第1話 コボルトの王様
外伝、書いてみました。
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。
ごーれむ君は如何にして造られたのか?
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、本編と並行してご笑読ください。
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「ロオォーーボオォォーーーッ!!!」
奇声が辺りに響き渡るの。
(また・・・。王様にも困ったモノねぇ・・・。)
王様付きの侍女であるアタシは思わずため息をつくの。
ココはコボルト国の王宮。さっき響いた奇声はアタシ達の王様の声。
知力強化型の変異種で、とっても長生き。死んだアタシのひい婆ちゃんより年上なのに、まだまだ元気。(変異種にはとても長生きする個体が居るんですって。知らんけど。)
時折ブツブツと呟き始める奇怪なコボルトだけど、実は有能。
弱小人型知的生命体だったアタシ達犬頭族を一纏めにして、一国を作り上げたの。(それまでの犬頭族って、精々部族ごとに集落単位、家族単位で隠れる様に生きていたの。今とは雲泥の差ね。)
そんな立派?な王様なんだけど、欠点もあって。王都の外れに広大な自分の研究室を作ってそこに引き籠るわ、王宮でも『ろぼ』だの『めか』だの喚き散らすの。(正直、カンベンして欲しいのよ。)
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(ハァ、また大声出してしもぅた。)
王宮の執務室で、ワイは少し落ち込む。
(最近、公務が立て込んでて、研究所に行けへんかったしなぁ。)
王様稼業優先やさかい、研究所が後回しになんのは仕方ない。けど・・・。
(なんで、異世界なんかに転生したんやろうなぁ…。)
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お気づきやと思うけど、ワイはいわゆる“転生者”っちゅうモンや。
転生前のワイは38歳独身(2738年生)のロボット技術者。ベテルギウス重工(株)の社畜やった。
28世紀になって人類は銀河全体に広がったけど、いつの時代も社畜は社畜で。39歳の誕生日目前に過労死したワイはこの世界に転生した、っちゅう訳や。
…底辺人類のわんこに生まれ変わるとは、思わなんだけどな。
有難いコトに、前世の知識はそのまま、生まれ変わったカラダは魔力適性アリアリで、ワイは頑張ったんや。
気が付いたら、近隣の同族を統合して、一国の主になってもた。
いや、王様が嫌んのとはちゃうで。生まれた時の、魔物蔓延る森の中、家族で隠れる様な生活に比べれば、天と地の差があるわいな。
ただなぁ。ちっとも引退できへん。どうやらワイの身体は“変異種”みたいで、やたら長命なんや。せっかく部下を大臣やら将軍に育てても、ワイより先に死んでしまうんや。惚れた嫁さんや子ども達にも先立たれて、仕方なく王様やる日々が続いておったんや。
そんな、鬱鬱とした日々を過ごしながらも、コボルト国を守るため日々お仕事しとったワイ、ある日妙案を思いついたんや。
せや、ロボ作ろう! と。
前世がロボット技術者、っちゅうのはさっき言うたな? お察しのとおり、ワイはロボ好きメカ部のオタク気質や。転生した今生でも、その魂は変わる事はあらへん。いやむしろマシマシや!
幸いにも、ワイには土魔法の適性があった。土魔法で、ワイはワイの好みなメカを、ロボを作るんじゃあ!
(つづく)
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