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6話

 それをリクエストしたのはヴィズ。モヤモヤした気持ち。それが少しでも晴れるかも、と考えた次第ではあったが。


「……ごめんなさいね。なんか付き合わせる形になっちゃって」


 それに友人を巻き込んでしまった形、というのはわかっているつもり。後ろめたい。なにをやっている自分。


 だが、当のデルフィーヌは全く気にしておらず。むしろ、普段やらない曲をやれたことは、なんだか嬉しいような。収穫もあった。


「いいよいいよ、平気。なにを弾こうって決めてたわけでもないし。そっちもほら、サントメシエ教会でのリサイタル。終わったんでしょ? 私は行ってないけど、よかったらしいじゃん」


 今にして思えば行けばよかったかも。買い物とか、そんなのはいつでもできることだったのに。


 クリスマス休暇中、モンフェルナから五人のピアニストが選出され、それぞれ一日ずつ作曲家を変えて演奏を行なった。その中にこのヴィジニー・ダルヴィーという人物は含まれていた。実力からしてもそこは納得。申し分ない。


 しかしヴィズの晴れない表情が、その結果を物語っている。


「……どうなのかしらね。私にもわからないわ」


「というと?」


 実力を出しきれなかった、というのともまた違う返答に、デルフィーヌは違和感を覚えた。常に冷静で、出来ることに集中するはずの彼女から、なんだか弱気な発言。ちょっと気になってきた。


 わからないこと。ヴィズは髪をかき上げる。


「自分の今の位置。どこにいるのか」


 そしてなにをやりたいのか。なにを続けていくのか。それに意味はあるのか。具体性と主体性を欠いた内容。突発的に口を突いた言葉とはいえ、意味がわからなさすぎた。


 瞬き多く、熟考するデルフィーヌ。なんのこっちゃ。だが、思い当たるものがあるといえばある。


「あー、なんだっけ、音楽科じゃない子と一緒にやったんだって? 聞いたよー、そんな面白そうなことになってたなんて」


 それさえ前から知っていれば。絶対に当日聴きに行ってたのに。そんな遊び心があるとは。いいじゃんいいじゃん。

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