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32話

「……それで、次の香水の曲は決まったのかしら?」


 グリーグ作曲『抒情小品集 春に寄す』。穏やかで静かな春、というよりも、弾けるような快活な故郷のノルウェーの春。雪が溶け、閉ざされた世界からの解放。それをヴィジニー・ダルヴィーは弾き切ると、傍に立つ少女に問いかけた。


 モンフェルナ学園音楽科大ホール。中央のステージにはハンブルクスタインウェイのフルコンサートグランドがあり、取り囲むように円状に配置された客席。本来、クリスマス休暇中であるため学校は休みなのだが、こうして音楽科の生徒のために練習場所は開いている。


 特にこのホールはコンクールに近い、実践さながらの空気感を味わうにはちょうどいい。人気があり、取り合いになるのだが、多くに生徒は帰省しているため、比較的自由に使うことができる。


 閉じたこの空間内で目を瞑り、春の嵐を味わっていたオーロール。首を傾げて目を合わせる。


「ん? やるの?」


 誘われて今はここに来たまでで。本当ならパリの街でも繰り出そうかと思ったけど、そんなに好きな街でもない。それならこの先の友人候補との邂逅を楽しむ。


「別に。やらないならやらないでかまわないけれど。それに……ニコルもいないし」


 逸らしたヴィズの視線の先。ホール最上段、入り口に一番近い場所。彼女の、ニコル・カローの特等席。よく、あの場所に座っていた。今は空席。


 彼女は。クラシックを題材として香水を作っていた。彼女自身は詳しくないと言っていたのに。なんのために? ブランシュはなぜ手伝うのかとか。追求することはなかった。その必要もなかった、ないと思っていたから。


 ふむふむ、と肯定しながらオーロールは決断を下す。


「じゃあやらなくていいんじゃない? 面倒なことはやらない。はい、決まり。やりたい曲だけやる。やりたい時にだけやる。やりたくないことはやらない。自由ってそういうもんなんじゃない?」


 つまらない時の演奏は聴く側もつまらない。誰も得をしない。なら必要はない。

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