4話
ゆっくりと今の状況をオーロールは確認する。この子とはやっぱり気が合う。私達に近い、ってのは言い過ぎかもだけど。
「悲しいヴァイオリンだよ。とてもいい音を奏でるのに、ここにいないような。この子の本当の音を紡ぐためには、どうしても足りないものがある。それは——」
「それは?」
「それは——」
「それは?」
問答し、不思議な間が流れる。シン、と静まり返る。視線が合う。ヴァイオリンは。なんの反応もしない。
たっぷりと、さも意味ありげな時間を使うオーロールだが「ひひっ」と吹き出す。
「わかんないんだよねー。専門外だから。でもたぶんだけど、自分なりに出た答えはあるよー」
別に自分はどんなヴァイオリンであろうと、楽しく弾ければなんでもいい。だって趣味なんだ。そんな彼女にとって、そのヴァイオリンに欠けているもの。
「ぜひ聞きたいね。私のショコラ作りのヒントになるかもしれない」
どんなところに成長の端尾があるのかわからない。だからジェイドは興味津々に問うてみる。音。それはショコラにも必要なものだから。
言っちゃおうかな、どうしようかな、などとここにきてオーロールはさらに勿体ぶるが、まぁいっかと決意。
「そうだね。響きのいいホールとか、そういうのじゃない。そういうのじゃあ、ないんだよねぇ」
そしてベッドから勢いよく降り、ジェイドに顔を近づける。
「その紡ぎ出した音に至るまでの『旅路』が、音を輝かせる。きっと、ね」
きっと。そうなると。信じている。