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019話 ゲームの次元

 舞台の景色は新しいシーンに切り替わっていた。これは、昔見たような光景?あるいはテレビでみたものか。子供が部屋で、古いカセット式のゲーム機の前に座っている。ゲーム機の前で、なぜか厳かな儀式のように正座している子供は、ふぅと一息入れてゲーム機の電源をつけると、灰色の何も画面が映る。


 慌てて電源をばちんと切り、カセットを挿しなおし、再び電源をつける。次に出たのは、すべてが崩れ、おかしくなった状態の画面だ。


 動いてはいるが人や文字、すべてが崩れて原形をとどめていない。


 子供は慌てて電源を切り、また一連の動作を行う。


 カセットを挿しなおす、逆さにしてぶんぶん振ってカセットをさしなおす。


 なにか少年漫画のような”気合こめています”ムーブをしてカセットをさしなおす。


 カセットを額に当て、まじないめいた言葉を放ってからカセットをさしなおす。


 床に置いたカセットに謎の土下座&礼拝アクションをして、カセットをさしなおす。


 何か思いつめたような表情で息を吹き付けてカセットをさしなおす。


「あーちニャみに湿っぽいブレスじゃ祝福にニャらない。接触部分や基盤にダメージを与えるらしいからやっちゃダメねー。ほかの儀式的ふるまいも、全部意味ニャし!です」


『(その辺は言わないであげて。気持ちの問題を否定しないであげて)』


 結局子供が何度カセットのぬきさしを繰り返しても、正しい画面は表示されないようだ。相当年期が入っているか、扱いが雑だったのか、ひょっとしてもう壊れてしまっているのかもしれない。


「で、こういうときに行われている創造と破壊が、マズいことになってるんだニャ」


 舞台の上から半透明のカーテンのようなものがおりてきた。子供がゲームの電源を入れるたび、景色が映し出される。爆発と共に世界が生み出され、電源を消すときにその世界は崩壊し崩れされる。


 画面が灰色表示の時には何もない灰色だけの世界。


 すべてが崩れ、人の形すらしていないおぞましい世界。


 オンオフの繰り返しでおかしいまま創造と破壊が何度も繰り返される。


 そしてその世界創造と崩壊から少しずつ、煙のようなものがもれ出ている。


 どうみてもこれは”よくないもの”だろう。


「口づたえの物語とか出版物とかだと、こんなことはほとんどニャいんだけど、ニャんかゲーム周辺は、この辺の問題が発生しやすいんだニャ)」


 壊れた世界の創造と破壊は繰り返され、端からこぼれた煙ようなものが渦をまく。その中で、なにか得体のしれないものが積み重なり、生み出されてゆく。それは渦巻き、浮かんでは消え、創られては壊され、崩れては歪む。片隅でできあがった影のようなものは、徐々にカタチを形成してゆく。


「ゲーム自体、プログラムの再生によって、一瞬で大規模な世界を生み出せるけど、カートリッジの接触不良やディスクのデータ飛び、誤作動による動作不良とか、なにより混入しているバグや、画面に出しているイメージの裏で雑につくられた世界観とかが、原因なんじゃニャいかなってミィたちの組織ではいわれてミャす」


 つみかさなったそれらは二・三の人型のシルエットを構築していく。できあがったシルエットはじわりじわりと子供のほうへにじりよってゆく。


「その狭間で処分されずに残り続けるものがではじめる。無数のそういった繰り返しでうみだされた”ヨクナイモノ”たち、二次元世界の影響は日に日に大きくなってきていミャす」


 人型のシルエットは子供の背後ににじり寄る、子供はカセットの抜き差しで気づいていなかったが、ゲーム機にできた影かなにかで気づいたのだろう。まんまホラーか何かの演出じゃんと思ったところで幕がおりる。降りた幕の向こうで、子供の悲鳴がひびきわたる、悲鳴というかまぁこれは鳴き声だが。




「本来、下位次元の出来事は上位次元にはそんニャに影響しニャい。ショウだって、映画のすばらしい演出で”ナミダをおもらし”することがあったり、漫画の主人公の生きざまに共感して”自分もこう生きだい!!”とか思っても、日々に与える影響なんてのは、そんなにおっきくニャいよね」


 まぁ確かに”ゲームの主人公のように”なんて心がけはそんなに長持ちしないよな。そうこう思っている間に幕がふたたびあがった。繰り広げられている光景は、恐ろしい光景だった。


「最近になって急に二次元から三次元に強く干渉するものが現れはじめたの。三次元の都合でポンポンと創られ、また同じだけぼんぼんと破壊される。上司の勝手に振り回されてもあるがままに受け入れるしかない社畜さんのように、ただ創造され、同数破壊されるだけなのが下層の立ち役割ニャのですが、二次元世界の中に、上位世界に影響を及ぼすものまであらわれ始めたの」


 平面世界から伸びてきた手に引きずり込まれる人。


 二次元世界から流れてきた煙に包まれ、精神に異常をきたしてゆく人。


 二次元世界の呪縛にとらわれ、ふつうならありえない奇行にはしる人。


 おぞましく恐ろしい光景だが、これが今、現実に起きているというのだろうか?


「あなたのいる三次元世界は今、二次元のへいたんな世界からの攻撃にさらされ、なすすべもなく侵略されてて、キケンがあぶニャいの」


 本当のハナシなら、たしかに世界的な危機だ。いや、その一ケースってのは、ついさっき身をもって味わってきたばかりだ。あんなのは、それこそ国同士のしがらみとかも超えて臨まなきゃならない問題じゃないだろうか。


『あまりそういう話は聞いたことがないけど?』


「そりゃあ侵略ですから、見えないように少しずつね。相手も一枚板じゃニャいし、手法も様々、ショウたちの言葉だと神隠し、精神疾患、機械の暴走、異常気象とか?もちろん全部がやつたのせいじゃニャいけど、そんなふわっふわした状態で政府や国、世界が動き出すほど、あニャたたちのきずニャってそこまでしっかりしてニャいでしょ、たぶん」


 言われるとカチンとくるが、否定派できない。そして、話はなんとなくつながった感じはする。


『で、生きながらえるために、そいつらと戦えってこと!?』


「そのとおり、二次元世界からくる侵略者を打ち砕き、この世界を守ってほしいニャ。闘いの中でミィのチカラも強くなってきたら、ショウの身体を復活させることができるんだニャ。これ、素質のあるあニャただからの、お願いニャの」


『(素質?なんか選ばれちゃったかんじ!?)』


 ”期待の大型新人”とか”えらばれしもの”、”でんせつのゆうしゃ”の到来か。あるいは”無敵のチートスキル持ち”、ご都合のよい言葉が脳裏に浮かんだ。


「はい、二次元からの攻撃を防ぐにしても、二次元へ攻撃を仕掛けるにしても、二次元世界への慣れ親しんだ人ほど強い影響を及ぼすことができます。”スキモノはトコトンオジョーズ”ニャの」


(まぁ、受験でブランクはあるけど、ゲームはそれなりにたしなんでたからな。特別感はないが、素質ありといわれるだけましだろう)


『わかった、がんばらせてもらうよっ』


 すると、舞台の上に、自分を模したネコサンがスーパーヒーローのように、あらわれ、危機に瀕しているネコサンたちを助けに奔走する。襲われているこを助け、敵を倒し、キメのポーズをとる。助けられたネコサンたちの拍手を浴びる光景が展開されているところで、幕がおりていった。


「(劇場はここで終了ね。ご鑑賞ありがとうなの)」


幕が下りきったあと。箱型の小劇場はそのまま床下に消えていった。


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