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44話

「どうだった? 私としては、イリナはいいピアニストになりそうだね、ってとこ。それが目指している場所なのかはわかんないけど」


 淡々と。主演のオーロールは宴の舞台から離脱。汗ひとつかかず。だが、心は燃えている。ブリジットといい、ヴィズといい、イリナといい。光るものがある。いいね。


 自身の震える手にイリナは気づいた。これはなんの震えだろう。でも。


「……」


 悪いものではない。嘘みたいな話だけど。より一層、音楽にハマった瞬間。のような。心の奥にじわっと染み込む炎。でも、胸が苦しい。それは『死の舞踏』の醸し出す雰囲気だけではなくて。寂しさ、それ由来のもので。


「ありゃま。ヴィズは?」


 無言の人は置いといて。オーロールはもう一方に話を振る。


 ステージの上は、まだ音の熱と曲の冷ややかさ。それらがちょうど釣り合いが取れたかのようにゼロに支配される静寂。凛とした空気。光。


 二回ほど、言い淀んだあとにヴィズは意を決した。


「……概ねその子と一緒。たぶんね」


 不本意ながら。『死の舞踏』の違う側面。いや、知ろうとしなかった曲の奥深さ。そこにほんの少しだけ触れた。触れることができたのは。若干だけど、感謝に近い感情。


 そこまでサン=サーンスという人物に対して研究したこともないけども。ブリジットがショパンにしているような。心臓の高鳴り。それを感じてしまった。


 なんとも雲を掴むような感想。オーロールは首を傾げる。


「ふーん」


「教会で」


「? 教会?」


 ふと、不意に違う話題をヴィズに振られ、なんだっけ、とオーロールは目線を上に向けて思考する。


 続けてヴィズはここまで聞かないでいたことを口にする。


「ノエルの教会。初日ブリジットとの『遺作』であなたは奏でた。でも三日目、私との時は来なかった。なぜ?」


 今になって怒りのような感情が湧いてくる。別にどうでもよかったから。ブランシュとの約束。それを破られて、さらにこの人物にも。

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