第4話 魔核は光り輝く
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。
ごーれむ君は如何にして造られたのか?
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、本編と並行してご笑読ください。
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今回は、魔導機関のお話の続きや。
双核式魔導機関(初期型)。
コレはワイが造り上げた、最初の“魔導機関”や。
周囲の魔素を取り込み、圧縮する、第1宝玉。
圧縮した魔力を物理力に変換する、第2宝玉。
2つの宝石を“核”として起動する、この世界初の“発動機”や。
セルモーターなんぞないから、最初の起動には人が魔力を注がんといかんのやけど、一旦起動すれば周囲の魔素が無くなるまで動き続ける、何処に出しても恥ずかしない、本物の“エンジン”や。
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もちろん、欠点は沢山あった。
まず、据え置き型で移動させることが出来ん。
次に、出力が低かった。そりゃもう、絶望する位低かった。
理由は魔導機関の要となる“核”が宝石を素材としていたことやった。魔導機関に限らず、魔道具も火球杖も、核となる宝石の大きさで性能が決まる。当然、宝石が大きい程出力は大きくなる。わかりやすいな。
でも、宝石よ? そんな巨大な宝石そこらに転がっとる訳ないやん?
当然米粒にお経を書くようなモンしか造れへんのやけど、宝石って米粒サイズでもエライバカ高い。ワイも国家財政を傾けてまで趣味に走るコトはできへん。
この“大きさ制限”のせいで、エンジン開発は永らく煮詰まっとったんや。
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話は変わるけど、この世界には魔法が溢れている。人型生物だけでなく、生きとし生けるもの皆が、大小なんらかの魔法を使っているんや。
火球杖どころではない火炎を吹くドラゴンとか、葉っぱを齧られると高圧電流を流す電気柳とか、この世界の生き物は(人型知的生命体を含めて)魔道具とは比べモンにならん位の威力で魔法を使う。
では、何故強力な魔法が使えるのか?
エンジン開発が煮詰まったワイは、生物学的なアプローチで魔法の出力を高めようとしたんや。
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結論から言うと、この世界の生物には魔法を使うための特別な器官があった。
この器官は哺乳類系や爬虫類系の魔物なら心臓のすぐ横、蟲系の魔物ならだいたい胸部にあって、強い魔法を使う生き物ほど大きい傾向がある。濃さや色味に違いはあれどほとんどがキレイな紫色をしていて、内臓のクセに硬い。クリスタルの様な輝きを放つ、摩訶不思議な代物やった。
最終的に“魔核”と名付けられるその器官により、“魔導機関”は飛躍的に進化したんや。
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この“魔核”を、“魔導機関”に使えんかなぁ?
ワイの狙いはバッチリ! 大当たりやった!
“魔核”を砕いて粉にして、ムラサキ色成分を抽出、精製。
圧縮して固めるとあら不思議。握り拳大の水晶みたいになった。
こいつに“魔導回路”を描き込むと!
なんと! “魔導機関”の宝玉として機能するではありませんか!
しかも! 大きさは今までにない位特大サイズ!
“魔導機関”の心臓部たる宝玉のサイズUPでケタ違いの出力が出る様になって。
据え置き型から実用的な車載型への道が開けたんや。
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魔核を精製して造る“核”はどんどん性能が上がっていった。
表面だけでなく、内部に立体的に“魔導回路”を組み込むことにより、より複雑で、より強力で、繊細な制御ができるようになっていって。
一つの“核”だけで“魔導機関”を動かせるようになった。
小型かつ高出力の、夢の“魔導機関”の完成や。
“魔”導機関の中“核”になる部品。
新型魔導機関の中核をなす“核”もまた、“魔核”と呼ばれるようになったんや。
“魔核式魔導機関”、は単に“魔導機関”と呼ばれるくらいに普及して、犬頭族の非力さをカバーする“チカラの源”として進化し続けたんや。
【本日の技術史的マイルストーン】
・魔核
生物の体内から取り出した魔核を原料として造られる。
水晶の輝きを放つ、魔導文明の基礎となる技術。
材料さえあれば大きなサイズの魔核が作製できる。
表面だけでなく内部にも魔導回路を組み込めるため、宝石由来の核に比べ格段の出力を叩き出せる。
コレにより、実用に耐えうる魔導機関の開発が可能となった。
(つづく)
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