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22話

 その点に関してはジェイドも認めざるを得ない。数学も芸術だった。公式に美しさを感じる人もいるくらいだし。


「言われてみればそうだね。この世になにひとつ、確実なものというのはないのかもしれない。って、また話が逸れてしまった。ま、人間の五感も六感も結局はなにひとつ、確かなことなんてないんだよね」


 このショコラも。甘くて美味しいという感想を持つ人もいれば、苦くて好きじゃないという人もいるのだろう。全人類に愛されるもの、なんてない。それはわかってはいるのだが。


 しかしそうなると。素人なりにもポーレットにも疑問が。楽器とは高価なもの。家とか車とか。そういうのと一緒。


「でもさ。じゃあ楽器買う時は弾く人がその場で弾いて、んで感覚で買うわけでしょ? 傍鳴りのいいやつ、っての? でも観客からしたら、遠鳴りのほうがいいわけで」


 いつかは使えなくなってしまうのかもしれないけれど。それでも満足のいく買い物にしたい。数千万とかするやつだと尚更。クーリングオフとか。そういうのある?


 卓球のラケットだったらプロなら数回打っただけでも、もしくは見ただけでも合わないとわかるかもしれない。しっくりくるとかあるのだろう。だが楽器の場合はどうだ。自分にとってよくても、聴き手にはそうでない? 趣味で終わらせるならともかく。懐へのダメージが大きい。


 ふむ、とジェイドにもそこは納得するところ。位置によって変わる、というのはとても厄介。


「そうだね。プロの、それこそ超一流であっても自分の演奏が遠鳴りしているのかどうか、というのがわからないらしいから。そこは割り切ってるんじゃないのかな」


 誰かの舌に合わせてショコラを作る、はできる。だが、これは言ってしまえば『食べる場所によって味が変わってしまう』ようなもの。それはさすがに無理。作ることはできない。どこで食べるかなんてわからないのだから。


 つまり。遠鳴り傍鳴りのことはポーレットにも理解できたが。答えはない、という結論。


「なんだか結局、モヤモヤした話ね。遠鳴りする良い楽器ではなく、傍鳴りの楽器を作ったほうが売れるってのは。なんだかなーって感じだわ」


 大きく溜め息。いや、別に自分がそういうのを作ったり売ったりする立場になるかはわからないけど。たぶんないけど。それでも心を込めて、魂を込めて制作する職人に同情。ジブリの天沢くんとか。

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