第3話 唸れ!魔導機関!
作者から。
技術史的な外伝になりそうです。
よろしくです。
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。
ごーれむ君は如何にして造られたのか?
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、本編と並行してご笑読ください。
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“魔力適性が低い”とは、魔法を発動するために必要な魔力を放出することができない、ちゅうこと。全く魔力が無い訳やない。(極稀に、ホンマの魔力ナシが生まれるコトもあるけど、そんな赤子は長生きできへん。)
火球杖で判ったことがコレやった。適性の低い者が放出する、僅かな魔力を蓄積、圧縮することで実用的な魔法を発動できることが判ったんや。(もちろん、時間はすっごいかかるけどな。)
“魔力の蓄積、圧縮”。火球杖の開発過程で生み出されたこの技術は、その後の魔導技術の基礎になったんや。
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そうそう、今回のお題は“魔導機関”やったな。この技術。けっこう紆余曲折があって完成したんや。
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セラミック板製の武器・防具に火球杖を手に入れたことで、コボルト族は“都市国家”と言えるだけの文明レベルにまで到達したんや。
ワイの集落、首都(笑)にまで発展してしもた(笑)。同族がぎょうさん寄って来て、ビックシティ(笑)の誕生やな。
そこで問題発生。人がぎょうさん集まる都市は建物も高くせんといかん。それまでの平屋(竪穴式住居)では到底間に合わん。3階、4階建ての建物を沢山建てる必要が出てきた。で、建材が足らんようになった。
コボルトは弱小人型生命体や。大木を運ぶのも、石材を運ぶのにも一苦労。非力なコボルトでは運べる量に限界があったんや。
手動のウインチやら、運搬用に車両を造ってみたけれど、道やら荷役場やらインフラを整備せないかんし、舗装もしてない道やと重い荷物を積んだ車両を動かすにも難儀した。コボルト程度が使役できる動物はやっぱり小さく非力で。結局、“非力”であることを克服する必要があった。
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人力(コボルト力?)でダメなら機械力を使えばええんや。
それで始めた発動機開発やけど、ここでも問題発生や。
そう、『何を動力とするか?』である。
蒸気機関、ガソリンエンジン、電気モーター、核融合炉・・・。
全部、アカンかった。
そらそうや。ワイらコボルトはようやく都市国家の真似事ができるようになった程度。地球で言うたら紀元前3500年くらいやな。一方、地球で実用的な蒸気機関の登場は18世紀、1700年代や。今のコボルトの文明レベルやと、あと5千年くらい経たんと無理や。(そんなに待てへんわ!)
なんせ、エンジンは総合科学の結晶や。材料、冶金、部品、加工、塗装、その他諸々。全部が一つになって初めてエンジンはできあがるんや。
ソレは、現時点で動力機関を作ることが不可能である、ちゅう事やった。
・・・やっぱ無理やったんやろか。
この時ワイは、前世の知識に囚われておった。転生したワイには、転生前の知識が欠ける事無く脳内にあったんや。もちろん、深層圧縮睡眠学習で手に入れた、膨大な知識も。
そやさかい、 “地球人的”常識でしか技術開発が考えられへんかったんや。
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大方諦めてたワイ、ふと気が付く。
魔法を物理力に変えればええんちゃう? と。
魔道具に可動部は無い。火球杖にもや。宝石とそこに描かれた回路。これだけで、魔法は発動しとる。
あれ? コレ上手いコトやれば、モノになるんちゃう?
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魔道具にしろ、火球杖にしろ、人間が魔力を注がんと動かへん。それでは動力機関とは言わん。自分で漕がんと動かんのなら、それは自転車や。
自分で魔力を集め、物理力に変換する。
コレが、ワイの求めるエンジンやった。
【本日の技術史的マイルストーン】
・双核式魔導機関(初期型)
結果的に、コボルト王は苦労の末魔導機関の開発に成功する。最初に開発した“魔導機関”、それがこの双核式魔導機関である。
その名の通り、核が2つある構造が特徴である。核の片方で空気中の魔素を吸収、圧縮し、もう片方の核で魔力を物理力に変換、出力する。据え置き型で魔素の吸収効率も悪く、出力も不安定で低かったが、自力継続運転が可能な初めてのモデルであった。
この世界で初めての魔導機関であることがマイルストーン。
(以後、魔導機関は急速に改良進化を遂げることになる。)
(つづく)
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ごーれむ君ひとコマ劇場
エンジン開発会議のひとコマ
コボルト王:「エンジン・・・。何を動力源にしよか?」
部下A:「エンジンと言えば波〇エンジンですよ! 波〇砲発射ァ!」
コボルト王:「この世界を滅ぼす気ぃかいな。却下。」
部下B:「ゲ〇ター線、どうでしょう? 3つの心を1つに!」
コボルト王:「何か変な進化しそうやな。却下。」
会議は続くのであった・・・。