うん」

後にも二人の会話は続く。

この街は奇しくも長として珍しいとされる黒い巨人によって統治されていて、ルネットら二人を除いて白い巨人はいなかった。故に、そんな長から生まれた白い子供が異常とされてしまった。しかも街の人々から見て異常な子供が、「長の子供」として大事な樹の守り人に就いている。

白い巨人があまり知られていない集団であるからこそ、二人は確たる理由もなく嫌われる存在になっていった。それが今に至るまでほとんど解決されず、いつまでも見えない重圧を受けてきた。

「…やっぱり、どこも地球と同じだなぁ。」

俺がぽつりと呟くと、すかさずアストラが反応した。

「鳴海さん、起きましたか。」

「あぁ、関節痛が全身に広がって動けないんだ。これはそのうち治るのか?」

「ええ、大半は有機物で生成されたポリマーのような物質のため、そのうち分解されて排出されるでしょう。もっとも、完治までどのくらいかかるかは定かではありませんが。金属イオンが分解を妨害する可能性もありますからね。」

「まあ、なるようになるか。それよりルイジュ、俺からも一つ聞いていいか?」

「うん」

「ルイジュの正体は一体何だ? 海中に一人で暮らしていて、巨人の長の子供と交友関係があって。人魚の国がある時点でその集団から外れているのはおかしいし、もしかしてその首飾りと関係があるのか?」

俺はルイジュの首に下がった五種のかぎ爪のような石がついたネックレスを指して言った。

「…なにもない、ルイジュはしょみん」

未だ泣きっ面でありながら、彼女は不服そうに言った。やっぱり何かありそうだが、さらに突き詰めていくのは野暮な気がする。

「まあいいや。というか、ルネットたちのほうは大丈夫なのか?」

「確かに、樹の中の濃い花粉の中に突っ込んでいきましたからね。鳴海さんが樹の周辺でこうなったのですから、彼らはもっと酷いかもしれません。」

「アストラ、ちょっと見てきてくれ。俺はしばらく動けそうにないからな。ルイジュも、見てきたほうがいいんじゃないか?」

「いい、ここにいる」

「では、数分後にまた戻ります。」

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