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34話

 自身とは正反対に、鼻息荒く取りかかろうとする彼女を認めたヴィズは、音もなく立ち上がる。


「なぜそんなやる気があるのかしらね」


 こんな年の瀬に。本来なら今頃、買い物や来年の抱負なんかをしたためていたりする時期なのに。こんなに浮かない年末は初めて。来年も不本意な一年で終わりそう。


 イリナはその空いたイスにドカッと座り、息を整える。どんなに荒ぶってても。昂ってても。ここに座ると世界が変わる。


「決まってんだろ」


 変えてくれたヤツがいる。だから。


「……ふふ」


 含んだ笑いを押し殺しながら、オーロールは品定めするかのように顎に手を置いた。あぁ、こっちはこっちで殺伐としていて、刺激があるね。ないほうがいいと思っていたけど、これはこれで。


 強く鍵盤を叩くイリナ。まだ残っていた濁った感情が今、全て吐き出された。深く深く深呼吸をし、凄むように睨みつける。


「こいつよりブランシュのほうが上、ってのを証明するために」


 一度教会で聴いただけでは、納得できない部分がある。ならどうする? 音楽家なら、音楽で語るべきだろう。少なくとも、あいつはそうだった。一音がひとつの単語よりも意味を持っていて。和音が一言では言い表せない、複雑な心を表現していて。


 決して長くはない期間だったけど。まだ全然わからないこともあったけど。なんでいなくなったのかもわからないけど。それでも。新しくやってきたヤツがそこを自分の進みやすいように整備して、なんてのは。まだ、理解できない。


 普段なら軽く受け流しているオーロールだが、なんだか珍しく心がオドル。あの子と共にあった音楽。それを見てみたい、聴いてみたい。


「にゃはっ。いいねー、面白そう。いいよ、今やるー? ちょうど弾きたいヴァイオリンあるから」


 これも心拍数が上がる要因のひとつ。新しく買ってもらった玩具だったら、遊び倒したいじゃん?

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