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41話

 そして始まるヴァイオリンのソロ。墓場から這い出る骸骨を、妖しくも美しい音色で描きだす。幻想的で、どこか温かみまで感じる咆哮。しかしひとたび走り出すと、不気味さを増しながら優美なワルツへと変貌を遂げる。


 骨だけの存在であるはずなのに、どこか水々しさと肉感を感じる厚みのある音色。墓場ではなく、身分を隠した舞踏会のような華やかさも併せ持っている。とっぷりと更けた夜。午前〇時に魔法が解ける少女の話ではない。過ぎてから始まる宴。


 気品ある振る舞いで手を取り踊る。艶やかで、煌びやかで、鮮やか。そんな色彩豊かな『死の舞踏』、しかしヴィズの皮膚はビリビリと粟立つ。


(重い……! 一音一音がまるで上からのしかかってくるよう。押さえつけられてるような……ブランシュとは、違う音……)


 以前の演奏がフランス的で軽やかな水彩画だとすると、今回は作曲家の意志が重たく塗り潰すドイツ的な油絵。じわりじわりと背後に迫る死の重さ。音楽、というよりホルバインの同名の木版画を見ている錯覚にさえ。権力者も貧富も関係無く訪れる死の香り。


 新しくも古くもある中庸なヴァイオリン。フレージング、つまり旋律の区切りにもブレが生じる。『、』で次に繋がるかと思えば『。』で締めくくる。息もつかせない、より聴き手に緊張感を与える。感情に訴えかけてくる。


 そしてそれはピアノを演奏しているイリナにも伝わってくる。内臓を抉られるようなグロテスクでマイナスな世界が、骸骨で埋め尽くされる。つられて、自身のピアニッシモのギアが変わる。


(……なんなんだよ、なんなんだよこいつ……! ムカつくけど、惹き込まれる危ない感じは……!)


(——ってな感じの音だねぇ、ふむふむ)


 ピアノとヴェチェイを合わせるのは初めてだったが、オーロールには好感触。香水から得られたヒント。それに上手く自身も応えられている。だが、まだどこか遠慮している。

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